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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
16/143

012 『誤解(ミスアンダースタンディング)』

012となります。

 頭の中はクエッションマークで一杯になった。

 それは他の三人も一緒だった。狐に化かされたという言葉を見事に体現している。

 ようやく何が起きたのかを考えるようになったのは、ここに飛ばされてから数分後の事だった。

「二重トラップ」

 ふとでた呟きに、それはおかしいよと反論したのはポニテさんだった。

「私たちをここまで飛ばすようなトラップがあったとしたら、妖精たちが何かしらの反応を示してくれるんじゃないのかな?」

 ポニテさんはツインテを眺め見たが、彼女に仕えている妖精は首を横に降るだけだった。

「あのね、ポニちゃん。私たちサポートはできるけれど、それは完璧じゃないし絶対じゃないの」

 ツインテは申し訳なそうに口を開く。

「トラップ型なんて初めてのタイプだし識別するのも難しいの」

「感知できないトラップなんて卑怯じゃん。トラップがどこにあるのか、地道に調べながら攻略しろってことなの?」

 ポニテさんが憤るのもわかる。ただ、向こうだって無策でリンクした地域を展開しているはずがないんだ。どんな手を使ってでも黒の創造主は僕らの世界を、この星を手に入れたいと躍起になっている。

「あたし、攻略組なんかに入ったことは滅多にないけれど、こういうレイド系のクエストってさ、何度も挑戦しまくって攻略の糸口を見つけるんじゃないのかな」

 考えることが苦手だと言っていた虎猫さんだが的を射ている。

「糸口といわれても。気がついたらここにいたんじゃ確かめようがないじゃん。私らを移動てか転送かわかんないけど、トラップの発動条件だってわからないままじゃん」

「それなんですけど」

 僕は遠慮気味に二人の会話に割り込んだ。

「さっすが真悟くん。もう見当はついているんだね!」

 ポニテさんが目を輝かせながら僕を見つめる。はつらつとした顔が眩しすぎる。

「見当というか。僕の考えを話す前に、三人に確かめたいことがあるんです」

「おう。なんでも聞いてくれよ!」

 会話の中に入ってこなかったハンプティさんがようやく発言をした。

「僕が六つ目の黒箱を壊す直前ですが、ラクラを倒しましたか?」

「んー。真悟くんが黒箱を壊す前っていわれてもなぁ。真悟くんが黒箱を壊す瞬間をみていたわけじゃないからな」

「ここへ飛ぶ直前だったら?」

 ポニテさんは眉間に皺を寄せつつ首を傾げた。

「飛ばされる直前……んー、倒してないかも」

「こっちへ飛ばされる直前かー。あん時はラクラの攻撃を避けるのに必死だったし。それに虎猫を守りながらだったからさ。いや、ちゃんと数体は倒したぜ? 数体は!」

「ハンプティさん。倒した事自体は疑っていませんから」

 僕は苦笑いしながらハンプティさんを諭す。

「ああ、そっか。飛ぶ前に倒したかどうかってことだっけか。いや、えっと……ラクラを倒すよりも虎猫を守ることに集中してたから倒してない」

 そうそうと合いの手を入れたのが虎猫さんだ。

「ハンプティはあたしを守ってくれてた。それと、ポニちゃんもラクラを倒してないね。ほら、あたしって魔法使うし全体を見ていたようなもんだからさー」

「じゃあ、僕が黒箱を破壊するところも?」

「うん、バッチリ。あ、あたしも答えなきゃね。あの時は魔法を使おうとしていたから、一体も倒してないよ。それと戦闘中に言いづらかったんだけど……中型の黒箱は一つも壊せなかった。いざやってみようと思ったら全然余裕がなくて」

 僕が黒箱を壊している最中に、何度か虎猫さんの動向を確認したので知っている。四十体というラクラの数は予想に反して苦労を要していた。責める理由なんてない。

 その時点で中型の黒箱の数が減らないことは承知していたことだ。

 さて、三人ともラクラを倒していないのであれば、僕の考えに当てはまる。

「では、僕の考えをいいますね。トラップはラクラか黒箱のどちらかにセットされていたと仮定しました。そして、こちらの交差点に飛ばされる直前、ラクラは倒されていなかった。ということは必然的に六番目に破壊した黒箱がトラップ型のレリックだった。そう考えています」

