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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
27/143

023 『頼み(リクエスト)』

023です。


※10/11 サブタイトル変更

※10/14 誤字修正

 人の名前で笑ってしまうのは失礼この上ないことだけれど、さすがに笑わずにはいられなかった。だって、名前はエクスカリバーなのに持っているのは弓なのだから、余計に面白く感じてしまった。

「笑い過ぎだっての」

 エクスさんは少し不貞腐れたように言った。

「とりあえず、これで二つ目の棺が壊されたのはでかいな」

「二つ目って、渋谷警察署の近くにあった棺を壊したんですか?」

 代々木公園で棺の数は五つあると確認した。代々木公園からみて北と西をノヴァさんのパーティー、東と南にある二つを僕らが破壊することになった。そして、僕らは小学校のここと、渋谷警察署近辺にあるとされた棺へと向かう予定だった。

 しかも僕らと違って一人で棺を破壊したとなれば、適応者とも対等に渡り合えるということだ。

「すごいですね。一人でやってのけるなんて」

 感心して僕がいうと「いやいや」と小さく手を振りながらエクスさんは否定した。

「俺達は五人で棺破壊に向かったよ」

「え?」

「あんたたちも棺破壊をする前に遭遇しちまったんだろ?」

 答えは一つ、適応者のことだ。

 エクスさんは俯いて話しだした。

「ほとんど殺されたよ。ギルドメンバーだった奴ら。棺を破壊して終わってみれば俺ともう一人生き残った。あいつは心が折れて動けなくなった……だから、今は俺一人ってわけさ」

 オンラインゲームでは定番となったプレイヤー同士が集うグループのギルド。ソロプレイヤーだった僕には縁のない集いではあった。でも、ゲームを楽しむ上で気の合う仲間と同じグループに所属するのも楽しみ方の一つなので否定はしない。

 エクスさんたちも僕らと同じように今日のイベントに合わせてオフ会で集まっていたのだろう。しかし、十三時にあの咆哮が聞こえ現実世界は『Relic』の世界とリンクしてしまった。

 中の良かった人たちがいなくなり、そして一人残されてもなおエクスさんは諦めずに戦い続けている。

「そのギルメンだった人はいまも一人で?」

「たぶんな。一応、棺を破壊する前に青学の近くで上級モンスターを倒したから、安全区域にいるかもしれない。さすがに生きることまで諦めたりはしないと、俺は信じてるよ。つか、こんな辛気臭い話は辞めだ。なんにしても五つある内の二つは破壊できたんだ。残り三つを壊せばひとまずここは元の世界に戻る」

「もしかしたら、残り二つになるかもしれませんよ?」

「どういうことだ? と、その前に、俺の名前を知ったんだから、あんたたちの名前も教えてくれよ」

 僕らは一人ひとり名乗ってからエクスさんにこれまでの経緯をざっくりと話した。

「二つのパーティーに分けたのはいいな。しかし、棺以外の場所でも適応者が出るっていうのは知らなかったな。しかも二人かよ……俺、遭遇しなくてよかった」

「運がいいのか、それとも適応者の人数が少ないのかわかりませんけど……よければですけど、僕らのパーティーに入りませんか? 僕らも人が増えることに越したことはありません」

 同じ適正者だし、目的も同じだ。適応者との戦闘もかなり負担が減る。

「願ってもない申し出なんだけど、その前に俺の話も聞いてくれないか」

 エクスさんは神妙な顔つきになった。

「俺は連絡が取れなくなった元プレイヤーだった友人を助けに行きたいんだ。パーティーに参加する代わりに、一緒にそいつを助けに行ってくれないか?」

 エクスさんの必死さが伝わる分、もっと詳しい話を聞かせて欲しいとお願いした。

「まず元プレイヤーでゲーム内のフレだったあいつの名前は、日輪(ひのわ)という。日輪からコンタクトが入ったのは生き残ったギルメンと別れた直後だった。日輪は『Relic』のサービスが終了する三ヶ月前、19年の年末に引退したんだ。ギルドも抜けて完全引退だ。あいつも『R』のアプリを入れていたから今日がイベント日なのも知っていた。ただ、今日、渋谷に居たのは本当に偶然だったらしい。だから代々木公園にいこうなんて考えもしてなかった。だが、あの咆哮により世界は一変し、レリックモンスターと戦うため適正者になった」

