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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
63/143

059 『並行(パラレル)』

059です。


※ 12/24 本文・誤字修正

「なんだよ、ちょっとは驚いてくれてもいいんじゃないのか」

 反応の薄い僕にカズさんは面白くなさそうに言った。

「エヴァン=白の創造主はこの世界で戦っていれば思いつきそうなことです。なんたってカーニヴァルが渡米してまで探しだした人物ですから。ただ、面と向かって『そうだ』と言われれば拍子抜けもします。それでも、ああそうですかと鵜呑みにすることはできませんよ。エヴァンが白の創造主だと決めつけたかもしれませんよ?」

「当然、疑うよな。俺だって初めは疑ったよ。だが、事実だ。エヴァン・ラスティングは白の創造主の転生体だ」

「二度も同じことを言わなくてもちゃんと理解していますよ。僕が気になっているのはカズさんが信じた理由です。リリィが目を覚ますまでまだ時間はありますからね」

 僕はカーニヴァルの顔を思い出していた。結果だけで満足するのはゆとり世代の悪い癖だと、あいつは電話越しに言っていた。

 すごく腹立たしいことだけど、カーニヴァルの言っていたことは正しい。過程を軽んじ結果だけを求めるようでは、中身の無い無能な人間になりかねない。僕はそう考えている。もしかしたらと思う。性格も人間性も真逆なのに、僕とカーニヴァルは同じような思考を持っている気がしてならないのだ。

 あんな殺人狂の男と僕が似ているだなんて、認めたくない。

「真悟、どうした?」

「え?」

「思い出し怒りっていうのもあるだな。お前、すごい怖い顔をしていたぞ」

「気のせいですよ。それで、話してくれるんですか?」

 僕は急場しのぎの笑顔を作った。

「そうだな。俺も気が急いだようだし、腰を据えて話をするとしようか。リリィが起きるまでまだ時間もあるからな。長話になるのを覚悟で聞けよ?」

「ええ」

 わかったと言って、カズさんは椅子を持って移動し、僕から離れたところに椅子を置いて腰を降ろした。

「どうして離れたんです?」

「深い意味なんてねーよ。あるとしたら、絵的な問題だよ。男同士が密着した状態で話すのも気持ち悪いと思っただけだよ」

「それ、誰に気遣っているんです」

「だから、気分だよ。気分! 話すのやめるぞ」

 変な脅しだなと思いながら、カズさんが話しだすのを待つことにした。

「まず、エヴァンの話をする前に、俺たちの世界と『Relic』のルーシェンヴァルラの世界が一体化したところから始める。単純にゲームの世界が現実世界に出現したっていうのなら、それでもいいさ。だが、納得がいかない。俺たちがいる此処は創作された世界じゃなくて現実なんだ。どんな超常的力が働いたのかってまず疑う」

 カズさんはテーブルに置いていた煙草をいつの間にか持っていた。おそらく、椅子を運ぶときに一緒に持っていたのだろう。

 早業だなと感心している隙に、煙草に火は灯されていた。

「俺はこの異世界化した世界で何が起きているのか、誰がこの世界をお膳立てしたのか、そこを知りたかった」

「それは、黒の創造主じゃないですか。現にこうして僕らの世界はゲームのキャラクターたちに侵略されています」

「本当にゲームの世界が具現化して、キャラクターもモンスターも動植物などすべてが俺たちの世界へと乗り込んできたと思うか?」

「それ以外になにが考えられるんですか? 僕らの装備しているこのレリック武器もゲームにあった。サポートしてくれている妖精もすべて現実に表れてしまった。カズさんの言う通り、納得は出来ないけれど、超常的な力が働いてしまったとしか説明できないじゃないですか」

「真悟。考えるスタート地点が間違っているんだよ」

前提から間違えているということなんだろうけど……僕はカズさんが続きの話をしてくれるものばかりだと思っていたが黙ったままだった。しかもジッと僕を眺める目はどこか楽しそうにも見えた。

どうやら、自分で考えてみろということだ。考える楽しさを教えてくれたのはノヴァさんだったな。僕は小さく微笑み思考を巡らせた。

 どうも昔見たアニメや漫画の先入観で視野が狭くなっていたようだ。まずはそこを切り捨てる。ゲームの世界だと思わずに、もしも……と考えた先に頭の中が閃光のように輝いた。

「もしも、ルーシェンヴァルラもまた僕らの世界と同じく、実際に存在している世界だとしたら」

「五十点。さぁ、もっと考えろ」

 カズさんは両腕を組んで僕の様子を伺っている。

「そう……僕らがネットで遊んでいた世界は創られたゲームの世界ではなくて、二次元化した異世界だった?」

「いいぞ。じゃあ、なぜ俺たちの遺伝子情報を使った?」

「それは」

 僕らの遺伝子情報を取り込んでキャラクターメイキングしたと思い込ませていただけで、実際は本当に僕らの分身が異世界で戦っていたのでは?

