3 異世界にいがちなあの種族
今回はヒロインの一人がようやく登場する話です。
最初の方の数話はどうしても説明回ばかりになってしまいそうなんですが・・・もっとテンポよく進んでいった方が読みやすいですよね(汗
そこら辺のバランス難しいなー・・・
一応、現段階では絶対分からない伏線も入ってはいます。最後の方に「あぁ、だからなのね」と思う程度のものですが・・・。
人は約八パーセントの血を流すと死んでしまうらしい。
量で言えば大体二リットルに値するとのことだ。
日本でいう所の大きいペットボトル一つ分くらいの量だろう。
こうして身近にあったモノで例えると分かりやすい。
そう考えれば案外、人間というのは直ぐに失血死してしまうものらしい。
中々ためになる豆知識だ。
・・・閑話休題。
さて、なぜ急にこんな話を思い出したのかというと、当然それには理由がある。
それは今現在、それに近い量の出血をしてる人物がいるからだ。
・・・・。
・・・。
・・。
・・・はい、ボクでした。
そう、日本で原因不明の病にかかり死んでしまったのだろうボクは別の世界にきて尚また死にかけていた。
(これ本当に結構ヤバイかも・・・もう体力がほとんど無くて魔法もつかえないし)
実のところ、これで多少の余裕があれば自分で治癒魔法をかけて回復する事もできるのだが、今は魔法を行使する余裕もない。
日本の世界にはなかった魔法とは瀕死な状態でも即座に回復できるくらいには便利なものなのだ。
しかし反面、当然デメリットもある。
幾つかあるデメリットとしてまず上げるとすれば、魔法を使うにもそれなりに体力がある状態であることが大前提だということだろう。
自分の中にある魔力を使って発動させるのが魔法なのでそれを使える状態にないと当然使うことが出来ない。
それからこれはデメリットというのとは少し違うのかもしれないが、そもそもの話誰も彼もが治癒魔法を使えるわけではないということだ。
日本にいた頃であれば病院へ行けば、設備に差があれある程度の応急処置などはしてくれるだろうが当然こちらの世界にはそんな高度な文明機器などはない。
基本的に重度な怪我などは魔法に頼ることになるのだが言ったようにそもそも治癒魔法をつかえる人間にもそれなりに限りがあった。
習得レベルとしては中級魔法の中の下。
あくまで本に書いてあったことを参考にするなら、の話ではあるけれど。
難易度としてはほぼど真ん中ではあるがそもそも生まれた時から保有できる魔力量は決まってると言われる昨今魔法を使える人間自体が少なく、あまり分母の大きくない中で、と考えるとそれなりに狭き門であった。
なのでデメリットその二としては使える人間が少なく、また使える人間も多くはない、だ。
そして三つ目。
もし治癒魔法を使えとしても。酷い怪我を瞬時に治せる程の人間はそういないということだ。
どうやら本人の使う魔法の練度と保有する魔力量によって回復量が変わってくるらしい。
まぁこれも本の受け売りだけど。
つまりもっとも初歩の治癒魔法と言われているライトヒールでも、治癒を専門とするベテランの魔術師が使うのと昨日一昨日にライトヒールが使えるようになったばかりの駆け出し魔術師が使うのではその効果も各段に変わってくるということだ。
なのでいざ大怪我をした時に治癒魔法を覚えた者がたまたま近くにいたとしても、必ず助かるという保障はないということである。
まぁ実際の効果の程については具体的にどのくらい変わってくるのかはボクも分からないけど。
とある魔術書によれば各々がもつ魔力にも質というものがあり、そういったのも関係しているみたいだがそこら辺は独学では曖昧な部分だったりする。
さて、以下に述べたのがこちらの世界で使える魔法一つである「治癒魔法」に関しての大まかなデメリットであるが今の状況ではそんなデメリット以前の、大前提の部分で既にアウトな状況だ。
治癒魔法が使えないとなれば気合で声を上げて呼ぶ事もできなくはなさそうだが、今ボクが倒れているこの場所は辺境の森と呼ばれている場所の大体中央部分に位置している場所で多少声を上げたところで誰かが来てくれるとも思えなかった。
つまるところ絶賛二度目の死が体験できるかもしれないという素敵なピンチの真っ只中というわけだ。
(あぁぁ・・・こっちの世界のボクと一緒にしてくれた神様・・・折角のご厚意でしたがどうやらダメみたいですぅ・・)
と心の中でいるかも分からない神様に謝罪しておいた。
そう、この世界に来てシアとして記憶が蒼井湊としてのボクと一緒になった時なんとなく分かったのだ。
日本にいたボク、蒼井湊は死んで魂だけとなると同時に、この世界のボク、シアリスもこうして死に体となったわけなのだがどういう因果か、こちらの世界の弱ってしまったボクの魂と丁度身体から解放された日本のボクの魂が統合という形でシアとしての魂と一緒になってしまったみたいだということを。
補足するとどちらのボクも魂の質としては同じで、要は元々は一つの魂だったのものがそれぞれ違う世界に分かれ別々の人物として過ごしていた・・・みたいな感じ。
片方の魂は蒼井湊として。もう片方はシアリスとして。
時間軸などは二つの世界で違うみたいだが、大体そんな感じだ。
