表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界化した現実世界を救済します  作者: アサクラ サトシ
第一章 『終末の咆哮』
10/143

008 『新種(ニュー・スピーシーズ)』後半

008 後半になります。


よろしくお願いします。

 虎猫さんがどんな顔をしているのか気になって振り返ると、彼女は片膝に肘を乗せて頬杖を付きながら流れる外の景色を眺めていた。

「いざ、こうやって誰もいなくなった渋谷を見ると、寂しいね。人が居ないって、怖いことなんだね……やるだけやってダメだったら、許してくれるかな」

「誰に?」

 外の景色を眺めたままの虎猫さんにポニテさんが聞く。

「いろんな人。リンクに巻き込まれた人たち、その家族や友達、恋人とか? 助けられなかった時に、あたしたちを許してくれるといいなーなんて思った」

「どうだろうね。人は、特に日本人はって意味だけど、誰かに責任を押し付けたり、悪者を作りたがるから、こればかりは楽観的にはなれないかも」

「あたしらも巻き込まれた側なんだけど、どれだけの人がわかってくれるのかって感じ」

「期待するだけ無駄だよ。糾弾する相手がいるから心を保てる人だっているんだからさ」

「うー、やめよ。こんなもやもやする話は終わり! 棺壊して、贄になった人達も助けて、そんで番人を倒して無事解決! で、いいんだよね?」

 助手席に座っている僕に虎猫さんが顔を覗かせる。

「後ろ向きより前向きのほうが僕らの精神衛生面も保てます」

「なんか、シンちゃんって言葉遣いが硬い。もっと柔らかくフレンドリーに話そうよ」

 さっきまでしんみりと話していたのにこの変わり様。名前に一文字入れている通り、猫みたいな人だ。

「ダメダメ。もっと長い目で見ないと真悟くんはそう簡単には口調を変えてくれないよー。割りと付き合いが長い私らでも敬語を崩さいないんだもん。真悟くん曰く『他人との距離感の縮め方がわからない』だよね?」

「そんなことも言いましたね。今思うと、痛い発言ですけど。これでもかなり砕けたほうですよ?」

「え、ちょっと待って」

 虎猫さんが目を丸くして驚いている。

「いまのそれで砕けているの? どんだけ分厚い壁作ってんの?」

「いやー、それが壁じゃないんだよね。真悟くんは真面目すぎるだけなの。初対面の人には失礼のないようにするがモットーみたいでさ。初めて会った時に比べたら気持ち砕けたかなーとは思うけどね」

