1 いろんな意味での転機
取り合えず一話投稿です
一応二、三日に一話のペースでいきたいと思いますが、遅れることもあるとは思うのでご了承下さい。
というか前置きパートが微妙に長くなった上になんか文章固いな・・・
次から主人公異世界編いきます(次からは一話4000字程度だと思います)
とある病室の中。
横たわっているベッドの横にそっと視界を移せば丁度お見舞いに来た妹が置いてくれたのだろう何種類かの花が、青を基調として小さな花瓶に添えられており一面白で覆われた酷く殺風景な病室の中でちょっとしたアクセントになっていた。
視界が霞んでさえいなければ花の色と併せてもっとちゃんとしたコントラストを感じることが出来たのかもしれないが、どうやら今のボクには出来そうもない。
またあまり聞こえなくなっている耳を、それでもと思い澄ませてみれば、夏らしいセミの声も聞こえず入ってくるのはすすり泣く妹の声と冷房の音だけだった。
あまり感情を表に出さない妹にしてはとても珍しい。
普段であれば頭を撫でてあげながら「大丈夫だよ」の一言でも言うのだが残念ながら手を動かすことができない。
・・・そう、ボク事 蒼井 湊は今現在死の淵に立っていた。
死の淵といっても突発的に起こった事故の類ではなく半年ほど前に発症した病気によるものだ。
実のところボクは生まれつき 先天性色素欠乏症 という所謂アルビノというもので肌は白人のように白いし髪も白髪、更には眼の色も赤色と他の人とは違う容姿で生きてきたのだが、この先天性色素欠乏症というものはメラニン合成に関わる遺伝子異常によって起きるものらしくて、その症状は様々らしい。
ボクに関していえば免疫異常による身体の病弱さだったり日の下にあまり出れなかったリといった具合だったのだが、つい半年前にその免疫異常が原因なのか、現在の医療科学ではまったく分からないと判断された原因不明の病にかかってしまったのだ。
その症状は単純明快で、特に痛みを伴うものではなく、また表面上に何か起こるものでもない。
ただ単に、どんどん体力がなくなっていき身体が極端に衰弱していく、というものだった。
その衰弱の仕方は異常で、アルビノとはいえそれなりに元気にしていたボクがたった半年間でこんな状態にまでなったのがいい例だろう。
兎にも角にもそんな原因不明の病にかかってしまったボクなのだが、残された命もどうやらそろそろ限界らしい。
先ほどからボクに何かを言ってるだろう妹や両親の声もろくに聞き取れず、視界も時間と共にどんどん霞すんでくる。
そしてそれらと共に感じる強い睡魔がボクにそう伝えていた。
恐らくこのまま意識を手放せば次に目覚めることはないだろう。待っているのは「死」だ。
そんな確信があったボクは今の今まで必死に抗っていたのだが・・・そんな意志とは関係なく開いていた瞼が自然と下がってくる。
(あ、ヤバイ・・・これは駄目なヤツだ。)
そう感じた途端、一気に視界がブラックアウトした。
急速に意識が遠のいたボクは、結局この世界で二度と目を覚ますことはなかったのだった。
―――☆―☆―☆―――
彼女は生まれたときより孤独だった。
ハーフエルフとしてこの世に生まれついたことがもはや彼女にとっての最大の不運であったといえるだろう。
完全な人間でも、エルフでもない中途半端な存在。
それ故に、共に生活をしていた父と小さな村の中でも常に奇妙なものを見るような目で見られてきた。
「なんだコイツ俺たちと違うぞ」「化け物だ」と。
人は自分とは違うものに対して警戒心を抱く。
それは人が集団として生活をするようになるにあたって培われてきたものであろう。
あれもこれもとなんでも受け入れれば集団で生活する自分たちにとって破滅へと繋がる事を実体験と共に学んできたからだ。
その事を適齢期までの成長が特に早いエルフの血を継いでいた彼女も幼いながらに何となくだが分かってはいた。
周りと容姿も、通っている血も違うからこんな目に合うのだと。
(私は、確かに『普通』の人じゃない・・・でも)
しかし、理解はできても納得はできないのが心というものである。
なんで、自分だけがそんな目で見られなきゃいけないのか。なぜ、父も助けてはくれないのか。きっとこんな姿で生まれてきた自分に対して負い目があるからなのだろう。では何故こんな自分を生んだのだ?
聡いが故にそういった自問自答を繰り返えす。
そうした多感な時期の不満は、ある日急に訪れた父の他界をきっかけに諦観へと変わった。
自分にとって何一つ良い事のない世界。
世界から拒絶されたとも感じた彼女は不意に思ったのだ。
(なんて・・・つまらない世界)
と。
当然父が亡くなったことは悲しくないわけではなかったが自分でも驚くほどにショックは少なかったと思う。
そんな、色褪せたような世界の中で生きていた彼女はある日森の中で少女のような外見をした少年と出会う事になる。
その出逢いが彼女の世界を色付ける出逢いになるとも知れずに―――
感想や評価等、ぜひぜひ、お待ちしてます。
誤字脱字については後々修正掛けると思いますが取りあえずはどんどん投稿していこうかと思ってます。
また趣味で絵も描いているので主人公共々そのうち立ち絵を描いてあげるかもしれません(上げるとは言ってない)