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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
28/143

024 『視点(ヴュウ)』

024です。


おかげさまで総合PV数は2000を越え、

ユニーク数も総合で600を越えました。

読者のみなさま、本当にありがとうございます。


※ 10/14 本文修正

 僕らは小学校へ来た時と同様に屋上を使って地上に設置されたトラップ型のレリックを避けながら東急百貨店まで移動した。この辺りは飲食店が多く昼間でも人通りが多い。交通量もそれなりに多かったみたいで、無人の車が玉突きや衝突事故を起こしている。

「何度見ても酷い有様だよな。昔の漫画に崩壊した世界を描いた作品があっただろ? 言わなくてもわかると思うから敢えて言わないが、ほら、トゲトゲの肩パットつけたりモヒカンにした奴が出てさ。なんで世界が崩壊したらモヒカンにすんだって思ったけれど、これ見たらはっちゃけたい気分もわかる気がする」

 エクスさんとハンプティさんは互いに納得し合い頷いていたけれど、若い僕らはいまいちピンとこなかった。それこそ中学高校の頃にネット上でネタとして認識はあるけれど、本編はほとんど知らなかった。両親が子供の頃に流行った漫画だったし、曖昧に頷くことしか出来なかった。

「あれ、知らない? てか、君ら幾つよ。見たところ学生っぽいけど?」

 時間がないはずなのだが、どうも断りづらく僕らは一人ひとり年齢を答えてしまった。一番若いのが二十歳の僕と虎猫さん、ひとつ上にポニテさんで、意外と年上だったのが二十七と答えたハンプティさんだった。実年齢よりもかなり若い。さすがにハンプティさんの年齢だとエクスさんがいう漫画作品は知っていたようだ。

「こんな感じの世界観を持った漫画だということは知っていますけど、内容はそんなにしらないので」

「おっかしいな。あれはネタとしても最高だけど、作品としてもかなり面白いんだぜ?」

 納得がいかないのはエクスさんも同じようで首を傾げている。

「ちなみにエクスさんはお幾つなんですか?」

「お幾つって丁寧な言葉づかいだな。若いのに偉いわ。うちの若い奴らにも爪垢を煎じて飲ませてやりたいよ」

 隠喩なのはわかるけれど、実際に爪垢を飲むところを想像したら気持ちが悪くなった。

「って、俺の年齢か。今年で四十二だ」

 僕らは絶句した。どうみても二十代後半にしか見えない。髪の毛も黒々として量もある。服装もアメリカンカジュアルで様になっている。

「おうおう、久々にみたぜ、その反応。よくエイジレスって言われるけど、二回りも年が離れた子らにされると新鮮だね」

「あたしのお父さんとほとんど年が一緒じゃん。え、まじで、こんなお父さん欲しい!」

 そういいながらはしゃぐ虎猫さんをエクスさんは目を見開いて驚いていた。

「ちなみにだけど、お父さんは幾つ?」

「今年で四十五のはずだよ」

 虎猫さんの回答がショックだったのか今度は顔を片手で覆い足元が揺らいだ。

「俺、こんな年の娘がいてもおかしくない年齢なのか……これは凹む。かなーり凹むわ。なぜ二十代の頃にもっと頑張らなかったんだろうか」

「てか、俺からするとそんな年になってもゲームってするのが意外だ。名前のセンスもよくからないし。あの名前って元ネタとかあるんすか?」

 ハンプティさんが精一杯に丁寧な言葉を使っているつもりで言った。そもそも質問するまでの言葉選びが悪すぎる。

 ハンプティさんの配慮に欠けた言葉さえも意に介さずエクスさんが答える。

「昔からゲーマーだったからな。社会人になってからでも普通に遊んでたぜ? それに『Relic』は自分の遺伝子情報でキャラメイキングされるゲームだぞ? しかも、その情報でゲーム内の優劣が決まるならなおさら遊んでみてーよ。ヴァーチャルリアリティのフルダイブゲームさえ実現しなかったしさ。遊んでみる価値あるだろ? あ、ちなみに名前の元ネタは某有名ロボットアニメで使われた台詞でさ、俺が……俺達がって続くだけど、くどいしわかりにくいから辞めたんだ」

 名前の元ネタのことを言われてもさっぱりだった。有名ロボットアニメと言われると一つしか思い付かないが、気を使って質問をしたら話が止まらなさそうなので尋ねるのは辞めた。その代わり、僕らでも話がわかる前半部分に食いつくことにした。