丁度いいタイミングで片方の魂が解放され、元々は同じのもう片方の魂も弱っていたので解放された魂を吸収することで多少の補強を行ったというところなのだろう。
感覚的な事なので断言することはできないけれど。
まぁ実際問題、ボクの感覚を元に立てた憶測が違うとしても事実こうして二つの世界の記憶を持ったボクという人間がいるので真実に当たらずとも遠からずな解釈だとは勝手に思ってたりする。
とにかくどうであれ奇跡的にこちらの世界でシアとして第二の、いや第三の人生を歩んで行けそうだと思った矢先の大ピンチなので日本の頃よりも生きたいという思いは強かった。
いや、順序が逆か。
億節を元に考えるとこっちのボクが大ピンチだからこそ魂が一緒になったんだっけ。
(ってどっちでもいいよ・・・)
もう誰でもいいから助けて・・・こういった状況でのテンプレのような事を思った時だった。
カサカサ・・・っと少し距離のある所から草を踏むような足跡が聞こえたのだ。
ひょっとして近くに誰かいる!?
こんなチャンス、逃しちゃダメだ!!
「すい・・・ません・・っ出来れば・・・助けて、ください・・・」
咄嗟にそう思ったボクは残った力を振り絞りそう叫ぶと、そこで力尽き意識を失ったのだった。
―――☆―☆―☆―――
「んっ・・・ここは?」
軽く感じる体の痛みと共に目を開けるとそこは見慣れぬ天井だった。
どうやらベッドに寝かされているようだ。
「目、覚めたのね」
ここはどこでしょう?目をぱちくりさせていると、少し離れた所から思わず聞き惚れるような透明感抜群の声が聞こえた。
この声を水に例えたならそれはもうウユニ塩湖くらいに透き通っていそうだ。・・・いやなんで湖で例えたボク。
何はともあれ最後の叫びを聞いてわざわざ助けてくれた恩人にまずはお礼を言うのが筋だろう。
そう思ったボクはベッドから身を起こし改めて声の聞こえたほうへ向き直る。
「あの!えっと助けてくれて、ありがとうございます・・・危うく死んじゃうところでした。ぁ、もしベッドに血がついていたらゴメンなさい。それからえっと」
「あなた・・・何者なの?」
こうして、命を救われるという体験が特に豊富ではなかったボクは(それが普通だと思うけど)こういう時にどういった事言っていいか全くと言っていいほど分からなかった。
悲しいかな、日本にいる時であれば近所の方々から「あらまぁこの子今までまともに人と話してこなかったのかしらん、あぁ、あなたコミュ障なのね」と思われても仕方のないどもりようだったのだがボクの恩人さんである深くフードを被ったお人はそれを遮って「あなたは何者?」と聞いてきた。
どうやらさっきのウユニ塩湖のような・・・いやウユニ塩湖はもういいとして、とても透き通った声の持ち主はこの人で間違いないようだ。
背丈はボクより少し大きいくらいで、ボクの事を警戒してるのか顔があまり見えないようにフードを深く被っていた。
あんまりジロジロと見るのも悪いかなと少し視線を逸らしたボクはちょっと焦りながらも改めてフード被った恩人さんの質問について考える。
何者?何者・・・名前の事かな?でもそれだった普通に名前を聞いてくるよね・・・。あれ、そう考えればボクって何者?異世界の記憶を持ったこの世界の一般人、とか?
何者か、というある意味で哲学的にもとれる質問にむむむ・・・、と顔が十度くらい傾く。
つまりは首を傾げていたわけなのだが、実はもっと単純な質問なのではないかと途中で気付く。
「ぁ、素性を名乗らず失礼致しました!ボクの名前はシアリスと言いまして、リンスター家の・・・『そんなことはどうでもいいわ』」
答えの分かったことでスッキリとしたボクはとてもいい笑顔で元気よく答えたのだがどうやら違うようだった。紹介の途中で遮られて少し悲しい。
しかしてっきり、シンプルに身分や素性について聞いているのかと思ったのだけれど、どうやらそれも違うようだった。
これまた見事に名乗っている最中に「どうでもいい」と言われたボクは何者、という質問に対しやっぱり哲学的な意味なんじゃ?と再び考え始めまたも顔が十度くらい傾く。
そんなボクを見ていた恩人のフードさんは一度はぁ、という軽い溜息をつくと説明してくれた。
「あなた、あの森で倒れていた時とんでもない量の精霊に囲まれていたけれど・・・。そんなのが普通な人間なわけがないわ。ぱっと見人間族に見えるけれど実は上位の精霊族だとか・・・?」
「精霊・・・ですか?ぇ、精霊なんていました?」
益々角度のつくボクの顔。
「誤魔化さないで。私には精霊が見える。これが、証拠よ」
そう言って追い詰めるようにこちらへ一歩近づいた彼女は深く被っていたフードをそっと外した。
そのフードの中から現れたのは、ちょっとお目にかかれないレベルの美少女だった。
声から女の子だろうとは思ってたけどこんな美少女だとは思ってもいなかったのだが、こうして見ると整った容姿にあの透き通るような声は良く合っているかもしれない。
透き通るような白い肌にプラチナブロンドの髪が神々しささえ醸し出し、何よりまるでファンタジー世界によく出てくるエルフような横に尖った耳は人間離れしているその整った容姿と合わせてまるで人形のような雰囲気を・・・ん?尖った耳?