 適正者になった流れはみんな同じらしい。僕らはエクスさんの話に相槌を打ちながら、エクスさんの話を聞き入った。

「俺が棺やら適応者やらと戦っている間に、日輪は偶然居合わせた適正者数名と情報を共有しつつ、上級モンスターを探したんだ。とにかく安全区域を作ろうとした。これだけなら助けを求めるようなことにはならなかった。あいつもレリック練度はカンストしていたし、ランクの高い上級レリックモンスターと遭遇でもしないかぎりはな」

「適応者と遭遇したんですか?」

「ところが違うんだ。いや、あいつはまだ適応者の存在を知らないかもしれない」

 いまいち話が見えてこないので、どう反応していいのか困惑した。エクスさんもこちらの表情を読み取ったようで申し訳無さそうにした。

「悪い、俺って話を纏めるのとか不得意だから上手く伝わらないよな。ちょっといろいろと端折るけど、日輪は空間転移系のトラップレリックに引っかかったんだ。そして気が付くと日輪たちは円山町にあるライブハウスのステージにいて、観客席側には稼働中の中級型黒箱が用意されていたことだった」

「待って。それなら普通に黒箱を壊して外にでるだけでいいんじゃないの?」

 虎猫さんの疑問にエクスさんは頭を掻きながら答えた。

「手元にレリック武器があればの話だけどな。飛ばされた時、レリック武器は手元になくてライブハウスの二階席に包帯というか布切れで封印されていた。そして、ある一人が武器を取りにステージがから降りた瞬間、中級の鬼人種が製造されてしまい、即座に殺されたらしい。他にも妖精を使って武器を取りに行かせようとしてもダメだった。黒箱新たに動いて妖精を近寄らせないらしい」

「それなら、もう日輪って人は……」

「問題はそこ。どういうわけかレリックモンスターはステージ上には上がってこないんだ。そのおかげで日輪たちはまだ命を繋いでいる状態だ。でもよ、適応者の存在といい。あいつらは何でもありだ。もしかしたら時間が立てばステージにまで上がってくるかもしれない」

「なんつー、えげつないトラップだよ」

 ハンプティさんの言うとおりだ。武器も使えないステージから降りれば武器のない状態で中級レリックモンスターに襲われる。時間をかけて人の心を折れるように仕組まれた気がする。

「肝心の場所ですが、特定はできているんですか?」

「ああ、円山町にあるライブハウスだ。場所はすぐに特定できたんだが、複数体いる鬼人種を相手取るには生身で不可能だ。俺もすぐに駆けつけたかったけれど、武器が封印される可能性だってある。万が一、そうなったら助けられるものも助けられなくなる」

「確かに一人で特攻するには無茶ですね。日輪さんから連絡が入ってどれくらいの時間が経ちました?」

「一時間近くは経過しているはず。日輪には時間は掛かるとは伝えているけれど、待つ時間も限度があると思う。救助のコンタクトもその一時間前が最後なんだ。俺に気を使っているのか、それとも助けを諦めてコンタクトをしてこないのかもしれないがな」

「最悪の場合もあるかもな」

 ハンプティさんが無神経な一言をつぶやいたが、隣にいた虎猫さんに脇腹を杖で付かれて悶絶した。

「ハンプティの意見は最も出し一番可能性が高い結末だ。そうだな、これは俺の自己満足に近いよ。でも、日輪を助けることができるのならと思って適応者に勝つことができるくらいの実力を持った適正者を探していたんだ……そして、俺が望んでいた適正者と出会えた。頼む。パーティーにも入るし、それなりの仕事はする。お願いだ、日輪を助けるためにも俺とパーティーを組んでくれないか?」

断る理由も見つからなかった。ガルズディア復活までの時間猶予はかなりある。

「わかりました」

「本当か? 本当に日輪を助けてくれるのか」

「ただし、僕の指示には従ってもらいます。いいですね?」

「俺からお願いをしているんだ。日輪が助かるならどんな指示だろと忠実に守ってやる……日輪はゲームを引退していたし、この状況も面白く無い、最悪な日だと嘆いているはずだ。でも、想いや言葉とは裏腹にあいつは生きようとしている。助ける理由ならこれで十分だと思わないか?」

「十分です。エクスさんをパーティーに参加させてもいいですよね?」

 パーティー参加は形としても聞かないといけない。みんな、言葉を発せず、ただ小さく頷いた姿をエクスさんに見せた。これ以上、話すこともないだろう。今はいち早く移動をして日輪さんを助けなければいけない。

 新たな人を迎え入れ、僕らは日輪さんと、他の適正者が幽閉されているライブハウスへと急いだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


この回に関しては、修正を加える予定です。


次回投稿は10/12となります。


よろしくお願いします。

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