「それ、僕らもリンクした時に話しましたよ。昔のアニメやラノベで流行った設定ですからね。僕も中学生の頃はそういうハードが出るんだと思ってましたが、そう簡単に開発はされないみたいですね」

「流行ったなー。異世界ものや、転生もの。基本的に主人公は俺つえーだしハーレムばかりだったけど、あれはあれで面白かった。てか、あれが流行ったのが中学生の頃かよ。あー、ますます凹むわ」

 エクスさんはいろいろと打ちのめされたみたいで両肩を落としてしまった。

「まぁ、年齢の差はしかたないですから……」

 なぜ、二回りも年の離れた人を慰めなければいけないのだろう。

「さっきからちょいちょいそんな言葉を口にしているそのリンクって意味なんだ?」

「ああ、それは──」

 僕がリンクと名付けた経緯を話したらエクスさんはなるほどと頷いた。

「確かに、この状態はリンクしているな。しっかし、現実にこんなことが起こるなんて思いもしなかった。これ完全にデスゲームだよな。せめて復活制度くらいよこせよって思わないか? しかも元適正者は復活ありとか、普通チート性能つけるならこっちだろ?」

「文句を言っても始まりませんよ。仕掛けてきたのは向こうですし、僕らを有利にさせる訳ないじゃないですか。それに視点を変えたら向こうがラノベや漫画でいう主人公サイドになりますよ」

 白の創造主を裏切り、こちらの人間であることを捨てた適応者たちが主人公か。自分で言っておいてなんだけど、適応者たちを主人公という立場に置きたくなかった。だからといって僕が主人公になれるかと問われたら『否』と答える。このリンクした世界というだけでなく、実生活上において主人公の器であるのなら、僕の生き方はもっと楽だったはずだ。

「視点ねぇ……っと、いけね。ここで無駄話をしている場合じゃないな。ライブハウスまでもう少しだ。ほらほら、真悟くん、リーダーが先導しちゃってくれよ」

 無駄話の切欠を作り出したのはあなたですよと嫌味の一つを入れたいところだができなかった。自分勝手な人ではあるけれど、憎めないのは人柄のおかげだろう。この人の元で働いている人たちは楽しく働いていると想像できた。

日輪(ひのわ)が転送されたライブハウスはラブホ街を通り抜けた先にある」

「O―EAST? それともWEST?」

 ハンプティさんがエクスさんに訊ねた。ライブハウスに行った経験がほとんどないのでライブハウスの名前を言われても頭の中で場所が特定できなかった。

「たしかWESTのほうか。ハンプティくんはライブとか行くの?」

「WESTのステージならバンドを組んでいた時に数回だけ立ったよ。確認だけど二階席にレリック武器があるんだよな?」

 エクスさんは「ああ」と相槌を打った。

「それなら馬鹿正直に表から入らずに屋上から忍び込んだほうがいいかな。武器の確保をしつつ、一階にいるレリックモンスターや黒箱も壊すことができる。シンくん、この案でどうだい?」

「ハンプティにしてはいい考えじゃない。ありだと思う」

 虎猫さんが感心した。僕も同じ気持ちだった。

「ハンプティさんに道案内を兼ねて先頭を行ってもらいましょう。いいですか?」

「さっきの番人を倒した勢いをそのまま維持しておきたいからな……じゃあ、行きますか」

 ハンプティさんは百貨店を右手にして道なりに駆けて行く。さすがは俊敏性に特化した職業だけ合って初速が速かった。

 ハンプティさんに追いつくと、僕らはもう円山町に入っていた。ラブホテルが軒並み建っていたのが目立つけれど、普通の賃貸マンションや飲食店も多かった。不思議だったのはこの辺りにレリックモンスターの気配がなかったことだ。駅前や109の辺りでは下級レリックモンスターとよく遭遇していたけれど、黒箱すら一つも見当たらなかった。

