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やぶれない18

 楽観的な態度を見せていたパルメザンだったが、急に神妙な面持ちで忠告をした。

 冷たい風が、二人の間に鋭く吹いた。

 沈みかけの太陽が肌を照らす。薄暮冥冥と夜が近づいてくるようだった。


「あの戦い方って何」


「それだよ、御伽」


 チェダーが拳に握っていた御伽を指差した。それは仄かに光を反射し、空の茜色を映す。チェダーは手のひらをじっと見たあと、低くぽつりと呟いた。


「……これが何だっていうの」


「それは、無理やり強さを手に入れるためのものじゃない。ないものねだりしたところで、誰が幸せになるんだ? それで力を得ても、付け焼き刃だよ」


 彼女の言い分は正しかった。

 自分だって、これで手に入れた力はほとんど失ってしまうことなどわかっている。

自分にとって都合が悪く、何一つ狂いのない指摘は胸に鈍く刺さる。目を背けたくなるほど苦しいのだ。自分を刺した人間を、消してしまいたいほどに。そして、見栄と嘘を積み重ねていくのだ。


「そんなのわかってる……。だけどあたしにはそれしかないんだ。確かにないものねだりだけど、これはあたしが持ってないものを持たせてくれる。元々そういう道具でしょ、御伽って」


「違う。




よく考えろチェダー。五味いつみはボクたちにこれを渡しても、使用を促すことは一度もしなかった。なんでか? 危険だからだ。


いいかい。これは使えば使うほど、魔力指数を減らす。つまり御伽を使うってことは、自分の個性や経験を失う。ないものねだりすればするほど、キミは自分をすり減らすんだよ」


「……で、あんたは? あんたも使いまくってるじゃん」


「わからないヤツだなぁキミは……! 望むものによって代償は変わるんだ! それに、特別なものを貰ったら使いたくなるのは人のさがだ。ボクもキミも! だけどそれは! あんな風に使っちゃいけない……!」


「…………」


 声を荒げるパルメザンを、チェダーは冷たく見つめた。彼女の言葉はとうに届かない。憎いコイツの言葉など、聞き入れる耳もない。それが正論だとしても。

 

「まだわからないんだね……。なら、ボクがキミを倒す。一時的な力では何も生まないのをわからせてやる。ボクに殴られたあと、しっかり頭を冷やせばいい……」


「わからないね。一時的でも、力は力だよ。そうでないと守りたいものも守れない。




受けて立つよ。……ここはもう閉まるから、博物館ミュージアムに行こうか」



 ・・・


 太陽の光が届かない地下の博物館。そこは薄暗く、夜の訪れを密かに待ち続けているようだった。


 二人は戦闘衣装に着替え、それぞれの武器を装備する。チェダーの拳には依然として御伽が握られていた。

 

 ――対峙。


「ボクはもちろん、御伽なんて使わないよ。それでもキミを倒すのは可能だ」


「前からあんたが気に入らなかったよ……。いい機会だね。――あたしのやり方に、口を出すな」

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