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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
99/143

002(095) 『競争(レース)』

第二章002です。


※ 16/4/16 本文誤字脱字修正

 とんでもない発言に面食らっていたのも束の間、ダリウスが低めの声で笑った。

「おいおい。まさかとは思うがアトランティス大陸でも探せとでもいうのかい? この創造主様は?」

 ダリウスは他の面々に向かって白い歯を見せながら、他の四人に問いかけた。

「黙ってなさいよ。ダリウス。あたしはあなたの疑問を聞きたいんじゃないの」

 と、ダリウスのふざけた態度を一喝したのは僕の左隣りに座っているイリアだった。

「イリアの言う通りだ。聞きたいことがあるのなら、まずは白の創造主がすべてを話し終えてからだ。質問なんてその後でもできるだろ」

 腕を組んだハインがぶっきらぼうに言い放つ。

「わかったよ。俺は小さい頃から堪え性がなくてね。親や教師には落ち着きが無いとよくいわれたんだ。まぁ、クラスメイトは俺の起こす行動を楽しみにしていたがね」

 ダリウスは豪快に笑ってみせたが、誰も彼に続かなかった。

「調子が狂うぜ。あー、わかったよ。創造主。話を続けてくれ」

 ダリウスがかったるそうに右腕を前に振り払うと、口を一の字にして閉じていた白の創造主の口唇が開く。

「ダリウスさんが口にされたアトランティス文明も捜査対象となりますが、あの文明はすでに調べつくされたと思われます。それでも、現代技術では復元もしくは複製、再利用は不可能でしょうが。もちろん、重要な文明ではありますが、失われた肉体の復元に関する生体技術はかの文明ではありません。あなたたち五人に行ってほしい場所はシュメールとマヤです」

「初期メソポタミア文明。イラクやトルコ……あとはシリアか。ティグリス川近辺だった記憶があるな」

 ハインが組んでいた腕を解いて、両肘をテーブルの上につけた。たしか、数年前に多くのシリア難民がドイツに頼った、みたいなニュースを見た記憶がある。原因は内戦だったようだが、その難民を受け入れるかでドイツ国内でも一悶着あったはずだ。

 ハインはドイツ国民のひとりとして、シリアという国に思うことがあるのかもしれない。

「そうですね。まずはシュメールのほうから話しましょう。シュメールの人々が何をしたのかは省きます。あなた方に知ってほしいのは、最古のシュメール文明には遺伝子改変と調合、調整による技術がありました。そして、生物の生成すらも可能でした」

「それじゃ、黒の創造主みたいに生命を生み出す技術が過去の地球にあったということですか」

 僕は思わず口を挟んでしまったが、誰も咎めることはなかった。むしろ、みんな同じ思いだったのかもしれない。

「厳密には違いますが、新たな生命体を創生と生成するという意味ではベクトルは同じです。この技術がなければ、失われた適正者の肉体を取り戻すことは不可能なのです」

 白の創造主が話す内容は半信半疑ではあった。けれど、僕らの目の前にいるこの人は普通の人間でないことを知っている。地球の科学では実現不可能な技術を使用して僕ら五人をこの空間へと飛ばしたのだ。全員が普通に足を運んで訪れたわけではないだろう。気がつけば紫色の空の下、生い茂った草原に立たされ、突如として現れた家に招かれた。

こんなことが出来る人間が嘘偽り、妄想に似た狂言を発言するだろうか。

『彼女』が僕ら人間が想像の世界にしか存在しなかったはずの『異世界人』なのに、疑うことすら無意味だ。

 その『彼女』が、超科学を誇った古代文明が存在していたというのだから、信じるほかなかった。

「古代シュメール文明の遺跡から発掘してほしいものは生体製造機の要である設計図とその動力源です」

 白の創造主が小さなその両手を重ねあわせた。

「お願いできますでしょうか?」

 その表情は、異世界で一角をなした創造主が出すものではなく、どこまでも人間的で哀願していた。

 僕らは顔を見合わせる。白の創造主が求めるのなら、それに従うまでというのが同一の答えとも言える。しかし、一人だけ納得していない人物がいた。

ハインだ。彼はこめかみを人差し指で叩きながら、白の創造主を睨むように見つめている。

「話は大体わかった。断る理由はない。ただ、その承諾する前に幾つか聞きたいことがある。当然、聞いてくれるし答えもしてくれるのだろう?」

 その物言いは威圧的でもある。きっとドイツの人がみんな彼のような感じの人ではないだろう。こういう人はどの国にもいる。

「当然です。なんなりとお聞きください」

 そんなハインの態度をものともせず、白の創造主は聞き手に回ろうとしている。

「設計図と動力源を探しだせば、死んでしまった友人たちを救うことが出来る。いいだろう。探してやる。ここにいる全員に生き返って欲しい人間がいる。その二つがあれば『Relic』の世界にあった『再生の器』が再現されると思っていいのか?」

 『再生の器』。これこそが、僕らがオンラインゲームで死んでしまった後に復活が出来る場所、みたいな所だ。ゲーム中(実際には異世界のルーシェンバルラの世界だが)で死んでしまっても、二十四時間後には、器の中で肉体が復元されて活動可能となった。

「ルーシェンバルラで私が作った『再生の器』と同じような物はおそらく作れないでしょう。ルーシェンバルラとこちらの世界では物質の根源と造りが異なっているためです。この世界に存在する物質、その土地でなければ『再生の器』に似た物は作れません。それ故に、この世界で過去に作られた製造機の設計図と動力源が必要なのです」

「では、なぜ俺たちなんだ?」

「ハインさん。あなたはもう全てを察しているのでは?

