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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
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019(112) 『東と西(East and West)』

連載再開。

第二章019です。

 話す前にと、ザラは散らばっていたプロトタイプたちの死体回収した。

「黒の創造主が作った試作品だからね。貴重なサンプルとしていただくわ」

 元が科学者だからだろうか。人の死を軽んじるような、物として扱うような言葉が重たかった。なにしろ見た目は少女なのだ。ギャップが大きすぎる。

 肉片も血もすべて綺麗に回収され、悲惨な跡が何一つ残されていなかった。

「これで、少しは私の話に集中できるでしょ?」

 フリージアは僕の隣りにいる女の子に微笑む。

「ええ……ごめんね。そんなことさせちゃって」

「いいさ。私はやるべきことをやっただけのこと。で、ここのピラミッドを守っているセキュリティなんだけど、正直にいうとどんなトラップが仕掛けられているかはわからない。死体を詳しく調べれば、見当はつくけどラボでも無い限りは難しい」

「──まぁ、その仕掛けをどうにするわけだから、そこは問題じゃないな。動力源がどこにあるのかさえわかればいい」

 ダリウスは腕を組み、ピラミッドとセキュリティが働いている境界を眺めた。

「セキュリティ動力源は二つあるの。ここからみて東と西ね」

 フリージアはピラミッドの隅を指差した。

「四角錐の底辺にあたる角だと思えばいいわ」

「どちらか片方を潰せば止まるという仕様じゃないのか?」

 ダリウスの問いにフリージアは小さく首を振った。

「ううん。私の見解では動力源を二つにしたことで、より協力な装置を備えた、そんな風に見えるの」

 フリージアの可愛らしい目はエネルギーの流れを読み取れるらしい。

「忘れないで、私はオリジナルの複製版で地球人ではないのよ」

「……読心術もあったりするの?」

 僕の考えを見事に読み当てた上に、回答するフリージアに驚く。

「まさか、そんな顔をしていただけよ」

 そんなに僕はわかりやすい男なのだろうかと疑問符を浮かべる。なんてことはない、僕の周りにいる女性はいつもこちらの心を読みきって僕を看破してきた。不思議ではなく当然のことだった。

「ゲーム脳みたいな発現になるが、もしかしなくても同時にその動力源を壊さなければここのセキュリティを止めることは出来ないということだよな」

 ダリウスが面倒くさそうに頭を掻く。

「もしかしなくてもその通り。ミッションは至って簡単よ。同時に壊すことだって、適正者同士のコンタクトを行えばいいだけのこと。適正者は妖精を使ってコンタクトをしてきたと思うけど、レリック武器となっている妖精には負荷がかかるから、私が中継役を引き受けるわ」

ザラに出来たことは一通りできると思ったほうがいいらしい。

「近接職である俺とシンゴは一緒に動かないほうがいいだろう。中距離のフリージアとシルヴィアがどちらに付くかってことになるが、どうする?」

「私はシンゴと一緒に行く」

 いの一番に開口したシルヴィアは、僕の腕を取った。

「そこまでシンゴにベッタリされるともう嫉妬する気持ちもわかねぇよ」

 やれやれとニヒルにダリウスは笑った。そして僕はシルヴィアに密着されて気が気じゃなかった。

 ともあれ、先程まで青白い顔をしていたシルヴィアの表情もよくなっていた。

 深く話し込んだわけでもないが、東には僕とシルヴィア、ダリウスとフリージアは西へと向かうことになった。

「お互いの姿が見えなくなったところで私たち四人のコンタクトが取れるようにするわ。随時会話できる状態というのも居心地がわるいと思うから、動力源へ近づいたら会話が出来るようにするわ」

「あのさ。その動力源なるものなんだけどさ。そっちはザラがいるから動力源がなんなのかわかるとは思うけど、僕たちがソレをみても一見にして動力源だとわかるものなの?」

「だから近づいたら会話を始めるといったでしょう? 私には古代シュメール人の『レリック』を感じ取れるの。シンゴたちが近づいたらその時点で私が指示するわよ」

「なら、大船に乗った気持ちで未知なる動力源の元へむかいますか」

 こんな僕の軽口を合図にして東と西に分かれて目的の場所を目指した。

 背中合わせのまま移動し、ダリウスたちと僕らの距離は目視でようやく判別できるくらい離れていた。

 巨大なピラミッドとはいっても、エジプトのそれとは大きさも幅も異なっている。このピラミッドは武道館くらいの幅と高さを持っている。近くで見れば確かに圧倒的ではあるけれど、ただの建築物としてみれば脅威でもなかった。

 四角錐の斜面を眺めながらひたすら歩み続ける。もう反対側を歩いていたダリウスとフリージアの姿も見えない。

 左手にあるのは岩を切り出して作られたピラミッドだけ。

 一方でシルヴィアはというと抱きついたままの状態でもはく、つかず離れずの間隔を保っていた。

 たしかに顔色は良くなっているようには見えるけど、死の残痕を目の当たりにしたのだ。はい、もう元気になりました、なんて都合のいいことはない。戦う覚悟や、死を隣り合わせになるとわかっていても、他人の死にはなれないものだと思う。もし慣れてしまったのなら、それは人としてどこかが壊れている。

 僕らの世界が異世界と繋がり、戦いに明け暮れた数日で得たことは、理性があるからこそ、僕らは人でいられることだ。

 大丈夫だ、うまくいく、などと綺麗事をならべて呟いてもそれは慰めにもならないわかりやすい嘘だ。

 だが、こうして無言のままひたすら歩き続けるのも苦痛だ。

「シンゴにね。聞いてみたいことがあったの」

 話を切り出せない僕の代わりに、シルヴィアが問いかけてきた。

 シルヴィアも無言のままでいるのが耐え切れなかったようだ。

「こんな雰囲気でおもしろおかしくお話なんて出来ないから、私が前々から知りたかったことを教えてほしいのだけれど」

「僕で答えられることであれば、聞いてみてよ」

「……シンゴはあの、第一次終末の咆哮が起きた直後、すぐに戦えた?」

 二週間と経っていない出来事なのに、僕の記憶は朧気だった。

 あの時は、そう、ガルブの群れに襲われ死を覚悟した時だった。でも、適正者の僕に仕える妖精のリリィが現れて、そして……そのまま戦闘を開始したんだっけ。

「近くに黒箱が近くにあったからね。小型のレリックモンスターに襲われたから、戦うことしかできなかったよ」

 生まれて初めて生きた唐物を殺した感触はもう残っていない。

「そうなんだ。私はね。出来なかった。あの時、私は大学の友だちと買い物をしていただけ。もちろん、『レリック』のイベントがどんなものか気にはなっていたけれど、ゲームよりリアルを優先してた」

「うん」

 シルヴィアが何をいいたいのか、伝えたいのかわからないけど、彼女の話は聞かないといけない、そんな空気が漂っていた。

「あの咆哮が聞こえても、あまり気にしてなかった。でも、五分、十分と時間が過ぎていく内に、街中が混乱してきた……そして、私の友達はレリックモンスターに襲われて……怖くて。私は妖精の呼び声に答えずにひたすら逃げたの」

 シルヴィアが僕の腕を強くつかむ。

「大切な友達なのに、私は見捨てたのよ」

 いろんな感情が混ざっていた。彼女は彼女自身を軽蔑し侮辱している、そんな声色だった。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

今日は連載休止以前と同様に土曜の投稿でしたが、

今後、10月末まで毎週日曜19時から20時頃に投稿します。

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