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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
18/143

014 『順序(オーダー)』

014です。


すみません、寝坊して20時すぎての投稿になりました。

 こちらの世界に生きている人々を収容する黒の創造主が新たに創りだした〈遺物(レリック)〉、『昏睡の棺』の役割はボス級レリックモンスターのガルズディアを復活させるものだと、ノヴァさんの妖精であるスイセンは話してくれた。

「代々木公園でスイセンが話していた事以外にも、役割があったということですか」

『ええ。私も失念していたことだったのだけれどね。単純に五つある棺を全て壊してしまえばそれでいいのだと思い込んでいたのが間違いだった』

「壊せばガルズディアの復活は阻止できるし、それでリンクされた状態が解除されるのでは?」

『基本はそう。ただ万が一、五つ全てを壊すことが出来なかった場合のことを私は気にかけていなかった』

 スイセンが話してくれた内容は五つの棺を壊すこと、そして棺から出てくる番人を討伐することだ。この言い回しだと棺が一つでも残っていればガルズディアは復活してしまうということだ。

『真悟さん。五つ全てを十二時間以内に破壊できると言い切れる?』

「それは……」

『私はね。ラズリラブルの花を見て、これは一筋縄では行かないと、単純に終わらせてくれるような安易なクエストではないと予想した。その予想は私たちではなく真悟くんたちの方へと降りかかった』

 黒の創造主へと寝返った適応者たち。トラップ型のレリック。新種の生体レリック。これが黒の創造主が用意した仕掛けの全部なのか、それとも一部なのか。

『レリックモンスターだけなら、なにも問題なくゲーム時代に手に入れた高い練度のレリック武器とスキルで攻略できたと、私は安易に考えていたわ』

 白の創造主による恩恵がなくても、レリック武器さえあればきっと大丈夫だろうと考えていたのは僕も同じだ。

『リンクしたこの一帯に、適正者以外いない。ガルズディアの復活はこうしている間にも刻一刻と近づいている。新たな敵、新種のレリック、もしかしたらこれ以上の仕掛けが用意されているかもしれない。たった十二時間で攻略は可能だと真悟さんは言い切れるかしら?』

「僕はきっと、いや、なんとかして……」

『そのなんとかしてなんて希望を持ったらダメ。常に最悪を想定しなければ、最悪を迎えた時に動けなくなる。理想は全ての棺を壊すこと。でも出来なかったら、ガルズディアが復活するだけ……この考えも甘い。甘すぎた。考えが足りなかった。さらなる最悪を考えておくべきだった』

 ノヴァさんは遠回しに、焦らしながら、そして徹底的に精神的な追い込みをしてきた。いい加減、答えを言って欲しい。

「棺が複数残ったまま、ガルズディアが復活したらどうなるんですか」

『棺一つにつき二倍の強さがレリックモンスターに付加される。五つ残れば乗算して十倍の強さをもったガルズディアが復活する』

「そんな無茶苦茶なボスが居てたまりますか」

『絶望的よね』

「こんなこと正直に話せと言うんですか」

 僕はパーティーの全員を見た。ようやくまとまって来たというのに、こんな追い込みってあるのか。

『何も告げずに五つの棺を全て破壊すれば何もいうことはないわ』

 黒の創造主が放った全ての仕掛けを攻略する。

 思考が一瞬にして停止した。目の前が真っ暗になるような錯覚に襲われる。両足に地面がないような浮遊感。大量の氷を浴びせられたような悪寒。

 呆然とする中、遠いところから声が聞こえてくる。

 とても透き通っていて、雑音に邪魔されず真っ直ぐな声。

『真悟さん!』

「は、はい!」

 浮遊していた感覚が一気に重力ある地面に戻った。

『ショックなのはわかるわ。私もその事実を知った時、身動きが取れなかった。カズヒデもね。スグルさんは、表情一つ変えず受け入れたようだけれど』

「鈍いのかすごいのか、それともどこか壊れているのか」

『言い過ぎと注意したいけれど、私もそう感じたわ』

 ノヴァさんがクスリと笑ったのが聞こえた。今後、起きるかもしれない絶望的な未来を前にしてノヴァさんはどうしてこうも平然としているのだろう。大人の余裕なのか、それともここを解放すること自体諦めたのか。

 いいや、この人は簡単に諦めるような人じゃない。攻略不可能と言われたレイドクエストをいくつも超えてきた人だ。

 これまでの会話を振り返り、光明を見出した。

「ノヴァさん、僕を試しましたね?」

『さぁ、なんのことかしら』

 白々しく、芝居かかった感じでノヴァさんが答える。

「人が悪いです。今回だけは、本当に笑えない。いつもの冗談なら苦笑いで済ますけど、悪質な悪戯だけはダメです」

『そんなつもりはなかったのに。ちょっとした茶目っ気を出したつもりなの』

 これを茶目っ気で済ますのならとんでもない天然サディストだ。だが、この自白ともいえる言葉を持って確信を持った。

「解決方法があるからこそ、こんな茶番をしたんですか」

『怒らせてしまったかしら。でも、どこで気がついた? 私、下手を打ったなんて思えないのだけれど』

「話す順序とその内容を間違えなければ上手く騙し通せたはずですよ」

 整理しながら話し続けた。

「はじめに料理レシピの話をするのではなく、まずはこの棺の話をしておくべきでした」

『続けて』

「十倍の強さを持ったガルズディアは、はっきり言って僕らで倒すことは無理です。例え、カンストしたレリック武器持ちが十四人いたとしても倒せない」

『その通り』

「それなのに、コンタクトを始めた時にノヴァさんは僕の話を淡々と聴いて、あのどうしようもない冗談を言うほどの余裕があった。極めつけは料理の話をして、話す場を儲けろと言ったことです。確かに、こんな重要な話をするのであればコミュニケーションを取る場は必要不可欠。でも、ノヴァさんはこう言ったんですよ。『適応者との戦いに有効になる』と」

