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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
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25/143

021 『変化(チェンジ)』

021です。


 番人を三人で戦うと聞いた時、彼らはまた僕一人に責任を負わせたのだと思っている。だから、今回ばかりは自分たちだけで戦おうと決めたのだ。僕が「そんなことは気にしていない」と言ったとしても、彼らは受け入れてくれないだろう。

「真悟さま。棺への破壊が始まるようです」

 物思いにふけっていた僕にリリィが三人の戦いを教えてくれた。

 始めに棺へ攻撃を与えたのはポニテさんだった。巨贄となった人々が収容されている透明のオベリクスは強固で壊れにくかった。それでもポニテさんの斬撃は止まらない。食事による闘気上昇のバフ効果があるとはいえ、スキルを使い続ければ闘気は枯渇する。

 闘気の限界を見込んで、次はハンプティさんにスイッチ。同じように闘気が枯渇しはじめたら次は虎猫さんに……というローテンションで随時攻撃の手を休めなかった。

 奮闘すること三分弱。「ピシ!」いう音を立ててオベリクスの表面に大きなヒビが入る。三人が一斉に攻撃を与える。

 みな、必死の形相をしながら声を上げて過剰攻撃を与える。ポニテさんは大振りの一撃を、ハンプティさんは腕振りが見えないほどの連撃を、虎猫さんは巨大な岩を魔法で呼び起こした。それらすべての攻撃が実り、球体は散り散りに飛散した。贄となった人々の液体のようなものは、オベリクスの形に型取られた状態のまま僕らを見下ろしている。贄となった人々の液体は、どれも色鮮やかで輝いている。これは様々な命が集合した結晶だ。

「ツインテ。この人達を安全区域に転送してあげて」

 ポニテさんに仕えている小さな妖精が敬礼みたいな仕草をしながらスマートフォンから飛び出てきた。

「任せて、ポニちゃん!」

 ポニテさんに命令されたツインテはキーアイテムを表示させて、贄となった渋谷の人たちを収容する『約束された安眠』を具現化させた。棺よりも高さはないけれど、同じ質量を入るほどの幅はあった。

「閉じ込められた人々よ。あなたたちを深い眠りから、安らかになれる場所へと移します」

 ツインテが口上を述べると、オベリクスの形だった贄たちは球体の中へと吸い込まれていく。

 棺に居座っていた贄が半分以上になった時、それは起きた。

 砕け散った棺の底、つまりは人と同じ高さはある台座の部分が両開きの扉のように開いた。台座の中から出てきたのはボロボロになった布を頭から足先まで覆い隠している。かろうじて顔のあたりは口を開いていたが、見えたのは暗闇。

「ツインテ、番人は私たちにまかせて、贄になった人をちゃんとその中に入れてあげて」

「うん、ポニちゃんも気をつけて!」

「誰に言ってんのよ」

 ポニテさんは大剣を番人に向けた。

「私の大切な棺と、餌を奪ったのはお前たちか?」

 番人の声はくぐもっていて聞き取りにくかった。

「白の使いとなった人間どもよ。私の大切な物を壊し、奪ったことを後悔させてやる」

 番人は予め決められた台詞を口にする。作り物ような言い回しが、ゲームの名残だと思わせてくれる。

 布切れに体が隠れているけれど、番人は二本の足で歩行している。番人の姿形、完全なる言語を発するところからしてあれは黒箱以外で生まれた人型エネミー。レリックモンスターから外れた存在。

「リリィ、あれはホムンクルスでいいのか?」

黒の創造主自ら創りあげたホムンクルスだ。ただ、こういった布切れを着ているホムンクルスはゲームのころにはいなかった。

「はい。いまだ製造方法がわからないとされた人型生体兵器。理に背いた人造人間です。ただ、正式の名前や弱点などは倒さないかぎりわかりかねます」

「ランクは?」

「あのホムンクルスのランクは9です」

 ランクが9ともなるとほぼレリック練度がカンストしてなければ厳しい相手だ。

「ハンプティさんにはかなりきつい相手だ」

「はい。ポニテさまと虎猫さまは、ある程度の攻撃は耐えられるかと思います。ただ、ハンプティさまのレリック練度では触れられただけで即座にレリック武器は破壊されてしまいます。予想ですが、これまでに戦ったホムンクルスと同様の攻撃を主体とするのであれば、エレメント攻撃をしかけるかと」

