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2  それなりのレベルだと思うんだけど

生い立ち説明パートです


異世界の転生・転移ものだとまず間違いなくつくものだとは思いますが一向に話が進まぬ。

いや必要だと分かってはいるんですけどね?


でもそろそろ例のハーフエルフちゃんとか出したいよー。次話で出ます、多分。

後パパッと主人公の立ち絵を描いてみました。9歳でこれは大人っぽすぎたな・・・でもまぁ時間なかったししょうがないね!次のハーフエルフちゃんはもうちょい真面目に描こうかな(描くとは言ってない)

「っ・・・ぁ」


声にならない悲鳴。

次に感じたのは痛みだ。


そして痛みと共に口に広がる血の味。


これらはあってもあまりうれしいものではなかったが、祖父に小さい頃から武道を叩き込まれていた自分にとって幸か不幸か多少馴染みのあるものであった。


まぁ多少慣れてるというだけであって感覚的には相当量の出血をしており、このまま放っておくのは危険なレベルではあったが。


(ん・・?)

と、そこであることに気付く。


(あまり楽観視できる状態じゃないけど・・・それよりあれ?痛い・・?)


そう、痛みや味覚を感じるということは生きてるという事だ。

てっきりあの後病室で死んだとばかり思っていた湊にとって割と衝撃的な事であった。

なんていうか、絶対に助からないっていう妙な確信があったのだ。


持ちたくもない自信だがその感覚に自信もあった。

しかし実際はこうして痛みを感じている。

ということはつまるとこ生きているのだろう。


(あれ、でもボク外傷なんてあったっけ・・・)

そう思った時だった。


(ん、ボクは蒼井湊・・・いやシア・・・?リンスター家の次男・・・?)

急に自分・・・蒼井湊として過ごしてきた日常とは違う記憶が頭に流れ込んできたのだ。


なんて表現していいか分からないが、例えるならば夢で別の人間となって過ごした記憶が起きた後にも残っていたあの感覚に近いだろうか。


(ここは・・・王都オークタの外れにある辺境の森・・・。ボクはリンスター伯爵家に次男として生まれたシアリス・・・。そっか、ここにはアルフォード兄さんに呼び出されて来たんだっけ・・・)


一度思い出すと次々に記憶が蘇ってくる。


ここはそもそもボクが蒼井湊として過ごしていた世界とは別の世界で・・・それこそ日本だ外国だとかいう話ではなく、世界そのものが違うらしい。

どうやらこの世界の名前はルカニアというみたいだ。


日本とは違い・・・中世のヨーロッパのような文明レベルで・・・そう、病室にいる時に読んでいたライトノベルに出てくるファンタジーな世界というのが一番しっくりくるだろう。


日本にいた頃には想像もしていなかったがもちろんこの世界では魔法があり・・・どうやらボクことシアにはそれなりの才能があるみたいだ。

それなり、という曖昧な表現なのは比較対象がいないからである。


というのもこのルカニアという世界で育ったボクは今年で日本でいう九歳にあたり、ボクの生まれたリンスター家はそれなりの歴史を持つ伯爵家なのだが実はその次男であるボクは扱いは次男であっても正式なリンスターの血統ではない。