「あら、ちゃんと聞いていたのね」

「注意された直後ですから。この時に言うべきことは僕から聞いて初めて知った適応者のことではなく、既に脅威である棺とガルズディアだったんです。それなのに、ノヴァさんの中で一番の脅威は適応者だった。つまり……」

 続く言葉はノヴァさんが引き継いだ。

『つまり、棺もガルズディアも脅威ではなくなったから……残念。あっさりと見破られてしまったわ。柄にもなく悪いことをするものじゃないわ』

「正直、頭に来ていますよ。人を脅かすにも限度があります」

『たまにはこういうドッキリみたいなことをしてもいいかなと思っただけよ。でも、やり過ぎたわ。反省します』

 ノヴァさんにしては珍しくしょんぼりとした声だった。言い足りないこともあるけれど、仕返しはこれでいいだろう。話はまだ終わっていない。

「それで、十二時間以内に棺を破壊する算段を教えてくれますか」

『十二時間以内に間に合わなくてもいいの』

「大丈夫なんですか? 五つまるごと残っていたら十倍のガルズディアと戦うんですよ」

『倒す相手はガルズディアじゃなくて番人の方が先よ』

「ガルズディアが復活した後に番人を倒してもリンクは解除されませんよ? そういう話だったはずです。もちろん、復活する前に番人を倒せればいいんですけど」

『もっと頭を柔らかくして。それは時間内に間に合いかつ棺を破壊していたらの話よ。時間内に破壊しきれず棺が残っていたらガルズディアを強化させる。ガルズディアを強化させているのは棺ではなくて、棺を守っている番人が意図的に起こしているのよ』

「ガルズディアが復活しても番人を倒せば弱体化は可能ということですね」

『例え五つ残っていようと、番人さえ倒せばガルズディアのステ値に変動は起こらない。もし、そこまでやってもダメなら。その時はその時』

「番人のランクにもよりますが、そこは意地でも倒さないと」

『その通り。あとはこれ以上の最悪が起こらないよう祈るだけね』

「復活したとしても、僕ら七人で倒せるか、考えものですよ」

『なにを言っているの? 倒す解消は真悟さんが教えてくれたでしょう』

「僕が?」

『真悟さんは新たな戦い方を示してくれたわ。ここはゲームではなくて現実だと。適応者とラクラの即死攻撃は、ガルズディアにも有効だと言えるわ』

「それって希望的観測ですよね?」

『いいえ、これは確信よ。言ったでしょう? 意志を貫くことも大切だって』

「なんだかいいように言い負かされている気もしますが」

『そう思うなら、もっと弁が立つように努力することね』

 負かされたと思わされた時点で、軍配はノヴァさんに上がっていたようだ。

『こうして偉そうに言っているけれど、ほとんどスイセンたち妖精から聞いただけなんだけどね』

「どうしてスイセンは細部まで教えてくれなかったんですか?」

『私の質問が悪かったみたい。代々木公園でスイセンに聞いた質問はリンクの解除方法のことだけ。ガルズディアが復活した後の話まで私は聞こうとしなかった。スイセンもそれでいいと判断したのね』

「融通が効かないというか、気配りが足りないですね」

『これはね、妖精とのコミュニケーション不足だから起こったことじゃないかって考えているの。真悟さんとリリィのやり取りをみたら余計にね。ゲームで遊んでいた頃の話だけれど、私は妖精よりも周りにいるプレイヤーから攻略情報を得ていたの。でも、真悟さんはソロでいつも妖精からサポートをしてもらっていたでしょう?』

「それってゲームの頃に妖精を頼っていたのが、積み重なり結果的にコミュニケーションが取れているということですか」

『断言はできないけど、私はそう考えている』

 だとすれば、これまでソロプレイを続けてきて良かったと言える。いや、そもそも『Relic』はソロで遊べるようにしていたのは、これを見据えての事だったのかもしれない。

 さすがにこれは考え過ぎか。

『長話になってしまったわね。私が変な悪戯心を抱かなければもっと早く終わっていたのに』

「いまさらヘコまないでくださいよ。念だけは推しますけど、次やったら本気で怒りますからね」

『気をつけるわ』

「棺の破壊は出来る限りやってみましょう。時間内に間に合わなければ、その時はガルズディア復活後に番人を叩くということで」

『ええ。お互い尽力をつくしましょう……なにカズヒデ? もう通話は終わるから待って……そう、わかった。伝えるわ。真悟さん、カズヒデからの伝言よ。空いた時間にどこでもいいから動画サイトで〈Relic〉を検索しろですって』

「英語でRelicですか?」

『そうみたい。なんだかカズヒデが煩いわ。ごめんなさい、今度は棺に到着したら連絡し合いましょう』

「はい。どうか気をつけて」

『真悟さんも……じゃあ』

 コンタクトが終わると同時に、待たされていたポニテさんたちが駆け寄ってきた。

 いろいろと質問攻めにされたけれど、ひとまずは棺と番人、ガルズディアのことを軽く説明した。

 悪戯に怯えさすような言い回しをせずに伝えたのは言うまでもない。

 もっと詳しい話をするため、ノヴァさんの言われた通り食事のできる場所を目指した。牛丼屋にラーメン、立ち食い寿司などの看板が飛び込んできたが、できれは腰を据えてゆっくりできる場所がいい。そして選んだのは道玄坂にあるファミリーレストランだった。

最後まで読んでいただきありがとうございます。


ファンタジー要素がほとんどない会話劇でした。

こういうのも今後あるかと思います。


明日も投稿します。


よろしくお願いいたします。

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