004(097) 『幻想(ファンタジー)』
第二章004です。
レリック武器を装着したことで、改めて僕を除いた四人が適正者だと実感する。
それぞれの武器はイメージに合った装備だった。
ダリウスは斧。イリアは弓。ハインは大鎌でシルヴィアは短剣だった。
こうして国も人種も違う五人が、同じ適正者だということだけで、変な親近感を持った。
それに五人揃って適正者へ変身(この表現が正しいとは思わいないけれど)してしまうと、日本の伝統番組でもある日曜の朝に放送される五人組の特撮戦隊物みたいだ。
彼らは正義のために悪と戦っていたけれど、僕らは純粋な正義を持ち合わせていない。
少なくとも僕は、全世界の人を守るために戦おうなんて微塵もない。
ただ、助け出したい人がいるから戦う、それだけなのだ。
レリック武器を装着したものの、どこか物足りなさがあった。それは十数時間前に、日本の米軍基地で試作適応者と戦った時から感じていたことだ。
「白の創造主」
「なんでしょうか」
「僕ら覚醒した適正者を生かした理由は、オリジナルの肉体でなければ覚醒ができないから、でしたよね。それなのに、僕の中に潜んでいた本能の根源が感じられないのですが。本当にまた覚醒することができるんですか」
「あの覚醒は、前にも述べた通りルーシェンヴァルラに近いフィールドであればなれます。ここも、そしてこれから行っていただく古代遺跡にある次元の狭間は地球がベースです。私に出来るのは適正者を維持することだけです。五人の中に、もしかしたら無理矢理にでも覚醒を引き起こせる方がいらっしゃるかもしれませんが、おすすめはしません。これは言わなくてもわかりますよね?」
白の創造主の言いたいことはすぐにわかった。覚醒による驚異的な力を得たとしても、待ち受けているのは確実な死だ。
「こうして五人とも適正者になられたわけですが。感を取り戻すためにも適正者として戦ってはみませんか?」
「まさかここに試作適応者たちがきているなんて?」
ここは白の創造主が創りだした次元の隙間ではあるけれど、黒の創造主側にも同じようなことができるかもしれないのだ。
僕らは敵の存在を意識したためか、露骨に身構えるような形になった。
「ご安心ください。ここは黒の創造主に近いしい者達は入ることはできません。そういう仕組になっていますから」
白の創造主は優しく微笑みながら警戒する僕らを落ち着かせた。
「戦うのは黒ではなく、古代です」
「古代って……遺跡にしかいないはずのモンスターがここにいるんですか?」
「厳密には違いますが、それに近いモノを用意しました。いきなり本物と戦うよりも、まずはシュミレーションしてみる価値はあるはずですよ?」
彼女は僕らの意思を試すように僕らを見つめた。
「腕試し、してみますか?」
僕の問いかけに、みな一同に頷き返してきた。
ここで断っているようでは、先に進むことすら出来ないのだとわかっているからだ。
「決まりましたね」
そういって白の創造主は椅子から立ち上がり、僕らが入ってきた扉を開くと、そこには廊下ではなく草原が広がっていた。
どこでもドアかよ、というのが率直な感想だった。
白の創造主が作り上げた家の中だったはずなのに、地面は風に揺れる草に土。空はやはり紫色をしていた。
僕ら五人が家から外へとでてしまうと、背後にあった家の扉は消え去り元の風景へと変わったしまった。
手を伸ばしてみても、空を切るだけでなんの手応えもなかった。
「みなさん、こちらを御覧ください」
白の創造主が差し伸べた手の先に、上半身は人間の男性、下半身は蛇といういかにもRPGで登場しそうなモンスターが現れた。しかも大きさは通常の人間よりも三倍近く大きかった。蛇との半人といえば、こいつはラミアか。
体毛のない上半身とは反対に、蛇の部分は均一された鱗に覆われ、蛇特有のぬめぬめした質感を保っている。ただ、このラミアは時が止まっているかのように身動き一つ取らない。
「亞人の一種です。より動物らしい古代種も見受けられましたが、こちらの世界にいる人々にはゲームらしいモンスターが相手にしやすいと思いましたので」
