鳥籠に囚われた妖精
その日、カミルはエーデルシュタインを連れ、自分の城に戻りました。
城に来る最中にも、カミルは嬉しそうな顔でエーデルシュタインに城下町を紹介し、また、城の中も隅々まで案内しました。
最後にカミルは、自分の部屋にエーデルシュタインを連れて入りました。
「君のために用意したベッドだよ。いつか君にプレゼントしようと思っていたものだ」
カミルは大きな鳥籠の扉を開けて言いました。
鳥籠の中には、小さなエーデルシュタインにぴったりのサイズの可愛いベッドがありました。
「ごめんね。まさか君と暮らせる日がやってくるなんて思ってなくて、ちゃんとした君の部屋はまだないんだけど……しばらくの間、ここで我慢してくれるかな?」
「構わないわカミル! だって、カミルと同じ部屋で眠ることができるなんて幸せだもの!」
二人は、嬉しげに微笑みあいました。
エーデルシュタインは、愛するカミルのそばに居るだけで、めまいがするほど幸せだったのです。
カミルはそれから毎日、髪を撫でてくれました。手の甲に口付けては微笑んで、甘くくすぐったい言葉を囁いてくれました。
けれどその幸せな時間は、長くは続きませんでした。
だんだんとカミルの関心はエーデルシュタインから離れ、いつしか、エーデルシュタインが呼びかけても適当な返事をするだけで見向きもしなくなりました。
カミルがエーデルシュタインを無視するようになった時、ついにエーデルシュタインは怒りを我慢できなくなりました。
鳥籠から出て森へ帰ろうと思いました。
しかし。
エーデルシュタインは真っ青になりました。
鳥籠の扉には、しっかりと鍵がかけられていたのです。
そうだ。魔法で鳥籠から出ることもできるはず。
そう思ったエーデルシュタインは、魔法を使ってみることにしました。
しかし、鳥籠には封印の魔法がかかっており、エーデルシュタインは魔法が使えませんでした。
エーデルシュタインは、鳥籠に閉じ込められてしまったのです。
「カミル! 私をここから出して!」
何度かエーデルシュタインが叫ぶと、カミルはうるさそうな顔で振り返りました。
「どうして?」
「森へ帰るの!」
これを聞いたカミルは、突然恐ろしい顔になりました。
「約束が違うじゃないか、エイダ」
カミルは鳥籠を乱暴に掴むと、そのまま部屋を出ました。
エーデルシュタインは嫌な予感に震えました。
「どこに行くの?」
「君が逃げないように、誰も近づかない所へ君を隠してしまおう。僕の宝物を飾っておく部屋だ、嬉しいだろう?」
カミルは整った顔に歪んだ笑みを浮かべました。
「世界に二つと無い女神の時計。そして女神そっくりの完成された美貌。君は僕にこそふさわしい」
エーデルシュタインは、絶望と恐怖で何も言うことができません。
こうして、妖精エーデルシュタインは、魔法使いの城に囚われてしまいました。