 『Relick』の世界で肉体は作られる。けれど、実際に僕らはゲームパッドや、キーボードを使って操作をしていたのか……それは、創られた肉体は器でしかなく、魂がないから。故に、モニター越しで肉体を動かす魂として、本物の僕らが操作していた。

 僕の思考は更に飛躍する。

 ルーシェンヴァルラにいた白の創造主は外の世界(僕らがいるこちら側の世界)にいる人間たちの遺伝子情報取り込むことで、クローンを創りあげた。

「まさか……じゃあ、ゲームで死んだペナルティとして復活するまで二十四時間かかるというのは、クローンを生成するための所要時間だった?」

「短時間でそこまで気がつくか」

「待ってください、あくまでも僕が妄想したことです。『Relic』の世界が本当に存在していたとかなんて有りえないでしょう」

「何を言ってんだよ。もう有りえているだろう? 外を見てみろ。俺たちの世界とルーシェンヴァルラの世界はすでに一体化してんだぜ? もっと柔らかく考えてみろ。お前の知っているアニメや漫画の知識をフルに使っていまの現実と照らし合わせな」

 そこまで言われなくとも、すでに僕の中で答えは出ていた。

「ルーシェンヴァルラは僕らの世界とは次元の違う並行世界だった」

 僕の回答にカズさんは組んでいた腕を解いて拍手を打った。

「白の創造主には創作物語みたいな神様じゃなかった。俺たちを自分のいる世界に召喚する手立てがなかったんだよ。しかし、自分のいる世界は黒の創造主によって黒く塗りつぶされようとしていた。そこで、白の創造主は自らの魂を分割して他の世界へと移動したのさ。自分が持っている技術を駆使して、その世界で活動できる肉体を手に入れて、な」

「ルーシェンヴァルラにあった遺伝子技術を利用して、僕らの世界に転生したということですか。いやでも、どうやって肉体を作ったんですか? いくらなんでも、外の世界からこちらの世界に干渉する手立てなんてなさそうなのに。それとも魂だから人間の体に入り込んだとでもいうんですか?」

「真悟。人は生きているうちは、一人二人って数えるよな」

 カズさんが唐突に別な話題に振ったので戸惑った。

「え? ええ、そうですけど」

「では、死体はどんなふうに数える?」

「それは一体、二体って……え?」

「死体は物だ。ただの物体になる。魂がない」

「白の創造主は、死んだ人の体に入りこんだんですか?」

「そうさ。そして過去の経歴がないエヴァン・スティングという人間が突如として現れる。数千年前に創りあげた遺伝子工学の情報と技術を用いて、第一線に立つことに成功し、本来、自分がいるべき世界にアクセスしたのさ。ゲームという手段を使い、救世主という名のプレイヤーを募った」

 結局ゲーム『Relic』では自分の世界を救うことが出来なかったどころか、敵である黒の創造主に僕らの世界に侵略を許してしまった。

「すべての元凶は、白の創造主ってことじゃないですか」

「突き詰めればそういうことだな。迷惑な話だぜ」

 行き場のない怒りが湧き上がる。だが、この矛先をぶつけたい張本人はすでに死んでしまっている。

「違う。彼は死んでない」

「なんだよ。脈略なくなにをいいだす」

 カズさんが驚くのも当然で、僕は思考していたことを口に出さなかったので、いきなりつぶやかれてもわかるわけがない。

「カズさんがエヴァン・ラスティングは死んだけど、魂は生きているという意味がわかったんです。肉体は死んでも白の創造主の魂はいまもどこかで彷徨っている。いや、もしかしたらもう新しい肉体を手に入れたとか?─────あっ」