当主である父の妾として一時期重宝されていたメイドの一人がボクの母なのだが、その際どうしてもといい連れ子として無理やりリンスター家に連れてきたのが事の発端だった。


これは後々分かったことなのだがボクの母は体が弱く、メイドとしての仕事に加え父の相手もしていたことで余り命が長くなかったそうだ。

それを自分でも分かっていたのだろう。自分がいなくなった時の事を考え多少無理をしてでもボクをリンスター家へ養子という形でいれたのだが・・・。


それがやはりと言うべきか父の正妻であるキャサリン様の怒りに触れたらしく、ボクは離れ(家)にて半ば監禁のような生活を強いられる事になった。

ずっと一人で家にいる生活だ。当然すぐに飽きがくる。


そこである時に教養をつけるためと言い、母や他のメイドに本を持ってきてもらえないかとお願いをしてみることにした。

本は一冊読むのにそれなりに時間のかかるものだが何せこっちは一日やることがない人間だ。

時間なんて誰かに上げても余る程にある。


そう考えれば逆に時間を潰すにはもってこいのモノであったのだ。


そうなると最大の心配としては本をボクの住んでいる離れへと持ち出す許可が出るのかということだったのだが、そんな心配とは裏腹にそれはアッサリと許可が下りた。

恐らく養子とはいえリンスターの名を背負う以上世間知らずな上に一般教養でさえないのは困るとでも思ったのだろう。


本来であれば勝手に離れへ閉じ込めておいて、随分な理由だと怒るところだとは思うのだがそれでも無制限に本が読めるのだと思えば全く気にならなかった。

兎にも角にも離れへの本の持ち出しを許可されたボクはそれ以来一日中本を読み続ける生活をする事になる。


一般教養に関する本や王都の歴史に関しての本。時には経済学や心理学について書かれていた本など少し変わったものも含めとにかく数多くの本を読んだ。

その中でも、一際異端だったのが魔術の教本である。


これも後に知ることになるのだが、どうやら魔術に関する本は本来お手本となる魔術師と共に実技を交えて覚えていくものらしい。

だが離れで一人孤独なボクには当然そのような先生となる人物がつくはずもなく、理解するには自分一人で本の内容を読み解く必要があった。

確かに書いてある内容はそれなり難しいものだったが言ったように時間だけは有り余っているのだ。その全てを読み解くこともそう難しいことではない。


これも後でメイドの一人に聞いたら独学で読み解くのも本を読んだだけで使えるのもおかしいと言われたけど。


まぁそれはさて置いて。

人間、そうして様々な魔術に関する知識を得たら、次は実際に使ってみたくなるのが性というものだろう。

これはもう人として当然と言ってもいいくらいの好奇心だと思うんだけど・・・。


知識を得たら、試したくなる。え、普通だよね?


とにかく、その頃好奇心で一杯なお年頃だったボクは(今もそんなに変わらないけど)自分一人しかいないという環境を逆手に取りその日からただひたすらに魔法の練習することにしたのだ。


本を読み、魔法の練習をする。

一つの魔法を習得したら違う魔法へ。

たまに覚えた魔法で応用が利かないか試してみたり、二つの魔法を合わせてみるような実験じみたこともした。

そうした濃密な時間は自分が思っていたより時の進みが早く、本に書いてある魔法をあらかた覚え少し満足し始めていた時には初めて離れで本を読み始めてから実に四年が経過していた。


連れてこられたのが日本でいう二歳の頃で、本を読み始めたのが四歳だったからこの時の年齢は八歳だ。


八歳になったボクは魔法をあらかた覚えるのと同時に読みたい本のジャンルも無くなってきつつあり、次は何で時間を潰すのかという割と深刻な問題が発生していた。


今考えればそれなりに下らない問題だとは思うがあの部屋にいた時のボクにとっては死活問題である。

何せやることを見つけなければボーっと何もせずに過ごす毎日が待っているのだ。

そんなものはただの苦行でしかないし例えそれを苦に感じなかったとしてもそんな実のない時間は願い下げであった。


となれば本家の方に許可してもらえるような内容でそれなりの時間退屈を紛らわせるものを考えなければならない。

これは一つの魔法を習得するより難しい問題だぞ、と頭を悩ませいた時、それは唐突に訪れた。


急遽ボクが、離れから出ることになったのだ。


理由は簡単である。

父の妾件メイドであった母が亡くなったからだ。


どうやら最近姿を見ないなと思っていればどうやら床に伏していたようで、元々の体力の無さや今までの過労が祟りそのまま亡くなってしまったらしい。


母の最期を看取ることができなかったのは自分を責め、この歳になって残っていた唯一血が繋がった肉親が居なくなってしまった事に大きな喪失感を覚えたが、事態は悠長に悲しんでる暇を与えてはくれなかった。


本家の方で何が起きたのか。

それは跡継ぎ争いの問題であった。


ボクはそもそも当主になることに興味はなかったし、血も繋がってない養子であったことからそんな争いに巻き込まれる事すら想像だにしていなかったのだが・・・どうやらボクが教養においてズバ抜けて優秀であると本家の方に噂として出回ってしまったらしい。