「・・・エルフの方ですか?」
そう、それはまるでというか、エルフそのものだった。
この世界にも普通の人間以外他種族がいるのは離れで読んだ本に書いてあったので、知識としては知っているのだが人生の大半を監禁に近い形での生活を送っていたので見るのは当然初めてだ。
というか、そもそも本によればエルフは少数部族としてエルフの里と呼ばれる場所に今現在生存している数の大多数が引き籠るようにして生活をしている、と書いてあった気がするのだが。
元々人間族程数のいないエルフではあったが、それに加えてどの種族ともあまり関りを持とうとしないため人間族のいるところにも滅多に姿を現さないって。
あれー?あの時読んだ本は古い著書で今はもう違うのかな?
と、人生初となる種族との邂逅に少し驚いた表情で質問したボクに彼女は黙って首を振る。
「少し違う。正確にはハーフエルフよ。そして片目に『精霊の目』を持つ、ね」
確かに彼女は片目ずつで色の違う所謂オッドアイというものだった。
説明に出てきた「精霊の目」というのも気にはなるがまずは・・・。
「えっと、ハーフエルフって確か人間とエルフのハーフの事ですよね」
そう、まずはハーフエルフ、という言葉について確認しておきたかったのだ。
「そうね。あなたも気持ち悪いと思うかしら」
「え?何で気持ち悪いんですか?なんかエルフって本に書いてあるよりも実際に見た方が神秘的な雰囲気なんですね!とても可愛らしいと思いますし」
神秘的なのも間違いないのだが、それよりも日本にいたボクは二十歳であったため、このくらいの身長の女の子だとどうしても可愛らしいという方がしっくりくる。
何より容姿が整ってることでお人形みたいだし。
キョトンとした顔で思った事を言ったボクの顔を、暫く見ていたハーフエルフの彼女であったがボクが嘘を言っていないと判断したのか不意にクスッと笑った。
「そう、ありがとう。あなた変わってるのね。というかあなたに可愛いって言われても皮肉にしか聞こえないのだけれど・・・。まぁいいわ。私の名前は・・・フィアと呼んで」
「分かりました。フィアさんですね!それとボクなんかよりフィアさんの方が断然可愛らしいですよ」
心底、そう思う。
リンスター家も家系的に顔のパーツが決して整っていないわけではなかったがここまでではなかった。
それにボクは男だからボクなんかより彼女の方が可愛いに決まっている。
本心から言ったボクの言葉に、その白い肌を少し赤くした彼女は話を変えるように
「もう、それは別にいいのだけど。というか今は女の子でも『ボク』っていうのが普通なの?」
と尋ねてきた。
日本にはいた。けどこっちの世界ではどうなんだろう?
分からないことを適当言うわけにもいかないのでここは素直に答えておくことにする。
「んー、どうなんでしょうか。使ってる人は見たことないですけど・・・。いないこともないのかな?でもボクは男なんで普通に使いますね」
「・・・男?」
そう言ったボクに、会ってから一番疑わしい目を向けてくるフィア。
折角少し和らいできた雰囲気が再び鋭さを帯びていくのを感じる。
え、何かボク不味いことでも言ったかな、と。
内心それなりに慌てること十数秒、ハーフエルフでとても美少女な彼女は会った時と同じようにこう言った。
「あなた・・・何者なの?」と。
読んでいただいた方にまずは感謝を
前書きにも書いてありますが、もっとこうしたほうがいい、テンポが悪い、などの感想アドバイス是非お待ちしております。
またさっき初めてPV数の見方を知って覗いてみたのですが地味に100PV超えていました。
本当にありがとうございます。
さて、今回登場したヒロインのフィアですが皆さんも是非どういった属性なのかお考えいただければと思います
ヒントとしましては 主人公に対しては〇〇〇〇 周りに対しては〇〇〇〇です。それぞれカタカナと四文字の漢字が入るとか入らないとか