 理に適っているとは思っている。ただ、この答えは可能性の一つでしか無い。僕の考えに異論を唱えたのは、虎猫さんだった。

「そう決めつけるのは早いかも。妖精たちは二つ目のトラップに気づかなかったんだよ。それならラクラや黒箱以外に……えーっと、なんていうんだっけ?」

 虎猫さんが僕に助けを求めるような視線を送ってきたが、彼女の頭の中にある考えを汲み取ることは、心を読み取る人でない限り無理だ。

「ほら、なんていうんだっけ。こう、自動的っていうか、時間が来たらドカーンって爆発する、アレ!」

「爆発じゃなくて……時限装置のことですか?」

「それだ!」

 虎猫さんは指をぱちんと鳴らして得意げな顔をした。

「そうそう時限装置だよ。装置! あたしらが戦闘を始めた瞬間に時限装置が動き出して、一定時間を過ぎたらここへ強制的に飛ばされるみたいなの」

「虎猫、お前、意外と頭いいんじゃねーの?」

 ハンプティさんがひどく感心しながら、そしてとても失礼なことを言う。

「ふふふ。バレてしまっては仕方ない。実はあたしは考えることは苦手だけど頭はいいのだ」

 虎猫さんは頭の回転は良いほうだとは思うけれど、しかし彼女の耳は都合の良いところしか拾わないようだ。自信家というべきか、自意識過剰というか、褒められても謙遜せずに、自身を持ち上げるのはどうかとは思うけれども。

 こうやって会話を介すことで僕らは落ち着きを取り戻した。

 これから何をするべきか、その目的こそ変わらないが手段や戦略は練らなければ、同じ轍を踏んでしまう。

 僕は腕時計を確認しようとしたが手甲を装着しているので確認が取れなかった。しかたなく、リリィを呼び出してスマートフォンで時間を確認したら五分後には十五時になろうとしていた。

「もうこんなに時間が経ったのか」

 あっという間に時間は過ぎ去っている。ラズリラブルの効果により、もうリンクした区域一体には適正者以外は残っていないだろう。棺には一定数の贄が収容されているはずだ。ガルズディアの復活は単純計算して早くて十時間、遅くとも十一時間後だ。

「真悟くん。いろいろと一人で考え過ぎだってば。パーティーリーダーに慣れてないかもしれないけれど、あれこれ一人で悩まないで私達にも頼っていいんだよ?」

「すみません。心配かけちゃって。ただ、このまますぐに行動してもどうかなと思って」

 ガルズディア復活までの猶予時間は約十時間から十一時間。時間があるのかないのかも判断しにくい。

 不安要素はまだある。

 スクランブル交差点から小学校まではさほど遠くはない。徒歩で二十分位の距離だろう。ただ、今度は区役所前ではなくそのまま小学校へ乗り込む形になる。おそらく小学校周辺には同じようなトラップが仕込まれていると考えるべきだ。黒箱出現トラップに空間転送トラップ。もしかしたら、それ以上のトラップも用意されているかもしれない。

 このまま急いで棺のある小学校へ向かっても良いのだが、うまくいく保証と確証がないので二の足を踏んでいる。

「だいたいわかっているよ。ガルズディアの復活までの時間とか、このまま急いで棺の破壊に行っていいのか、そんなとこでしょ? 小学校へ行ったとしてもまた同じようなトラップがあるかもーとか考えちゃうしさ」

「ポニテさんって読心術とか使える人でした?」

 真顔で言ったものだから、ポニテさんは腹を抱えて声高く笑った。人が消えたスクランブル交差点では彼女の笑い声は遠くまで響いた。

「あー、おっかし。バカね。ここにいるみんな同じようなことを不安に思っているんだもん。言ったでしょう? 頼っていいんだってば。目的はみんな同じ。不安に思うことも、また同じってわけよ」

