表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

この味は一期一会

#1 珈琲

感想・ブクマお待ちしてます(*^^*)

 いつものように豆を取り出した。今日飲むのはお気に入りのグアテマラ産の豆。味のバランスの取れた種類だ。


 手回しのミルに拘る方もいるようだが、私は電動で豆を挽く。豆を均一に挽くことができ、味にムラが出来るのを防ぐためだ。挽いた豆をフィルターに入れたら、約80℃にしたお湯をポトポトと垂らしていく。ああ、この芳ばしい薫りがたまらない。それは焦げた砂糖のようで、煎ったナッツのような感じ。いや、この薫りが珈琲の薫り。それで十分だ。他の何でも無いのだから。


 しばらく見守る。コーヒーポットに茶色い水滴が現れたら、少しだけ湯をかける。蒸らしと呼ばれる時間だ。珈琲の味を決める大事な時間、そして、今日の珈琲の味との出会いの瞬間にもなるのだ。


―――――――


 私と珈琲との出会いは確か小学校六年の頃だった。父が手にした缶コーヒーを一口くれとねだった。


 衝撃だった。


 舌を出して渋い顔をしてこう言うのだ。


「に、苦い……」


 それから、どういう風にこの苦味を克服したのかは分からない。少しずつブラックの味に慣れたのか、カフェオレを飲んでブラックを飲めるようになったのか。それすらも覚えていないのだ。当然だ。ブラックであろうと、珈琲は美味しい。その不変の事実を受け入れられたのだから。


――――――――


 蒸らしがすんだら、お湯を注ぎながら中央にできた泡を膨らましていく。正直、ここは難しい。そして、お湯を全体に……。


 温めたマグカップに珈琲を注ぐ。鼻いっぱいにあの薫りが広がる。湯気をたてながら、それは誘惑する。迷うことなく、口にマグカップを運ぶ。


 苦く、香り高い中に広がるほのかな甘味。ビターチョコレートのように苦く、ほんのりと甘味が残る。そして、じわじわと酸味が広がる。液体が喉に伝わっていくのを感じた。そして、口の中に酸味が残る。その酸味がすっと消えたかと思うと、今度はナッツのような香ばしく、深く甘い味わいが……。


 しばらく時間をおいて飲んでみた。だが、違う。さっきの味とは違う。よりえぐみ、渋みの角がとれた濃厚な味わい。この化学反応のような魔法が私は好きだ。

 珈琲の中にはブルーベリーのような薫りがするものもあれば、和三盆のように舌先でヒヤリとするような感じの味わいを持つものもある。そのことについては、また別の機会に触れよう。


 この果て無き世界を私は愛して止まないだろう

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング←ポチっとしていただけると嬉しいです!  
― 新着の感想 ―
[一言] 三度の飯よりコーヒーが好きな私が通ります。 短文エッセイでここまで珈琲の奥深さを表現していることに衝撃でした。 これはお見事です。即惚れましたm(__)m 私はエメラルドマウンテンが好きです…
[一言] 描写が丁寧な上にすごく分かりやすくて、味が口に再現される思いです(≧∀≦) コーヒーが飲めない僕でもウットリしてしまいそうです(//∇//)
2016/11/08 20:08 退会済み
管理
[良い点] コーヒーの味が伝わってきました。 [一言] コーヒーが口の中に広がる作品です。 美味しいですよね。 コーヒーの美味しいが伝わります。 いい香りもする気がします。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