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2-0 問い
目を開くと、真っ白な空間に浮かんでいた。周りには何もない。それどころか……本当に、何も無い。自分の体すら見えない。であるのに、俺はあたりを見渡すことが出来る。とても不思議な感覚だ。
そんな中をしばらくたゆたっていると、不意に目の前に、色が現れた。白の中に、薄青い服を着た女性。彼女はゆっくりとこちらに手を伸ばす。
『貴方の望みは何ですか?』
そして、そう言った。
望み? そんなこと急に聞かれてもな……。しかし、一応考える。俺の望み……望みは。
何故か湖鉄の顔が頭をよぎった。彼女が、連絡先を交換するだけで凄くうれしそうだったこと。自己紹介で、とても楽しそうだったこと。
……そしてそんな彼女に親近感を覚えてしまったこと。そこまでくれば、自ずと願いは導き出せた。
「俺の願いは……」
俺の、願いは。
「他人から、好かれたい」
「その願い、叶えましょう」
現れたときと同じように、それだけ言って彼女はふいっときえてしまった。……何だったんだろうか、なんて考える間もなく、その直後、白いトンネルを抜けたかのように、急に世界に色が満ちた。