彼と私と図書室と
こんな甘い高校生活送りたかったな!!涙
という色々な思いを込めました。短いのでサラッと読んでいただければと。
夕暮れの日差しが優しく照らす。
少しこもった空気に混じる古びた本の匂い。
司書の先生も今は会議に行っていて当番である私が一人でカウンターに座って先生を待っているだけだ。
カサリ、カサリ
本のページをめくる音だけが響く。静かな空間、私だけの特別な空間。本を読みながら少しだけ笑う。
すると突然ドアがガラリと開いた。
先生意外に早かったなと少し驚きながら顔を上げれば、同じクラスの生徒がいた。
私とは正反対の華やかなグループにそれも中心に居るような男の子。何時も太陽のように笑っているのを横目で見ながら話しかけることは決してなかった男の子。
彼も私がいるとは思わなかったのか大きく目を見開いてる。サラリとした茶色の髪が赤く染まってキラキラ輝いて見える。
「帰らないの?」
「うん、先生会議に行ってるから、留守番なの。」
「ふぅん、あそ。」
そうゆうとつまらなさそうにオススメのコーナーの本を手に取り近くの席に座る彼。
少し動揺したが、騒ぐわけでもなく静かに本を読むに少し安心する。だって、彼は本を読むタイプには見えなかったから。
そして私も続きを読もうと手の中にある本に集中する。
パラリ、パラリ
もうすぐ日が暮れる。文字が闇に溶けそうになる頃にようやく気づく。
慌てて顔を上げると、もう帰ったと思っていた彼がカウンターの前に立っていた。
思いのほか近くに居たことに私はぎょっとして思わず立ち上がり椅子を倒してしまった。私が読んでいた本も膝から滑り落ちてバサリと大きな音を立てた。
だが余裕のない私は本を落としたことさえも気付かなかった。思わず無意識の内に後ずさる。驚いて乱れた息さえも聞こえるのではないかと錯覚しそうだ。私と彼の間にはカウンターがあってこれ以上この距離は近くならないはずなのに。
大きな音を気に食わなかったのだろうか?それとも後ずさったのが悪かったのだろうか?彼が少し眉間に皺を寄せる。
「…お前さ。」
「う、うん…。」
「そんなに本読んでて楽しいわけ?」
「た、楽しいよ?色んな事を、知れるし、そ、それに」
本を読んでるときは私が主人公になったみたいになれるから。
思わず出掛かった言葉を飲み込む。こんな事を言ったら絶対笑われる…。変な女だって思われる。
「それに、なに?気になるんだけど。」
だが予想に反して彼は途中で止めた言葉を聞きたがっているようだった。
そんな筈ないのに、何勘違いしてるんだろ…。
「ううん…いいの。それより珍しいね?図書室に来るなんて。」
そう、彼の姿は図書室では一度も見たことがない。毎日通っている私ですら見たことがないのだ。珍しいにも程がある。
「別に、俺だって本くらいは読むさ。」
「そ、そうなんだ!どんな作家が好きなの?芥川龍之介?太宰治?司馬竜太郎?」
そこまで言ってからハッと自分がいつの間にかカウンターから身を乗り出していたことに気付く。彼との距離も吐息が重なるくらいになっていた。
驚いて見開かれた彼の瞳に私が写っているのが見えた。ジワジワと顔が熱くなるのを感じる。恥ずかしさで目が潤んでいく、思わず後ろに下がろうとしたとき。
「っ!待てよ!!」
カウンターを軽々と越えてきた彼が私を壁に縫いつけた。
顔の横に彼の腕がある。すぐ近くで吐息を感じる。
思わず下を向いてギュッと目を閉じた。
「…なぁ、上向けよ。」
こんなに彼の声は甘かっただろうか?
「なぁ。」
こんなにも彼は切ない声を出すのだろうか?
「お願いだから、逃げないでくれよ。」
こんなにも彼の身体は熱いのだろうか?
「お願いだから、笑ってくれ。」
恐る恐る顔を上げて彼を見上げる。
私の視線と彼の視線が絡まる。
鼻と鼻がくっつきそうだ。
「俺さ、ずっとお前のこと…。」
彼の最後の言葉は聞こえなかった。
私の出した吐息も声も目線もぜんぶ、彼に食べられた。
お疲れさまでした。塩水ですササッ
自分で書いたくせに自分が吐きそうになるってアカンやろと思いましたが、なんでしょうね、無性にゲロ甘って書きたくなりますね。
拙い文章でしたがお気に召せばと思います。