 そこまで言って、僕はカズさんがどうしてこんなにもエヴァン・ラスティングについて詳しいのか察してしまった。

「いまはチェイスが『白の創造主』ですか?」

「ようやく辿り着いたか。本当はバラすつもりはなかったんだけどな」

 驚愕の事実という陳腐な文言は、いまここで使用されるのが適当だった。

「こんな突拍子もない告白を、カズさんは疑いもせずに信じたんですか」

「向こうは創造主だぜ? 適正者ひとりひとりのことなんてすべてお見通しだよ。やっぱ天才科学者なだけあるな。記憶力というかスペックが違いすぎる。『Relic』に登録していた数十万人の情報をすべて把握してんだ。なにもゲーム『Relic』だけの情報だけじゃない。俺の肉体的な問題や現実世界における立場まで把握済みよ。そんなこと言われたら信じるしか無いだろ」

 カズさんはすでに火の消えた煙草を吸おうとしたが、無駄に終わった。話すことに集中しすぎたせいで、煙草の火が消えたことに気が付かなかったようだ。

「どういうわけか、白の創造主は俺に興味を持ってくれてさ。だからいろいろと教えてもらったよ。適正者が何のために存在してるのか、ルーシェンヴァルラにおける白の創造主『本体』がどんな状態にあるのかもな」

「どうして、こんな重要な事を黙っていようとしたんですか。これはみんなにも話すべきですよ」

「話して、その後、どうするんだ? 『GM助けて! チートしてくる奴がいるんですよ!』って泣きついてアカBANしてもらうか? そりゃ、無理だ。白の創造主の力が発揮できたのは『Relic』だった頃だけだ」

 バカにされるような言い方をされて、腹が立った。

「じゃあ、白の創造主にはなにも頼るなとでも言うんですか? せめて、こんなことに巻き込んだことに責任をとって貰わないと」

「俺もそう思ったし、チェイス…白の創造主に言ったさ。……手遅れなんだ。黒の創造主がこちらの世界に侵攻をはじめた時点でなにもできなかったとさ。だからせめて、俺たちの世界で戦えるようにと、適正者にさせるためアプリ『R』で元プレイヤーに呼びかけた。ルーシェンヴァルラと繋がることができれば、妖精もレリック武器も使用可能に成るからな」

「白の創造主からすれば最善かもしれませんけど……」

 体中から闘気が溢れ出ようとしている。怒りに任せて力が暴走し始めようとしているのだ。僕は波紋を作った湖を鎮めるためゆっくりと目を閉じた。だんだん暴走しかける闘気を抑えるコツがつかめてきた。

 闘気が静まると前方から「すまん」とカズさんが謝罪した。

「謝る必要なんてありませんよ」

 闘気の抑えることに成功した僕は深呼吸をしながらかずさんと目を合わせた。

「ともかく、白の創造主が役立たずということはよくわかりました。それに、彼が動けたとしても、覚醒してしまった僕が戦わなければいけないんですよね」

「重ねて、悪いと思っているよ。本当に……」

 カズさんに謝られても、僕は何も言えなかった。

 責めることも出来ないし、嘆くのも何か違う気がした。

 僕に残された選択は戦うことだけだ。

 適応者、カーニヴァルと戦い。

 ガルズディアと融合した適応者『境界を越えた者』を殺し、そして、異世界化したこの世界を救って、僕は死ぬ。

 それでいいじゃないかと、言い聞かせた。

「真悟。白の創造主についてなんだが」

「誰にも言いませんよ。あれ、でもハンプティさんは知っているんじゃ?」

「ああ、アイツも知らないよ。知っているのは覚醒した適正者の最後だけだ。ハンプティに語学力がなくて助かった」

 カズさんは豪快に笑った。

 久々に、そんな風に笑うカズさんを見て、安心し、僕もつられて笑うことが出来た。

 どんな状況に置かれても、笑うという感情は大切だと、身にしみた。

 リリィが目を覚ますまでの数十分間は、白も黒も忘れて、この異世界化した世界のことすら忘れて、普通に会話を楽しんだ。

 僕とポニテさんのことから始まり、カズさんとノヴァさんは実際問題どういう関係なのか、ハンプティさんと虎猫さんがいい感じになりそうだとか、そんなゴシップを肴にして僕は緑茶を飲み、カズさんはコーラを飲み尽くす。

 再びコーラを注ぎにドリンクバーへと向かうカズさんをみて、不安になった。

 カズさんは言ったのだ。

 僕が死ぬとわかって戦うと決めた時に、カズさんはこういったのだ。

「俺も覚悟ができた」と。

 カズさんの覚悟がなんなのか、リリィが目を覚ましても僕は聞くことが出来なかった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


次回投稿は12/25です。

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