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異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第二章『消失技術の記憶』
107/143

010(103) 『最後の場所(ザ・ラスト・プレイス)』

第二章010です。

「サポート? 僕らを?」

 脊髄反射のように僕はザラに聞き返した。

 ザラは返事をせずに僕と他の適正者四人を見つめながら頷く。ザラから頑なな意思を感じ取れる。間違っても冗談を口にしているようには見受けられなかった。

 唐突の告白に驚いたものの、心半ば当然とも思えていた。

 ザラは、いや白の創造主と言うべきか。

彼女は僕らをサポートしたいと進言したけれど、何故もっと早くから力を貸してくれなかったのだろうと言いたかった。

 言葉は乱暴になるけれど、彼女はこれまで他人任せだったのだ。

 自分が守るべき世界を、自身の力ではなく異世界の人間に頼った。結果的に彼女がいた世界『ルーシェンヴァルラ』は表面上では救うことに成功した。だが、その代償として今度は異世界から来た人々の住まう世界が脅かされることになったのだ。

 そう、僕らの世界だ。

 『Relic』。オンラインゲームだと思って楽しんでいた『ルーシェンヴァルラ』が実は、本物の異世界であり、その異世界にいた『敵』が僕らの世界へ侵略してきた。

 さる九月十五日に事件は起きた。異世界と僕らの世界が繋がり、融合を起こそうとしていた。僕らの日常は一変し、適正者として戦った僕らだけでなく、『Relic』となんの関わりのない人達まで犠牲になった。

 彼女は、ザラは、白の創造主は良かれと思って僕ら適正者と行動をともにすると言ったのかもしれない。しかし、彼女にどれほどの期待をしていいのか、わからなかった。

 ザラの突然の申し出から最初に行動へ移したのはイリアだった。

 組んでいた両腕を解いて、大きな歩幅をとってつかつかとザラの元へ歩み寄る。

 歩き方からして怒りを表していた。

 ザラよりも背の高いイリアは、結果としてザラを見下ろすような形となった。

「ザラ、これからあたし、ひどいことを言うけど、聞いてくれる?」

「聞きます」

「ずっと傍観していたあんたに、なにが出来るっていうのよ。一緒に戦う? それが出来るんだったらもっと早くからしなさいよ。そもそも、ここへあたしたちを呼び集めたのはあんたが自由に動くことが出来ないからじゃなかったの」

 イリアはザラの両肩を掴む。それこそ彼女を丸呑みしようとする蛇のようにも見えた。

「動けるんだったらもっと早く動けるようにしておきなさいよ。前の戦いでもそうだった。あんたはいつも後手に後手に回って、結果的にあたしたちの大切な人たちを奪った。どうして……カミロはあたしの代わりにならなくちゃいけなかったのよ。どうして……」

 イリアの涙腺に涙の粒が溜まり始めるも、決してこぼれ落ちないようにこらえているのが見て取れた。

 僕がカズさんに覚醒した力を奪われ、死んでしまったように、カミロという人もイリアの代わりになったんだろう。

「責めたい気持ちはわかるぜ。でも、いまここでザラを問い詰めても、言及しようとも、俺たちの友人たちは返ってこない。それに彼女だって必死だったことくらい、イリアも知っているだろう」

 ダリウスが静かな声で、イリアを説得する。

「わかっているわよ。ここに来て、サポートしますなんて言われて、素直に納得できるほど、あたしは出来た女じゃないわ」

「だからといって、いまここで彼女を責めたところでお前の大切な人たちは戻ってこない。得られるのは一時の自己満足だ。イリア、お前が求めているのは、彼女からの謝罪か? そんなものはすでに貰っている。大切なのはその後だ。彼女がどのように責任を果たすのかが重要ではないのか」