それが何の因果か父の耳に入り、ならばと無理やりな形で跡目争いにボクを参加させたのだ。

確かに今持っている教養を同年代と比べれば天と地の差があるのは確かである。

しかし考えてもみてほしい。

こっちはすることが本を読むことしかなかったのだ。


毎日毎日、来る日も本だけを読んでいればそうなるのは当たり前ではないだろうか。


冷静に考えれば分かりそうなものだがしかしながら貴族というのは無駄にプライドが高いものだったらしい。


パッと出の、それもリンスター家の血筋を継いでいない者などに当主の座を譲れるか。

そういって出会って早々にこちらを睨みつけてきた血の繋がってない兄ことリンスター家の長男アルフオードとの初めての対面であった。

その兄の陰に隠れるようにしてこちらを見ている少女もいた。名をハルアと言い、この少女もまた血は繋がってないがれっきとした妹であったのだ。


兄がいることは聞いてたけど妹がいるなんて聞いてないよ母さん。

と、心の中で密かに文句を言ったのは内緒だ。


ちなみに後で教えてもらったのだが、どうやら歳はボクの一つ下だったらしい。ということはこの時7歳だろう。

リンスター家は代々男子が当主の座に就くこととなっていたのでハルア自体は跡継ぎ争いには参加しないものの、どうやら兄や正妻であるキャサリン様に色々と言われているらしく兄のアルフォード同様最初から敵意剝き出しであった。それはもうガッツリと。実際べーっと舌を出してこっちを見てたしね。


とにかく、こうして実にあっさりとボクの離れでの生活が終わり跡目争いという名目での本家生活が幕を開けることとなったのだ。


そう。

・・・なったのだが。


実際に数か月も生活しない内にとっとと離れへと戻りたいと思っているボクがそこにはいた。


何故かって?


だって、何かにつけて兄のアルフォードが嫌がらせやいちゃもんをつけてくるんだもん。

やれ顔が女みたいで貧弱だの、どうせテストはズルをしたんだだの、直接的な暴力を振るわれそうになったので咄嗟に魔法で身を守れば卑怯者呼ばわりだ。更にはその歳で魔法なんて使えるわけないからインチキに違いない、最低な奴だと好き放題言われていた。


実際この歳で魔法を使える人間は殆どいないと知って目立たないためにそれから魔法の作用は控えるようにしたのだが・・・それにしても散々な生活である。

特に興味のあるわけでもない跡継ぎ争いへと勝手に参加させられ特に面識もあるわけでもない兄に嫌がらせををされる毎日。

そんなエブリデイを楽しめる人間なんて早々いないだろう。

おまけにメイドやお手伝いさん達も見て見ぬふり、それなりに仲の良いメイドさん達は後でフォローしてくれたり人のいないところで可愛がってくれたりもしたが立場上問題が起きたその場では手出しできない。そして正妻であるキャサリン様は完全に兄であるアルフォードに味方をし、家を空ける事の多い父はそんな醜い諍い事が起きてるなど知る由もない。妹のハルアに関してもどんな話を聞いてるのか完全にボクが悪者扱いだし・・・。


イジメは見ているだけの人間も共犯者だという言葉が日本にはあった。

その言葉を引用するならまさに周り皆が自分の敵だという、平穏や幸せとはかけ離れた生活がそこにはあったのだ。


兎にも角にもそういった経緯で、魔法を覚えたはいいがまともに使える環境になく、また使わなければ評価される事もないというジレンマが今自分がどのくらいのレベルなのかを知る機会を逃していた。


なので現状、自己評価としての「それなり」に使える、という表現になったわけである。



挿絵(By みてみん)

まずは見てくれた方に感謝を

そして早速ブクマに入れていただいた方々がいるみたいで・・・感無量です

本当にありがとうございます


またよろしければ感想、評価などぜひぜひお待ちしております


・・・四千文字って、書くとこんなに大変だったんですね(汗

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