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謎の少年アレクシス

 エーデルシュタインは城の一角にある塔に閉じ込められ、混乱しました。

 永遠に一緒にいよう、というカミルの言葉はこういう意味だったのでしょうか。

 永遠。限りない時。

 森の中でカミルと過ごした甘い時間が、ずっと続くのだと思っていたのに。

 自分に飽きて豹変してしまったカミルに、エーデルシュタインは戸惑いました。


 エーデルシュタインは、朝から晩まで泣いて過ごしました。

 女神や動物達に何も言わずに森を出たことをとても後悔しました。


 そうして泣き暮らしていたある日、エーデルシュタインの前に10歳くらいの見知らぬ少年が現れました。

「だ、誰?」

 少年はエーデルシュタインを安心させるように笑いました。

「はじめまして、お嬢さん。私はアレクシス。カミルの親戚のものだ」

 少年は、姿に似合わない大人びた話し方でエーデルシュタインに話しかけました。

「……」

 カミルに裏切られたことで疑い深くなったエーデルシュタインは、アレクシスを何も言わずににらみつけました。

「お詫びの言葉を言わせてほしい。カミルが迷惑をかけたね。申し訳ない。今、そこから出してあげよう」

 アレクシスは鳥籠に手を当てると、瞳を閉じて何かを呟きました。

 バチッ!

 電撃のような音がして、彼は驚いたように鳥籠から離れました。

「今回はずいぶんと念入りに魔法をかけたようだ。私では力が足りない。困ったな……」

 エーデルシュタインには少し引っかかる所があり、アレクシスに問いかけました。

「今回は?」

 アレクシスは困った顔をしました。

「カミルがこんな風に……妖精をここに閉じ込めるのは、これが初めてではないんだよ」

 アレクシスの話によると、なんとカミルは今まで何度も妖精をこの部屋に閉じこめてきたらしいのです。

 エーデルシュタインは、ショックで頭がクラクラしました。

「カミルは、綺麗なもの、美しいものが特別好きでね。それらを愛しているのは確かだが、飽きっぽい。妖精や人間には自分と同じように心があることを分かっていないんだ」

 アレクシスはエーデルシュタインと視線を合わせるように地面に膝をつくと、まっすぐ彼女を見て言いました。

「時間はかかるかもしれないけれど、必ず君を助ける。だから、もう少し待っていてほしい」

 エーデルシュタインは考えました。おそらく、カミルが妖精を捕まえて閉じ込めるたび、アレクシスがその妖精達を逃がしていたのでしょう。


 でも、やっぱり信じられないわ。だってカミルと同じ人間ですもの!


 『必ず』なんて、永遠が嘘だったように、この世にあるはずがないのだとエーデルシュタインは思いました。

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