 ダリウスの言葉に、まだイリアは反応しなかった。

 そのかわりに、イリアがザラを掴んでいた両手がさらに力が加わったように見て取れた。

「イリア!」

 僕とダリウス、そしてハインも同時に言葉を発した。

 彼女の両手に闘気が宿ったことに察したからだ。本気だったかはわからないけど、生身の肉体であるザラに攻撃を加えようとしたのは明らかだった。

「安心してよ」

 イリアは掴んでいた手を離した。警察に包囲された加害者みたく両手を上げた。

「痛めつけようなんて、さすがに考えてはいないわ。そこまで、バカじゃない」

 本心はわからないけれど、イリアの両手にはもう闘気は微塵にも感じられなかった。感情に流されていたとはいえ、ザラを言葉以上の力で責めるのは違うはずだ。

「でも」

 と、イリアは冷たく言った。

「どうしてあたしたちと同行ができるのかは教えてよ。あなたが動けるのなら、何のためにあたしたちがここへ集まったのか意味がないもの」

「それは俺も同意見だ。そもそもザラが身動きが取れないから俺たち覚醒した適正者が集められたんだ。納得のいく回答を頂こうか」

 ザラはダリウスと向き合い「納得していただけるかわかりませんが」と、断りを入れた。

「わからないってなんだよ」

 嘲笑するダリウスだが目は笑っていない。

「私が動けるようなった理由はお答えできます。その説明をするためにも場所を移しましょう。そして、次の場所が最後です」

 最後という意味が気になったが、ザラに従うことにした。

 また突如として彼女の真後ろに大きめの木製扉が出現した。

 本当に物理法則や常識を壊してくれる空間だ。

 彼女が創りだした異空間だとはいえ、非日常的な現象はなれたとはいえ驚いてしまう。

 自動的に開かれた扉から見えるには暗幕が降ろされたように何も見えなかった。

「どうぞ、こちらへ」

 まずはザラが暗闇の中に消える。

 僕らも彼女の後を追って扉をくぐり、最後の場所へ足を降ろした。

 乱雑とは言わないが、床や壁には機器類やコードなどが引き締めあっている。部屋も広く、街の公共施設にあるような運動場くらいの広さはあると思われる。

 なによりも目を引いたのは、部屋の中央に並べられた五つの透明で大きなポッドであり、その中身だ。

 五つの内、ちょうど真ん中に位置するポッドの中には生まれたままの姿をしたザラが入っていた。

「これは」

 それ以上の言葉が見つからず、そして、僕らを導いてくれたザラの元へと歩み寄った。

 ポッドの中は黄緑色をした液体と裸身のザラが浮いていた。

「ザラ、なの?」

 シルヴィアが恐る恐るポッドに触れようとする。

「それは次の私ともいえる体です」

 後ろには誰も居なかったはずなのに、彼女の声が聞こえた。

 全員が驚いて振り返ると先ほどまで僕らと一緒にいたザラが立っている。

「ようこそ。私の研究室へ」

 ザラは僕らの間をすり抜けながら、ポッドの中に浮かぶ彼女に触れた。

「この中にいる私は、複製です」

複製(クローン)なのか。いや、そうでなければ説明はつかないのだが」とダリウスが言いかけた言葉を飲み込む。

「こちらの世界で言う神への冒涜と捉える地球人もいらっしゃるでしょう」

 ザラはこちらの世界にいる人達の倫理を説いた。

「もちろんそうだ、ともいいたいが、俺たちは失った人たちを救わなければいけない。すでに肉体は失われたんだ。この際、倫理をどうこう言うつもりはない。だが、君の体は」

 と、ダリウスが言い淀んでいると、イリアが続きを引き継ぐ。

「この際、神ではないわ。問題なのは、いまあなたが動かしているその体は元々こちらの世界にいた人のものでしょう? それなのに勝手に実験台にするなんて。いくら何でも酷すぎる」

 今度こそイリアが弓を構えようとした瞬間、僕は彼女の腕を掴んだ。

「シンゴ。離して。こればかりは許されることではないわ」

「許す、許さないは、彼女の言い分を聞いてからだ。ザラの話はまだ始まったばかりだよ」

「でも!」

「イリア、感情に流されては駄目だ」

 しばしの間、僕とイリアは睨み合ったが、彼女は手にしていた弓を下げてくれた。

「いいわ。ここはシンゴの顔を立ててあげる。さぁ、話してちょうだい」

 高圧的なイリアの言葉に、ザラは仰々しく頭を下げる。

「まず、危惧されていることですが。いまこうして話している私の肉体も、そしてこの中にいる私の体も、依代としていた地球人の方ではありません」

「じゃあ、誰の体なんですか」

 僕は努めて冷静に問いかけた。

「ルーシェンヴァルラにある、オリジナルの私です」

 異世界からこちらの世界へ運んだ?

 それじゃ、まるで黒の創造主みたいにこちらとあちらの世界を繋ぐゲートをザラは作ったというのか。

「オリジナルと言っても、ごく一部です。現段階では転送する量も限られています。人ひとりを移送することはできません」

 ひとまず、彼女の体が地球人のものではないことに納得はできた。

 まだ、僕らは肝心な説明を受けていない。

「ザラ、あなたの複製と、これまで動けなかった理由がどう繋がると言うんですか」

 僕は改めてザラに問いかけた。

最後まで読んで頂きありがとうございました。

次回投稿は6/11です。

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