妖精の復活
アレクシスがまぶしさで目を閉じたあと、再び目を開けると……
女神の手のひらの上で輝く妖精が一人、はばたいていました。
エーデルシュタインです。
髪は元のピンク色になり、虹色の羽もしっかりとついていました。
森の女神がエーデルシュタインの宿る時計を魔法で直したのです。
『森に帰りますよ、エーデルシュタイン』
「待って、お母様!」
目覚めたエーデルシュタインは焦った声で言いました。
「私、まだここにいたいの!」
『あなたは、今でもまだ人間と一緒にいたいと言うのですか? あなたに人間が何をしたか……』
「お母様、私、人間にはいろんな人がいると分かったんです。妖精を捕まえる人間もいれば、妖精を解放する人間もいるわ。優しい人もいれば乱暴な人もいる。たった一人や二人を見て人間を決め付けてはいけないと思うんです」
『森の動物達が、あなたを待っていますよ。あなたがいなければ、動物達には時間が分からないのですから』
それでもエーデルシュタインは引きません。
「それなら一日三回、町の鐘を鳴らすわ。ここに来る時、カミルが教えてくれたんです。城下町の鐘は、みんなに時間を教えてくれるって。森の動物達に聞こえるように、私が大きく大きく鐘を鳴らすわ」
『良いことばかりを教えるのが人間ではありませんよ。あなたはこの先、悪いこと、嫌なことばかりを知ることになるかもしれません』
「そうね。でもお母様、どんなに悪い人間からでも、私は何かを知ることができるわ。何も教えてくれなくても、私には大事なことが分かるわ。それって受け取る側の問題のような気がしません?」
エーデルシュタインは、自信満々の笑顔で言いました。
森の女神はため息をつきました。
『分かりました。あなたの好きになさい』
私のいとし子、と女神はエーデルシュタインに言いました。
『あなたに幸せが訪れるように。いつも見ていますよ』
森の女神はエーデルシュタインを残し、消えました。