私は感謝されたい
紙の中に書かれている文字が一瞬にじんだようになると、新しい文章が現れた。
『信仰と言っても難しいことじゃありません。あなたの肉体に設定されている「性交は成人してから愛のあるもの同士でしかできない」は後付けされたものです。他の設定に比べれば結びつきが弱いので、人の力程度でも完全に消すことはかなわずとも、「性交は愛のあるもの同士でしかできない」程度なら書き換えることができるでしょう』
「……つまり私は生涯一人で……その、性欲の処理ができないということに?」
再び紙の中の文字が変化し始めた。ひょっとして紙ではないのではまいかと思い、紙をいじるが、破れないこと以外は普通の紙なようだ。
『成人するまではそうですが、成人したら「性交は成人してからでしかできない」に変更すればそれなりに処理方法はあるでしょう。あ、かといって無理やりとかはダメですよ』
希望が見えてきたけど、信者を作るとかものすごくハードルが高いような気がする。宗教でも作ればいいのだろうか。
『信仰の正体というのはこっちの世界でもよくわかっていないのですが、強い思いや感情を受けることで得ることができるとされています。法則から外れた力が発達していない世界に生きているあなたの世界では、多くの者に好かれる人は祝福という形で、多くの者に恨まれている人は呪いという形で現れることが多いみたいですね』
「つまり私はどうしたらいいんですか?」
『神によって、得意とする信仰は異なります。信頼や恐怖、愛など様々な種類がありますが、特に私は感謝の信仰の扱いを得意とします。多くの人を助けて、感謝を得てください。そうすれば、私があなたの信仰を使い奇跡を起こしましょう』
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