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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
115/143

018(111) 『案内人(ガイド)』

第二章018です。

 フリージアの道案内により、古代シュメール人が作り上げた異空間にある遺跡探索を続けていた。

 一万年以上前の遺跡だというのに手入れさえすれば、なんとか暮らせるのではないのかと思えるくらい風化は進んでいなかった。自然繁殖する木々に雑草などを綺麗に整えてしまえば、の話ではあるけれど。

 それにしても、と僕は現存している建築物をまじまじと眺める。かつて人々が住んでいたであろう住宅地は、現代人の僕らからするとやや大きめな作りになっていることに気がつく。

「巨人族のなごりよ」

 周囲を目ざとく見ている僕にフリージアが話しかけてきた。

「現人類が闊歩する前の種族ね。もともとは火星に住居を置いていた種族だったらしいけど」

 本当にと疑問を投げかけるだけ、無粋だし無駄な行為になる。

「ピラミッドを建築したのは巨人だなんていうオカルト話も聞いたことがあるな」

 この話題に食いついてきたのはダリウスだ。

「ギザのピラミッドを建築するにしてはあまりにも時間が足りなすぎる。しかし、さらに当時の地球の重力は現在よりも比重が軽く、それゆえに巨大な石や岩でも運ぶことが用意だった、みたいな話だったかな」

「異星人がピラミッドを作ったというのは、あながち嘘でもないというわけね」

 とシルヴィアが笑いながら言った。

「もしかして、いま私たちが目の前にしているあのピラミッドも巨人族が作ったのかしらね」

 シルヴィアは顎を使って眼前に見えていたピラミッドを指した。

「閑話休題から本筋に戻すにはいい流れね。そうよ、シルヴィア。あれが最初の目的地。おそらく生命製造装置の動力源となりえる、なにかがあるはずよ」

「なにかってなんだよ。もしかして、動力源があるかまではわからないのか?」

 ダリウスがうんざりした口調で指摘する。

「あくまでも古代シュメール人が残した『レリック』の反応は感知できるだけなの。あとは探してみないことには始まらないわ」

「無駄足にならなきゃいいけどなぁ」

「無駄口を叩かないで。私がいなければあんたたちは闇雲にこの広い異空間をさまようことになるのよ? それでもいいわけ?」

「よくねぇよ。ったく。可愛げの無いやつだ」

「可愛くなくて悪かったわね」

 ふんと鼻息を荒くしてフリージアがへそを曲げた。

「ほら、ふたりとも喧嘩なんてしないでよ。仲良くしてとは言わないけれど、協力しなければ前には勧めないのだから。ね?」

 優しいお姉さんみたく、シルヴィアが二人の間に割り込む。

 しかし、シルヴィアの優しさも二人にはあまり効果は見受けられず視線どころか、顔すら合わさなくなってしまった。

 空気の悪い中、進めていた足が不意に止まった。

 いや、止めてしまった。

 見上げるほど高いピラミッドの存在感があるのに、僕ら四人は上ではなく真下に釘付けとなった。

 生臭さ鼻につく。乾ききっていない黒い血と肉片。その部位を見る限りは僕らと同じ『人間』だった物体が転がっている。

 隣にいたシルヴィアが口元を抑える──が、我慢できなかったのか、彼女は後ろを向いて吐き出してしまった。そんな彼女の体を抱きながら、今一度、目の前にある冒涜的な光景を注視する。

 残痕は確かにおびただしい量ではあるのに、ピラミッドへと続く道から先はマキシングテープを貼ったかのように一片も汚れていなかった。

 此処から先は通さない、ということか。それにしても、この黒い血。

「プロトタイプたちのモノ、なのかな」

「十中八九そうね。この施設を使うものが居なくなっても、セキュリティが働いているみたいだわ」

「一万年も近く放置されていたのに、そんなものが稼働しているのか?」

「言ったでしょう? 動力源になりえるものが、ここにはあるって」

「じゃあ、俺たちも入れないってことじゃないか」

 ダリウスが吠える。

「みっともないから大きな声を出さないでくれる?」

「なんだと!」

 再び顔を突き合わせたかと思えば、また口論か。

「ふたりともいい加減にしてくれ。争うよりもまず優先するべきことがあるだろう」

「その優先するべき場所に入れないから、困っているんだろう! 優等生ぶるんじゃねーよ」

 ダリウスが怒りの矛先を僕に向けてきた。

「落ち着いてくれ。ダリウス。確かにこの先には何かしらのトラップが施されているんだろう。だから試作型適応者たちは無防備に足を踏み入れて、血と肉の塊に変えられた」

「そんなの見りゃわかるって! だから、俺たちはどうしたらいいんだよ」

「試作型適応者にはいなかったんだよ」

「いなかった? ──あ」

 ダリウスが怒りではなく、呆けた顔をしてフリージアを見つめた。

「そう、奴らには優秀な案内人がいなかっただけのことだ。そうだろう? フリージア?」

「ふん。ちょっと考えればわかることなのに。勝手に目くじら立てるもんだから、どうしようかと思ったわ。そう、この私がいるから問題なんて皆無よ。私が入れると思ったからここへ導いたの。大切な適正者を殺すような真似をするわけがないじゃない」

 フリージアが胸を張り、顎を上げた。

 小生意気なところはあるけれど、これはこれで彼女を信頼できるポーズでもあった。

「良い? このセキュリティを真正面からきることはまず無理だわ。だから、ここの動力源をまず断つの。ここからはふた手に別れて行動することになるけど、心構えはできているかしら?」

 フリージアが心配そうにシルヴィアを見つめる。

 嗚咽は止まったようだが、シルヴィアは動揺したままだ。

「シルヴィア。どうする? 無理はしなくていいのだけれど」

 肩を抱き寄せていた僕の手をシルヴィアが掴んだ。

「平気……なんて、空元気なのはバレバレだと思うんだけど。でも、行かないとダメじゃない? 私たちはそのために着ているんだから」

「わかった」

 弱々しくも、微笑むシルヴィアの両手を持って、彼女を立たせた。

 足元はふらついているけれど、自力で立てないほどではなさそうだった。

「フリージア。僕らはどのように動けばいいのか、教えてくれ」

 僕らは改めてフリージアと向き合い、顔を突き合わせた。


最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回投稿は早ければ9/3、遅くとも9/10を予定しています。

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