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1 少年は鍵と共にロンドンへ降り立ち少女は路地から飛び出す

 小学3年の時、爺さんが死んだ。月見里琥嘉。享年85歳、老衰だったそうだ。

 冒険家として有名で世界中を探検して死ぬ三週間前にアマゾンから帰国したばかりで日本で死ねたのは家族としては良かったが本人は冒険の中で死にたいと日々、口にしていたので無念だったろう。

 葬式には世界中から追悼の手紙が届き実際に葬式に参列する為に来日した人もいた。

 新聞にも載ったしニュースでも流れ爺さんが有名人だったのを知った。

小さい頃から爺さんの冒険談を聞きいつかは爺さんと一緒に冒険に出るのが俺の夢だった。


 俺、月見里利姫の夢はもう叶わない。朝、爺さんを起こしにいったら体が冷たく子供ながら死んでいると判ったが爺さんの顔は笑っていたのが印象的だった。

 あの日以来、大好きだった冒険映画も見なくなり特に新しい夢も見つける事も無く高校生になった。

 形見として爺さんがいつも肌身離さず持っていた一本の鍵を貰った。古臭い銀色の鍵で「07」と刻印されている。

 爺さん曰く宝の金庫の鍵の一本だそうで、他にも99種類あるそうだ。

 何となく俺もいつも持ち歩いているので無いと落ち着かないぐらいの愛着を持っているので今、困っている。


 折角の一人海外旅行なのに何でこんな事になっているのやら。


 高校一年の夏休み。

 爺さんの影響か月見里家の人間は皆、旅行が好きだ。年に一度は海外へ行くのだが家族全員というのは珍しい。

 親父はアジア、母さんは北欧、姉さんは南米が好きで個別に旅行している。俺が小学生くらいまでは流石に誰がと一緒に回っていたが今年からは親離れとなり一人で旅にでる事になった。


「最初は日本語が通じるハワイか香港にしておきなさい」


 姉さんにそう言われ香港にしようとしていたが最終的にはイギリスのロンドンになった。というのも爺さんの弟子という人からホームスティに来ないかと誘われたのだ。

 何でも大学の考古学の教授さんで俺が大きくなったら冒険のイロハを教えてくれと生前、爺さんに頼まれていたらしい。

 爺さんの残した冒険手帳や道具を預かっており俺に返したいということらしい。

 正直、冒険家になりたいとは思わない。

 でも、爺さんの遺品には興味がある。

 そんなこんなで初めての海外一人旅はイギリスとなった。


 飛行機で約半日。ロンドンのヒースロー空港までは特に問題なくたどり着いた。

 ヒースロー空港から爺さんの弟子がいるケンブリッジまで電車で二時間ぐらい。直ぐには向かわずロンドンで二泊し観光する予定だ。

 ホテルに荷物を置き、ロンドンの観光名所を回りそろそろ飯にしようかと考えていると路地から金色の物体が飛び出してきた。


残念ながら相手はパンを加えてはいなかったけど。


「さあ、ここに好きな金額を書いて頂戴。あぁ、安心して税金とかもこちらで用意するから安心して。さあ早く!」


 目の前で押し売り(押し買い?)の様に言ってくる自分と同い年ぐらいの金髪の美少女。

 モデル体型(ただし、胸はAカップ無い)で着ている服は何というかドレスの様な白いワンピースだった。目もくらむ程の美少女とはこの少女の事だろう。地面から見上げた姿は美の女神の様にさえ思えた。

 先ほど、この金髪美少女が路地から飛び出してきて衝突し派手に転んだのだかその際に首からぶら下げていた鍵が飛び落ちてしまった。

 件の美少女は優雅に立っており「あら失礼」と鍵を拾ってくれたがそこで動きが止まった。


「まさか、ナンバーズキー?しかもシングルナンバー!ウソ本物だわ!?」


 と意味の解らぬ事を言い出し詰め寄れた。


「だから、これは爺さんの形見だから売れないって。アンタしつこいよ」

もう十回は繰り返したやり取り。

「レディーに対して何という言いぐさなのかしらこの極東の野蛮人は!」

「アンタこそ酷いわ!」

 最初は優雅に煌びやかに話していた少女だが徐々に粗暴になっていく。

 日本語が話せるというかペラペラだ。日本語を使い器用に怒っている。

「アンタ、アンタと本当にもう!!私にはアリア=リスコットという名があるのです!公爵の位を持つリスコット家の次期当主に対して無礼千万ですわ!」

「要らない自己紹介ありがと!!俺の名前は月見里利姫です!日本人で一般人の学生です。互いに自己紹介も済んだしサヨウナラ!良い旅を」

「お待ちなさい、貴方、それが何の鍵が解っておりますの?貴方みたいな一般人が持つべきモノではありまんのよ」

 貴族なのは間違いなさそうだ。こんな偉そうな口調の美少女なんて漫画やアニメにしか存在しないと思っていました。ホント旅っていろんな事を教えてくれるわ。

「宝の金庫の鍵だろ?アンタ貴族なら金持ちだろうに。キリスト教だと【強欲】は罪じゃなかったっけ?」

 そう言うとリスコットさんとやらは意外そうな顔をされた。

「そうゲームの参加者でしたの。てっきり一般人かと思いましたわ。それでは正式にゲームマッチの申し込みをしますわ!」

 話が早く済みますわ。

 そう言うとリスコットさんは胸元から一本の鍵を取り出す。金色の鍵で「66」の刻印がされていた。俺の鍵と似ている?


「開けカオスの扉、我、66の所有者アリア=リスコットが宣言する!汝、7の所有者ツキミサト=トシキとのゲームを開始する!」


 そう彼女が宣言すると金色の鍵が輝き始めた。

「さあ、ゲームの始まりですわよ。どちらかが互いの鍵を手に入れた方が勝ちですわ!」

 その時、鍵が変化し始めた。

 手のひらに収まるぐらいの大きさだったのが50センチぐらいに伸び、形も鍵というより鍵型の杖みたいだ。先端に赤い宝珠の様な物が取り付けられている。

「シングルナンバーの実力見せてもらいますわよ!」

そう言いながら鍵先を突き付けてくる彼女。何だか良くわからないので取り合えず鍵を奪ってみた。


「はい?」


 目の前の少女から間抜けな声を上げる。

 普段なら絶対にそんな顔をしないだろうという顔だ。

「はい俺の勝ち」

「えっ?えっ!?」

「爺さんから相手のスキを突くコツを教わった。始まりと終わりがスキが出来やすいだとさ」

 別に相手の命をとるわけではない。殺気を出していたら彼女も反応出来たはず。しかし、手の届く範囲で獲物が大きくなる。それを顔に付き出されたのだ。楽勝に決まっている。

 それに自慢だか小中と剣道の全国大会で上位入賞した事もある。相手の虚を突くのは得意なのだ。

とそうこうしていると知らない声が割り込んできた。

「ゲーム終了です。66の所有者は変更になります」

「鍵が喋った!?」

「お持ちなさい!ルル!」

「ゲーム結果に異議を挟みますか?その場合、グランドマスターに検証してもらうということになりますがよろしいのですか?」

「うぐっ」

「という事でよろしいですね。改めてマスターの変更を行います。マスタートシキ、以後、末永くご哀願願います」


 こうして何だか解らないまま俺はオカルトの世界に入り込んでのだ。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

月見里 利姫 TUKIMISATO TOSHIKI

鍵 2本(№07は未覚醒)

スキル 【剣道二段】【なんちゃて英会話】


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