「なに答え合わせだ」

「なによ。偉そうに。それはあたしたちじゃないと発掘が出来ない場所だからに決まっているからでしょう? 少しは考えてから発言しなさいよね」

 ハインに噛み付いたのはイリアだ。

「そういう君も少しは他人の考えを読み取ってから発言すべきだ」

「なんですって」

 イリアが怒りに任せて立ち上がったので、僕は慌てて彼女の腕を掴みとった。

「離してよ。こんな好き勝手に言われるような筋合いなんてないわ」

「イリア、まずは落ち着いて。ここで僕らが言い争ってもしかたないんだから」

「そんなことわかっているわよ。でも、あたしは人としてこいつが気に入らないの。というか、こんな奴と一緒に遺跡発掘とか無理。チームなんてなおさら無理ね」

「じゃあ、俺を除いて四人で行くのか? それは辞めたほうがいい」

 ハインがイリアを見下すように目を細めた。

「なんであんたがそんなことを言い切れるのよ。あんたみたいなインテリぶった奴がいなくても上手くやってみせるわ」

「そうかい……じゃあ、改めて白の創造主に問おう。四人で大丈夫なのか?」

「大丈夫よね?」

 ハインにつづいてイリアが白の創造主に向き直った。二つの視線に戸惑うことなく、白の創造主は静かな顔をしていた。

「大丈夫とも、そうでないともいえます」

「勿体ぶる言い回しじゃないか。俺はそういう曖昧な言葉は嫌いだぜ? もっとはっきりと言ってくれよ」

 今度はダリウスまでもが立ち上がり、白の創造主を糾弾する。どうしてこうもせっかちなのだろうか。

「それは──」

 と、白の創造主が言いかけた言葉よりも先に、ハインが答える。

「それは、黒の創造主の手先が現れるから、だろ?」

 ハインの冷たい言葉に、他の四人が息を呑んだ。

「なんで黒の創造主が出てくるの?」

 イリアの質問には答えず、ハインの視線は僕へと向けられた。

「ここにいるみんなは知っているよな。彼、シンゴがアメリカへ発つ直前に試作適応者と戦ったことを」

 もちろんと言いたげに、みんなが頷く。

「シンゴ。試作型と戦った時、適正者となったと聞く。それも時間制限付きで」

 そんなことまで知っていたのか。いや、こういう情報は各国のエージェントが横流しにしているはずだし、ここには僕を適正者にさせるための準備をしてくれた白の創造主もいるんだ。知っていても当然だ。

「実際にはどれくらい適正者として活動できるかわかりませんが、五分から十分くらいは適正者になれます」

「覚醒した適正者だけを狙う試作適応者。黒の創造主が動くと見越して、あんたは俺たちを再び適正者へとさせる準備をしていた。違うか?」

「その通りです」

「続けるぞ。それは襲われることを見越してではなく、黒の創造主もこの星に隠されている超古代文明の遺産を狙っているからじゃないのか?」

「そうです。黒の創造主は、私同様、この星の成り立ち、そしてこの地球という星で文明を築きあげた人間たちの歴史をひも解きました。そして気づいてしまったのです。この星にはまだ未知の科学が眠っていることを」

「先日の世界的電波ジャックで見せたドラゴン。あれは元々こちらの世界にいたはずの生物だ。黒の創造主の狙いはこの星と自分たちの星を融合させるだけでなく、太古の遺産さえも奪おうとしている……だから俺たちの五人なんだよ。覚醒した力を所有しつつ、適応者と対等以上に戦える手駒がほしかった。発掘するだけでなく、戦うことも余儀なくされていたからこそ、少数ではあるが俺たちの力が必要だ」

 ハインの言葉に釣られて、みんなが白の創造主を見つめた。

「手駒だとは想っていません。私は人を道具みたいに扱うつもりは毛頭ありません。言葉が信じられなくとも、この想いだけは信じていただきたいです」

「最初にこのことを話してくれたら、オレも意地悪なんてしなかったよ」

「申し訳ありません」

 白の創造主はハインに向けて謝罪をした。

「本当に私は、昔からダメな人間でした。ルーシェンバルラをより良い世界にしようとして、その結果、争いを産んでしまったのですから……」

 そうだった。彼女もそしてあの黒の創造主もルーシェンバルラの世界における古代人の生き残りだった。一人は生命を、もう一人は道具を作る天才科学者。二人は荒廃したルーシェンバルラの世界を作りなおそうとした。神ではなく元人間として。

「まぁ。この件はもういいよ。納得できた。有耶無耶にされるのが嫌だっただけだ。裏切り者たちと戦うのはそこまで苦にはならない。ただ、オレはまだ聞きたいことが残っている」

 待て待てと割って入ったのはダリウスだ。

「まだ他にもあるっていうのか? 俺たち適正者と適応者が揃って古代文明の遺産を手に入れるレースだという以外に、まだあるとでもいうのか?」

「もう忘れたのか? 黒の創造主はこの星にいたはずのドラゴンを復活させた。ということは、ドラゴン以外のモンスターがその遺跡に眠っているかもしれないだろ?」

「え?」

 ハインと白の創造主以外、みんなが同じようなリアクションと言葉を発した。

「生命体を製造する、それは『Relic』における黒箱と同じ仕様とはいえないか?」

 黒箱。レリックモンスターを生み出す黒の創造主が創りだした生体兵器製造機。

 それと同じものが、古代シュメール文明の遺跡にもあるというのか?



最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回投稿は4/16です。

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