 ポニテさんは口の両端を上げて笑顔を作った。

 あー、ヤバイ。この笑顔はヤバイ。すごくかわいい。

 なんだか急に照れくさくなって俯いてしまった。こんな所、カズさんやノヴァさんがみたらきっとからかうに決まっている。あの二人がいなくてよかったなどと考えてしまう。

「あ、ノヴァさん」

「もう、私たちがいるのになんでノヴァちゃんの名前がでるかなー。もしかしてノヴァちゃんが好きなの!」

「ち! 違いますよ。何を言っているんですか!」

 見当違いもいいところだ。だが、ポニテさんの勘違いと追求は止まらない。

「ほら、動揺しちゃってる。やっぱ胸なの? そうなんでしょう?」

 ポニテさんは慎ましい胸に手の平を置いて訴えてきた。さっきまでの笑顔はどこへやら、ムスッとした表情で僕へと詰め寄る。

「だから、違いますって!」

「怪しい。すっごい怪しい。ガルフィクスとの戦闘中もデレデレしてたしさ。腹立つわー」

「デレデレなんてしてませんってば」

 誤解を解こうと必死になればなるほどポニテさんと僕との距離は縮まるが、精神的な意味では離れる一方だった。

 一度でもへそを曲げるとなかなか元に戻らないのが厄介だ。なにかいい案はないのかと、無駄に頭を使っていると、右肩にハンプティさんの手が置かれた。

「みなまで言わなくてもわかるぜ。シンくん」

「え? はい? なにが?」

 なんでハンプティさんが割り込んでくるんだ。しかも意味ありげな言い方が余計に不安を募らせた。

「だってほら。ノヴァ姐さんの胸。あれは凶悪じゃん。いや悪とかいったら燃やされるな。大天使じゃん?」

 言いたいことはわかる。だが比喩が下手くそ過ぎてツッコミを入れたい。

「あの胸を思うがままにしたいという気持ち、男の俺なら理解してあげられるぜ」

 ハンプティさんは白い歯を見せつつ、親指を立てた。

 もう……どうしたらいいんだ? ツッコミどころが多すぎて頭も口も追いつかない。

 とんでもないことをキメ顔で言ってのけるハンプティさんが怖い。そして、とても残念だが同性ではあるけれど、僕は身体的特徴だけで人を好きになったりしない。

 ──一度、あの胸に堕ちる寸前までいったのは僕の心の中だけに留めさせて欲しい。

「ハンプティ。あんた何もわかってないわね」

 うん、どうしてこの話題に虎猫さんまで乗ってくるんだ。

「てか、ポニちゃんも酷くない? なんで気付いてあげないわけ? 真悟くんはさ、ポっんぐ!」

 僕は急いで虎猫さんの口を塞いだ。この人、何を言い出すんだ。この人、気付いてる。確実に僕の恋煩いに気付いている。危ない。マジで危ない。てか、たった数時間の間で僕の気持ちがバレていることに驚愕だ。

「ポン? ポンってなに?」

 ポニテさんの眉間の皺がよりはっきりと見える。そして、なんで気づかないんだ、この人は!

「なんでもないです。虎猫さんが余計な──と言うか、見当違いなことを言いかけたので」

「ごばがざじででぅ」

 えっと、なんだ。誤魔化してると言っているのか? そりゃ、誤魔化しもするよ。

「虎猫さん、余計なことは言わなくていいですから!」

「ふぁんで!」

 口を抑えられているのに虎猫さんの勢いは収まっていない。もうなんなのこの状況。

「それは僕がいいますから、横槍はやめて下さい」

「ほふぇでいいの?」

 たぶん、それでいいのと聞いているのだろう。今はいいんだ、諦めているとも言えるけれど、今のところはこのままでいい。

「なによ。二人して内緒話でもしようっていうの?」

「それも違いますって」

「もう、それならちゃんと言いなさいよ! 真悟くんも巨乳が好きなんでしょ」

 話の流れがすり替わっている。もうノヴァさんじゃなくてもいい。

「僕はそんなこと一言も言ってませんし、胸より中身です!」

 ポニテさんの体がピクリとして、固まった。

 あ、これってヘタしたら告白っぽくならないか。よりにもよって最低な告白だろと、血の気が一気に引いた。

「え? マジで? 本当にそう思う」

 ポニテさんのことだけど受け取り方が全く違っていた。そうじゃないんだと叫びたかった。……諦めよう。

「いや、そんな話をしたいわけでもないんです」

「はぁ? じゃあ、なんなの! はっきりしなさいよ」

 なんでこうも責められなくちゃいけないんだ。少し腹が立ってきた。

 僕は柄にもなく声を荒げた。

「緊急連絡をするんですよ!」

 僕の一言でポニテさんの眉間に寄っていた皺が亡くなり、大きく開いていた口は(つぐ)まれた。

 数秒の間が僕ら四人に訪れる。

「あー」

 ようやく納得しれたポニテさんとハンプティさんは同音の言葉をもって応えた。代々木公園で別れる前にとりきめたコンタクトの使用条件だ。

 適応者の存在、新しいレリックについて。これらをノヴァさんたちにも伝えるべきなのだ。

 ようやく落ち着いたかと安堵していたら、手甲からパンパンという音が小刻みに聞こえた。虎猫さんが苦しいと合図を送っているのに気づかなかった。

 虎猫さんの口から手を離すと「死ぬかと思ったじゃない!」と怒鳴られた。

「はい。あの……すみません」

 必死な形相で睨みつけられ思わず謝ってしまったが、なにか腑に落ちない。

 溜息の一つでもつきたいけれど、僕はリリィにフレンドリストを開き、ノヴァさんとコンタクトするようにお願いした。


最後まで読んでいただきありがとうござます。


シリアスな内容が続いてきた中、今回は会話中心、

息抜きに重きをおいた談話でした。


明日も19時ごろから20時頃に投稿します。


よろしくお描いします。


※ 9/28 文章修正

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