第一次『終末の咆哮』により、異世界化した空間の中でかずかずのレリックモンスターと戦ってきたけれど、さすがにこの手のモンスターは『Relic』にはいなかったので麺を喰らってしまった。
「対戦は一体につき一人です。五体一で勝っても意味はないでしょう。一対一だからこそ、自分の技量、力量も理解できます」
「俺から行こう。こうして適正者に戻れたんだ。体が疼いてどうにかなりそうだったんだ」
ダリウスが刀身の長い剣を片手にしてラミアの前に立った。
「一番手はダリウスさんでよろしいですか。……よろしいのですね。では、ダリウスさん、はじめましょうか」
「おうよ!」
ダリウスの鬨の声を皮切りに、ラミアも自分が生きていることを思い出し、活発的に動きまわった。
ダリウスは無駄ない動きせずに、ラミアの攻撃を躱し、予測不可能な動きをする尻尾を簡単によけていく。
喜々としてラミアと対戦するダリウスの姿は、それこ娼年のような無邪気さを醸し出していた。
そんな風に戦いを眺めていると、いつのまにかシルヴィアが僕の横に立っていた。
「ねぇ、シンゴ。質問役を私に譲ってくれないかしら?」
シルヴィアが僕の肩を叩いて訴える。断る理由もないので、僕は彼女に質問役を任せることにした。
「白の……というかいつまでも、名前で呼ばないのも気が滅入るわ。あなたの名前を聞かせてちょうだい? 間借りしているその体の名前じゃなくて」
「意外な質問ですね。二千年ちかい眠りから覚めて、私自身の名は捨ててしまいました」
「だからこそ、名前は必要なの。いつまでも白の創造主なんて呼んでいたら、いつまでたっても私達とあなたの距離は縮まらないもの」
「そこまで仰るのであれば……ザラはいかがでしょう?」
「ファッションブランドじゃない」
イリアは笑ったが、ハインは別の反応を示して「異人か」と呟く。
「なに、どういうこと?」
「ザラ。もしくはゼーラと言ってもいいが。ヘブライ語で異国や異人の意味だ。つまり、俺たちとは異なる人間と言いたいのだろう」
「それを言ったら私達五人とも異人じゃない?」
シルヴィアが僕らを見回しながら言う。
「でも、自分で決めた名前なんだし、深い意味を読み取るのもやめようよ。彼女はザラ。それでいいじゃない?」
シルヴィアの妙な説得力もあって、ダリウスを除いた四名が白の創造主をザラとして受け入れる。
「じゃあ、改めて尋ねるわ。ザラ、あなたの口ぶりからすると古代遺跡にいるはずの生物と私達を戦わせたいのよね? だけど、それっておかしくない? 古代遺跡に行かないと敵となる古代生命体のことはわからないんでしょう?」
「ええ。実物はわかりません。データがあまりにもふそくしていましたから。でも、ここは私が作り上げた空間であり、一種のプログラム化された空間でもあるのです」
「えーっと、つまり?」
シルヴィアがはにかんだ様子でザラの真意を探るも、結局はザラが返答する形で収まる。
「いま、ダリウスさんが戦っているあれは私のプログラムによって創りだした生きた人形なのですよ」
あれが、人形?
荒々しく動きまわるラミアを眺める。ダリウスの鋭い剣を難なく避け、その巨体を宙に浮かばせたかと思うと、見えない壁を蛇の部分で蹴り上げ、ダリウスへと体当りした。
その強い衝撃により、ダリウスは紙吹雪のように舞い上がった。
「ダリウス!」
イリアの叫びに呼応し、ダリウスは剣の柄を両手に持ってラミアの額に突き立てた。
渾身の一撃だったのか、それとも急所だったのかわからないが、脳天に剣を刺されたラミアは糸が切れたかのように地面へと沈んだ。
「まずは一体目。さぁ、次は誰でしょう? ちなみに次の古代種はこちらですよ」
ザラの背後に三つの頭を持った巨大な犬が姿を表す。
「こちらも有名なモンスターだと聞いています。地獄の番犬、ですか?」
そうだ。これもまた有名も有名、RPGでは定番のモンスター『ケルベロス』だった。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
次回投稿は4/30です。
※ 16/6/25 本文修正




