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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
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022(115) 『所属(アフェリエイション)』

第二章022です。

 突如として現れた土器、形からして壺のようだが、日常生活で使用するにはあまりにも大きすぎる。

 近づいて注視すると、素材は土のようではあるけれど異質だということがすぐにわかった。土に見えたそれは脈動し蠢いている。

「いったい何でできているんだ」

 奇妙ではあるが好奇心が先行してしまった。その土器に手を伸ばす。

『シンゴ。間違っても水晶体やその器に触れてはいけないよ』

僕の行動を見透かしたかのようにフリージアの声が聞こえ、僕の指先は土器に触れるか触れないかのところで止まった。

「ど、どうして?」

『何が起こるかわからないから触れるなという意味よ。どうやらここの装置は想像していたよりも感度が高いの。さっきの窪みのスイッチもそうだけど、おそらく目の前にある土器はより繊細なはず。いわば精密機械なのよ』

「見た目は土の器なのに?」

『なのに、よ。さて、さらにこの装置の解析をするから、しばらくそこで大人しくしていて』

「しばらくってどれ位の時間?」

『それが分かったらちゃんと明言するわ。そうね。集中したいし、しばらくはコンタクトを切っておく。ここに誰も来ないとも保証はないから、あなたたち適正者は地上へ出て見張ってくれると助かるわ……そろそろ第二陣がこちらの異空間へと訪れるはずだから、オリジナルに状況と現在地を伝えておくわね』

『うわ! フリージア! なんだそれ! 一体どこから!』と、ダリウスの絶叫が聞こえた。想像するに解析するための道具などを換装させたのだろう。

『あーもう。五月蝿いわね! はやく地上へ行きなさいっての! じゃあ、コンタクトは終了させるから、あとはご自由に!』

「ちょっと、フリージア!」

 僕が叫び呼んでも返答はなかった。

「自分勝手というべきか、研究者としての気質なのか。どっちだろうね?」

 そう言いながらシルヴィアが苦笑いをしている。

「ともかく、僕らは地上に出るとしよう。この空間はフリージアに任せよう」

「うん。ねぇ、またくっついてもいい?」

 空きあらば僕にくっつくということをしなくなっただけマシかもしれないが、それでも僕はため息を吐かずにはいられなかった。

「いや、それは困るというか、僕らはここに遊びに来ているわけじゃないから」

「わかっているよ。私がここに居るのはマレックや他の人たちを救うためでもあるんだからね。時と場所はわきまえるよ」

「マレック?」

「私の覚醒した力を奪って、消えてしまったギルドの仲間だよ」

「そう……か」

 メチャクチャな言動をしてはいるけれど、ちゃんと彼女は自分の役目を忘れていなかった。当然だ。ザラによって集められた僕ら四人は誰かの犠牲によって生き長らえていることを忘れるはずもないのだ。

「行こうか。地上に」

「ああ」

 僕とシルヴィアは動力源の部屋を出て、そのまま地上へと戻った。

 空は変わらず三原色が渦巻いている。陽の光はあるけれど、太陽が見えないことに今更気がついた。

「そういえば、ここはどうやって光源を得ているんだろう?」

「オーバーテクノロジーが作り上げた空間なんだし、擬似的な太陽光を作ることくらいはできたんじゃないのかな」

 そうだろうと納得しかけたが、腑に落ちなかった。

「じゃあ、そのエネルギー源はどこなんだろう。ここには古代種の生物しか居ない。しかもモンスターだよね」

 僕は頭の中に膨れ上がる疑問を、聞き手に回ってくれているシルヴィアに話しだした。

「うん。それがどうかしたの?」

「人の気配はないけれど、モンスターはいる。じゃあ、その古代種の生物たちはどうやって生き延びてきたんだろう? 何千年という時間を自己繁殖し現在まで生存できるのかな?」