「たぶん、それは大丈夫だと思う」

 僕は虎猫さんの動きを見た。彼女はホムンクルスに攻撃を与えず、後方に回ってポニテさんとハンプティさんに魔法を送っていた。あれは、魔法耐性のあるバフだろう。

 ハンプティさんのレリック練度は32だったはず。バフ効果しだいだけれど、一撃くらいはホムンクルスのエレメント攻撃に耐えられるはずだ。

 ポニテさんが大剣を振り回す。彼女の剣の扱いを見ていると、大剣は発泡スチロールでできているかと思えるくらい重さを感じさせない。

 ホムンクルスの正面を相手にしているのがポニテさんなら、背後はハンプティさんだ。身軽で手数のある暗殺術士は虚を付く攻撃が多い。それに、僕の言ったことを守ってヒットアンドアウェイをきちんとこなしている。

「轟け」

 躍動の台詞を番人が言い放つと、紫色の閃光がポニテさんに落下した。

「ポニテさん!」

「これくらい平気平気」

 ポニテさんの見た目は変わらないけれど、ランク9が放つエレメント攻撃だ。感電の心配はなくとも衝撃だけは肉体に受ける。

 ハンプティさんは目の前に落ちた落雷に怯んでいたが、すぐに気を持ち直してポニテさんのフォローに回った。

 きっと大丈夫だと思いつつ、不安の種は胸の奥にあった。なにか、腑に落ちないのだ。番人の脅威となる攻撃は雷のエレメント攻撃くらいで、あとの通常攻撃はあまりにも単調で読みやすい。ターゲットがポニテさんに向かっていればハンプティさんが狙われることはない。

 順調すぎるのが引っかかる。番人は自らすすんでポニテさんたちの攻撃を貰うようにも見える。それに、番人の動きは出てきた時よりも早く鋭く動いているように見えるのは何故だ。

 よく見れば番人の手脚が見え隠れしている。ポニテさんとハンプティさんの攻撃が当たるごとに、番人が纏っている布が短くなっているんだ。

 ようやく、番人の狙いがわかった。

「ポニテさん!」

「わかってる。こいつ、体力ゲージが減るごとに状態変化をしている」

 体力ゲージが削れるごとに状態変化を起こすボスはRPGで定番の設定だ。体力ゲージが残り僅かになれば布切れが消えて、ステータスを上昇させた番人になる。

「リリィ、いま番人の体力ゲージはどれくらいだ?」

「ようやく半分まで削ったようです。番人が纏っている布が完全に消えるのは、体力が更に半分となった時でしょう」

 四分の一になってからが本番といったところか。リリィの声は戦っている向こうにも聞こえていただろうし、それにハンプティさんのラビットもずっと戦闘に参加しているので、ポニテさんも番人の最終形態までもう少しだと気付いているはずだ。

 番人は本当に最終形態になることだけが狙いでダメージを受け続けているのだろうか。他になにか理由があるとすれば、なんだ?

 僕は視野を広くして今の状況を整理する、離れて彼らの戦いを見ることで気づくことがあるかもしれない。

 前衛の近接職業の二人。少し離れてバフを与え続ける魔導術士。自分の体力を削り、最終形態を目論む番人。最終形態になることで、ホムンクルスが手に入れるのは今以上の力を手に入れること。

 本当にそれだけなのかと自問自答する。番人が目指しているのは力なのか? それ以外の何かがあるとしたら?

 崩壊した棺には液体となった贄がほとんどなくなりかけている。壊れた棺。白の創造主が創った『約束された安眠』。そして、番人の不可解な動き。

「わかった……番人の本当の狙いが」

 万が一、僕の予想が外れてもいい。ただ、最悪をここで起こすわけにもいかない。このまま僕がまた戦闘に参加してしまうと、彼らは余計に引け目を感じてしまうはずだ。

 ポニテさんが大剣を構えた。なにかの大技を繰り出すつもりだ。

「スキルを打つな! その攻撃はまだ早い」

 僕の叫び声に、ポニテさんが反応して、大剣の攻撃を無理やり引き止めた。

「なんで!」

「ツインテが棺から贄を安眠に移すまで番人の攻撃は控えてください」

 番人の狙いは、贄の移送を続けている安眠のほうなのだ。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


そしてご報告です。

すでにあらすじ、活動報告にも記しましたが、

本日より投稿を隔日とします。

毎日投稿したかったのですが難しくなりました。

すみません。

次回投稿は15/10/8(木)となります。

投稿時間は変わらず19時から20時頃を予定しています。


よろしくお願いします。

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