 小学校を目指していた時のように、背の低い建物の屋上へと飛び移っていく。何事もないまま僕らはラブホテルの屋上から目的地のライブハウスを見つめた。

 一階はコンビニエンスストアでチケット売り場のエントラス。ちょうど僕らの真下に見える階段を上がれば会場へと繋がっているのだろう。

 いざ、飛ぼうとした時だ。スマートフォンのコール音が鳴った。スマートフォンからリリィが飛び出してくる。

「ノヴァさまからのコンタクトです。如何なさいますか?」

 棺へ到着した連絡か、それとも棺の破壊が成功した連絡かもしれない。いまコンタクトで話す時間が惜しい。

「ノヴァさんには悪いけれど、今は拒否で頼む。いや、待てよ」

 リリィが姿を表している僕のスマートフォンに目が止まった。

「リリィ。僕のスマートフォンに連絡登録している立花一英からメールアドレスを選んでメールメッセージフォームを開いてくれ」

「かしこまりました」

 リリィは言われたとおりにメッセージフォームを空中に展開させた。

「そっか、こっちの機械が使えるのならメールだってできるんだ」

 ポニテさんがパンと音を立てて両手を合わせる。

 僕はその通りと言わんばかりに頷いて、リリィにメッセージの入力をお願いした。文面は『現在、取り込み中。事が終わり次第、ノヴァさんにコンタクトします』と。

「ねぇ、なんでカズっちにメールするの? ノヴァちゃんに送ればいいじゃない」

「僕、ノヴァさんの連絡先知らないんですよ」

「そうなの? あれ、そういえば私も真悟くんの連絡先知らなかった。どうして教えてくれなかったの?」

 それは、出会い厨と思われたくなくて聞けませんでしたと正直に話すのが躊躇われた。

「まぁ、いいじゃないですか。リリィ、その文面を送信してくれ」

 リリィがメールを送信し終えて、僕は改めて頭を下げた。

「お待たせしました。行きましょう」

「ねぇ、ちょっと、私の質問に答えてくれてないんだけど!」

「それは後で。さぁ、行きましょう」

 僕はポニテさんと顔を合わせずに屋上へと跳んだが、真下からはポニテさんの声が届いているが、振り向かないようにした。

 屋上へと着地すると、ここも空気清浄機のファンと思われる大きな機械が並んでいた。

 背後からは次々と着地すると音が聞こえた。振り返るとポニテさん以外、みんなニヤついた顔をしている。肝心のポニテさんはと言うと、ムスッとしていてせっかく可愛い顔が台無しになっていた。

「ポニテさん、いまはここにいる人たちを再優先にしましょう、その後なら、いくらでも聞きますから」

「わかった」

 そう言い終わると、ポニテさんは屋上から下へと繋がる扉を開こうとドアノブに手を駆けたが鍵が掛かっていて開かなかった。

 あまり派手なことはしたくないけど、ドアを壊して……

「もう! 鬱陶しい!」

 ポニテさんは無駄に火力の高いスキルを使ってドアをぶち壊した。

「ほら、急ぐんでしょ。ほれ、ハンプティ、あんたが先に行くの」

「は、はい!」

 ポニテさんに施されるがまま、屋上の踊り場から階段を下ってライブ会場の二階席に当たる六階まで降りて、フロアの中に入った。

 両開きの思い扉を開くとまずコインロッカーが見えて、バーカウンターに椅子とテーブルが八脚ほど用意されていた。酒を飲みながライブを見るなんてと思ったが、ハンプティさん曰く、こういったインディーズバンドが出演するライブ会場の主な収入源はチケット代金もだが客からのドリンク代だと教えてくれた。また、ステージホールの二階席へとつながるここは関係者のみが入れる場所らしく、一般の客は入れないらしい。

 バーカウンターの奥にはいよいよ問題の二階席へと繋がる両開きの扉があった。

「リリィ、扉の向こう側の状況を分かる範囲で教えてくれ」

「……囚われている適正者さまは三名です。黒箱は全部で八箱です。それと、俺がエクスカリバーさまが仰っていた通り、レリック武器の反応も扉の向こうにあります」

「おい、あんたの所も俺をそう呼ぶの?」

「たぶん、デフォルトプレイヤーネームだから言ってしまうと」

「今日ほど、名前を変えたいと思ったことはないぜ……この際、名前よりも日輪だ。四人全員で突っ込もうぜ」

「待って。それじゃただの猪でしょ? こういう時はパーティーリーダーに聞くのが定石でしょ?」

 ポニテさんと目が合う。機嫌はまだ悪そうだが、だいぶ落ち着いた様子だ。

「一応、作戦というか対策は考えておきました」

僕はなるべくリスクが少なく、勝算ある戦い方を伝えることにした。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


次回投稿は10/14になります。

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