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やぶれない14

 次の日。

 非日常に携わっていたとしても、日常を疎かにすることは許されない。雪平コトカは今日も教室の机に座り、さほど興味のない分野の話を聞いていた。思わず小さなあくびが出てしまった。



 ――――……。


 ――――気まずい……。


 というのも、昨日の局津乙との会話が関係している。


 喧嘩……ではないが、気軽に話しかけられるような状態じゃない。左斜め後ろで、少し離れた席。授業の話そっちのけで、彼女が気になってしまっている。教師の言葉すら耳に入らない。そして中には、疑問も存在した。


 ――――どうして、乙ちゃんが私を守ろうとするんだろう……?


 ギアーズとして、友達として、といった具合ではなかった。もっと、想像もできない重い何かを背負っているような表情を、彼女は浮かべていた。

 五味うずらが自分を守ろうとする理由はよくわかる。しかし乙に関しては、なぜそこまで自分に執着するのか皆目見当つかないのだ。思わず、体を小さくひねり彼女の座る机に視線を向けた。



 ばちり。



 火花が弾けたように、視線が合った。


 ――――……!


 コトカは慌てて前に向き直る。いつもの乙は授業中、内職に励んでいるはずなのに。だから多少見ても気づかれないと思ったのに。


 ――――なんで今日に限って……!


 とはいえ、学校が終わっても平静通りの態度でいられるはずがない。この気まずさをどう解消するか……。


 時間に任せることにした。そのうち、元に戻るだろう。幸い、コトカは今日当番ではない。

 つまらない話を無理やり脳に詰めるように、授業の内容に集中した。



           ・・・


 一方、局津乙。


 ――――強くなるための方法はもう、決まった。


 御伽による魔力の使用によって、力を得るという方針を固めた乙に迷いなどなかった。ゆえに、授業中コソコソと別のことに没頭する必要はない。とりあえず今日は、授業をしっかり聞くことにした。“今日”は。


 乙は今日も当番のため、博物館ミュージアムに向かわなければならない。


 ――――三人……いや、四人か。こんなに減ったらまあ、仕方ないよね。


 九人もいたギアーズは、今は五人にまで減ってしまった。

 マスカルポーネ、ゴルゴンゾーラ、ロックフォール、スティルトン。組織を退いた者、裏切った者、殉死した者、自害した者。

 この四人はきっと、乙よりも魔力指数が高かっただろう。というより……コトカと自分を除いたギアーズのメンバー全員、ひどく戦闘に慣れていたのだ。特に、ロックフォールは。


 コトカ以外の人物に関しては、素性どころか本名すら知らない。「チェダー」や「エメンタール」といったソウルネームは、プライバシーの保護のためにつけられていると五味いつみうずらがずっと前に話していた。


 ――――だけど、周りなんてどうでもいい。あたしがすべきことは……。



 ばちり、と目が合った。雪平コトカだ。


 そのままコトカは少し動揺したあと、向き直ってしまった。


 ――――ともかく今は、自分ひとりで虚を倒せるようにしなきゃ。そうでなきゃ、




 ――――コトカへの償いにはならない。


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