森の女神と女神の娘
アレクシスはエーデルシュタインに駆け寄ると、そっと両手で彼女をすくい上げました。
真っ黒な髪。
ほとんど消えてしまった羽。
血の気の失せた顔。
かたく閉じられた瞳。
両手におさまってしまうほど小さい彼女でしたが、アレクシスにとってエーデルシュタインはとても大きな存在になっていました。
「エーデルシュタイン……」
出会ったばかりの頃の、ツンツンした態度も。
戸惑った顔、恥ずかしがる顔、怒った顔、笑う顔とコロコロ変わる表情も。
自分のためにポロポロ落としてくれた小さな涙も。
友達になってほしいと言った姿も。
今のアレクシスには、彼女のすべてが愛おしいと思えるのでした。
『私の娘を隠していたのは、やはり人間だったのですね』
威厳のある声が墓地に響き渡りました。
地下に吹くはずがない爽やかな風と共に、光を纏った女性がふわりと現れました。
エーデルシュタインの母である森の女神です。
森の女神と動物達は、エーデルシュタインが突然いなくなった日から、彼女を探し続けていました。
でも、カミルが城全体に目隠しの魔法をかけていたため、見つけられなかったのです。
カミルが魔力を失ったことで目隠しの魔法が解け、やっと女神がエーデルシュタインを見つけることができました。
アレクシスの手の中のエーデルシュタインを見て、女神はとても怒りました。
『娘をさらっただけでなく、そんな姿にするとは』
女神が手をかざすと、エーデルシュタインは女神の時計ごと宙に浮き上がりました。
一瞬、強い光が地下の墓地を埋め尽くしました。