 ポニテさんが肩を竦ませる。

「気持ちってどれくらいですか?」

「アリンコの餌並くらい?」

 例えがよりによって蟻の餌。そして反論できないほど的確な表現でもあった。

「ひっどい例え方でウケる」

 虎猫さんが手を叩いて笑う。

「あー、おかしい──ダメだ、顔がにやけちゃう……ん? やっぱりここにも咲いてる。シンちゃん、気づいた? あのでかい花って所々で咲いてんだよ」

 唐突に話題が変わったので何の話かわからなかった。

「ほら、あの花だってー」

 虎猫さんはシートに体を預けると外に向けて指さした。全長五十センチくらいはある花が見えた。形はコスモスに似ていて、色も薄紫で綺麗な色合いだ。

「綺麗だけどデカくて逆に気持ち悪い」

 ポニテさんの率直な感想に同意する。花は小さいから鑑賞しがいがある。

「フィールドや集落のマップでも見たことがないですね。植物系だから採取は可能かもしれないけど、あんな大きな花を持ち歩くのはシュールかな」

 目に見える風景は非現実なのに、現実問題を引き合いにしてしまうのが自分で言っていて可笑しかった。

「採取してもアイテム化してリストに入れるから問題なくない? せっかくだしツインテにあの花を見てもらおー」

 ポニテさんがスマートフォンを取り出してツインテに例の花を見させた。

「すっごいレアアイテムだったらみんなで採取しちゃおうよー」

「採取でレアでもバフアイテムにしかならないじゃん」

 こんな感じで和気あいあいと後部座席に座る二人の女子は盛り上がる。

 前席にいる男二人はろくな会話もないというのに。ハンドルを握るハンプティさんはどちらかと言うと運転に集中していて、稀に会話へ入ってくるだけだった。

「おねがい、このくるまという乗り物を止めて!」

 ツインテの可愛い声が車内に木霊する。即座にハンプティさんが急ブレーキを掛けた。

「なんだよ? もう少し走ればもう東武デパートだぞ」

「ごめん。うちの子が大声あげて。んで、あの花に問題でもあるの?」

「あの花。自然発生した植物ではありません」

「そりゃそうでしょ。ツインテたちの世界にある花なんだから」

「ポニちゃん、違うの! そういう意味じゃないの!」

 ツインテが必死に訴えるもポニテさんは首を傾げるばかりだ。だが、ツインテの言いたいことが僕にはなんとなくわかった。

 一抹の不安であればいいのだけれど……と思いつつ、僕もスマートフォンを取り出してリリィを呼んだ。

「あの紫の花を見てくれ」

「真悟さま、あの花は……新たに創られた花です」

 悪い予感は的中したようだ。

「やっぱり黒の創造主がレリックで製造した花か」

「そうです。よくお気づきになられました」

「ツインテがあれだけ動揺すればね。それで、あの花はどんな害を持っている? 触れただけで攻撃力低下とかそういうデバフ?」

「それは無いんじゃない? だって妖精がこんな風に解説してくれるのに敢えて触れる人なんていないってば」

 ポニテさんの指摘は正しい。適正者の意志とは関係なく接触してしまう可能性はあるのだ。たとえば戦闘中に動き回ってうっかりと触れることは稀にある。

「適正者さまたちに害はありません」

 僕らに害がないということは……まさか、そういうことなのか。

「リンクの中にいる人達を消したのはこの花のせい? 毒でも排出させているのか?」

 リリィは生物図鑑を眺めながら首を横に降った。

「毒ではなく攻撃です。花の名前は『ラズリラブル』で花言葉は『束縛』と記されています。花粉や香りを一息でも吸い込めば体の内側から攻撃されるみたいですね。適正者でもない人がその攻撃を与えられれば即座に棺へと運ばれてしまう。邪魔者を排除したがる黒の創造主らしいレリックです。」

「徹底して僕らの世界を追い込むつもりなんだな」

「救いなのはあの花が生息できるのはリリィたちの世界のみです。リンクが解かれれば、レリックであるあの花も消え去ることでしょう」

「それを聞けて安心したよ」

「一つだけ気になることが。採取用でもないのにアイテムとしての効果もあるようなんです。けれど、アイテムリストにはラズリラブルの名目はありません。こんな現象初めてです」

 一つの謎が解けたら、新たな謎が出てくる。僕らは黒の創造主によって弄ばれているのが腹立たしい。

「問題はその先にある。花のせいで棺には大勢の人達が収容されたのは確実だ」

 ガルズディアの復活が早まったのと同義のはず。

「人が消えた原因がわかっただけでも良しとしよう。ハンプティさん、車を出して下さい」

「いいけど、なにかわかったらノヴァ姐さんにコンタクトするんじゃなかったのか?」

 ノヴァさんを姉さんと呼ぶセンスに脱帽する。まぁ、園内であれだけビビらされたらそう呼んでしまうのもわかる……いや、わからないな。

「ノヴァさんのことですから、ラズリラブルには気づいていると思います。いまは時間が惜しいです。いまは棺に到着することだけを優先しましょう」

「さすがシンくんだ。よく考えてるよ。頼りになるわ」

 持ち上げ過ぎな気もするけれど、ハンプティさんも善意で言ってくれるのだし相槌だけは打っておいた。

「真悟さま、待ってください!」

 リリィが金切り声を上げた。

 走り始めようとした車が上下に揺れる。リリィを避難するように睨むハンプティさんをなだめて、僕はリリィと向き合う。

「この近辺に生体反応があります」

 レリックモンスターなら戦った方がいい。車を壊されてまた探すのは面倒だ。

「ガルブみたいに群れているのなら、さっさと片付けたほうがいいな」

「反応がレリックモンスターではありません。それに反応は一つです」

「じゃあ、適正者だろ。代々木公園でガルフィクスと戦う前に逃げた奴らじゃねーかな。シンくんが来る前にはもっと人数がいたけど、ほとんどいなくなってさ。たぶん、その中の一人じゃねーのかな」

「うーん。戦う意志が無いのなら、安全区域となった代々木公園内に案内したほうが良さそうだな」

 会って話す時間も惜しいのだけれど逃げた適正者たちを放置するのは良心が痛む。

「適正者さまの反応でもありません」

 リリィが重苦しい声で信じられない発言をした。

「レリックモンスターでも、適正者でもない? 僕らの世界にいる動物ということ?」

「リリィたちが索敵、感知できるのはリリィたちの世界にあるものだけです。こちらの世界にいる生き物は範囲外です」

「次から次へと面倒くさいなー。またわからないって言うオチはもう飽きたよ」

 ポニテさんがワゴン車のドアに手をかけた。

「待って。また勝手に行動しないでください」

「どっちかはっきりさせたほうがいいよ、もうこういうことで頭使うの疲れる!」

「あったしもさんせーい」

 虎猫さんも悪乗りしてポニテさんに同調し始める。

 もう何を言っても無駄だ。

「わかりました。みんなで行きましょう。パーティー分断は最も避けたい事体ですから。リリィ、その正体不明はいまどこにいるんだ?」

「もうすぐそこ──あちらです!」

 リリィの叫びに合わせて、車内にいた全員がフロントガラス越しから外を見た。

 彼らは、本当にすぐ側まで近づいていた。いつの間に近づいてきたのだろう。全く気づかなかった。僕だけでなく、車内にいる全員がそう思ったはずだ。

ゆっくりと近づいてくる二人は男性だ。レリック武器は所持していない。

「生存者なのか?」

 そんなはずがない。ラズリラブルの効果でほとんどの人は消え去った。『Relic』に関わっていない者がリリィの感知に反応するとも思えない。

 錯綜する思考が油断を招く。

 僕らが乗るワゴン車を前にして正体不明の二人は足を止めて各々のレリック武器を具現化さる。右は巨大な斧を手にした斧術士、左は剣術士だ。

 斧術士が両手で持った斧を振り下ろすと直線の斬撃がワゴン車に放たれた。

 僕らはワゴン車から逃げる間もなく斬撃をもらってしまった。


最後まで読んでいただきありがとうございます。


明日も投稿します。


よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