「実際、私たちはここの生き残った古代種と戦っているわけだから、食物連鎖が成立しているんじゃないの?」

 僕は戦った古代種の造形をよく思い出す。

「……あのさ。古代朱たちに生殖器はなかったと思うんだけど」

「言われてみると……じゃあ、交配もせずに、たった一つの個体だけで生存してきたということ?」

「それも考えにくい。なにより本当にここは誰の手入れもされずに維持できたなんて、どんなに科学力が現代よりも超越していたとしても、不可能じゃないかな」

「ねぇ、シンゴ。ちょっと回りくどいんだけど? その考えの終着点が見えているのなら、結論だけ出してくれない?」

「ごめん。口に出して考えをまとめているんだ。それにこれは聞き手が居ないと至高の発展が乏しいから」

「シンゴって、本当に深く考えるタイプの人なのね。悪くはないけれど、身長すぎるのも考えものよ? で、私との会話で結論に至ることはできたの?」

「おかげさまで。おそらくなんだけど、人間に親しい知的生命体がこの異空間に存在していると思うんだ」

「あり得ない話ではないよね。ただ深読みしすぎということもあるよ?」

「現状に甘んじるのではなくて、常に不足の自体に対応できるためにも、ある程度の想像はしておいてもいいとは思う」

「それは第一次咆哮で培った経験則?」

「ある人にいわれた言葉だよ。この助言をもらっていなければ、僕はきっと第一次咆哮で生き残れることはできなかったよ」

 オンラインゲーム時代の『Relic』、そして第一次咆哮時においても共に戦ってくれたノヴァさんのおかげだ。

「なるほどね。私もある程度は、物事を考えて行動をするつもりではあるけれど、シンゴのそれって危機感というか、生と死を一緒に考えて導き出した想像力だよね」

「第一次咆哮のときは本当に死ぬ可能性があったからね。状況は今も一緒でしょう?」

「そりゃそうだけどね。でも、シンゴが言うとおり、人間に近い思考力と行動力を有した生命体の存在を否定してはいけないね」

「僕ら適正者、試作型適応者、そして古代種。嫌な三角関係の構図だ。じゃんけんにもなりゃしない」

「じゃんけん? ああ、アニメでよく見るアレね? こうして拳を握るのがグーで、ハサミのこれが、チョキ? あとは手の平をみせるやつよね? ねぇ、この三種類の呼称はどこからきた語源なの?」

「ええっと、それはね」

 僕も語源なんて知らなかったけれど、ようは見た目と語感からきたものだろうとあたりをつけてシルヴィアに説明した。

 じゃんけんの成り立ちまではわからなかったけれど、それでも実に簡単で、瞬時に勝敗が分かれるゲームだとも話をした。

 説明をし終えたあと、シルヴィアは僕に向けて軽く握った拳を見せてきた。

「じゃあ、私たちはグーに所属しているってことにしない?」

「なんでグーなの?」

「国、宗教、年齢、性別、どれをとっても同じじゃないし、目的も古代人の遺物を略奪する、これは黒の創造主とやっていることと同じ。嫌だけど目的は同じでもさ、適正者と適応者は根本的に違うところがあるじゃない?」

 あるじゃないと言われても、思い浮かぶことはなかった。

「わからない? 適応者の人たちは結局のところ、自分一人の個を大切にして仲間意識が薄いってこと。彼らの大半はうまくいかない現実世界が嫌になって、ゲームでは王様気分になりたくて、一人でいきがろうとした。私たちは……手を取り合ってとまでは言えないけど、一人で戦ってきたわけじゃないでしょ? つまり団結、纏まっているという意味でこのグーなのよ」

 シルヴィアの軽く握っていた拳は、強く、硬く握られ、僕の胸を突いた。

「でも、じゃんけんには優劣があるという事を忘れてはいけないよ?」

「パーの存在よね? それなら大丈夫よ?」

「? なにがどう大丈夫なの?」

「広げられた手の平を、この拳で突き破ればいいってことよ」

 シルヴィアは僕の顔に向けて拳を向けた。

「それはルール違反だよ」

「無法となった場所にルールを適用させるほうがナンセンスよ」

 シルヴィアが愉快そうに笑うので、僕もつられて笑ってしまった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回投稿は10/2です。

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