複雑な家庭環境
普通に高校生してた16歳の夏に父親が9歳の女の子を連れて現れた。
父親の隠し子だった。
その子の母親である父の愛人だった人が亡くなって、やむなく引き取ることになった。
母親は最初激怒していたが、一応育てることに。
でも父親は普段から出張続きで不在なことが多く、妹はすごく肩身が狭そうだった。
そしてとうとう俺が17歳の時に父親が全く帰ってこなくなった。
新しい愛人とどっかに行ってしまった。
それから母親と俺と妹のさらに殺伐とした生活が始まった。
特に俺が学校やバイトで家を空けてる時は妹はかなり辛かったらしい。
俺は大学へ進学したけど今年の正月、突然父親から連絡があり、破産手続きをしたとのこと。
そこで正式に親は離婚。もちろん家も競売にかけられ出ていく事になった。
俺はそれまで貯めていた僅かな貯金を元に一人暮らしを決意した。
そこで問題になったのは半分しか血の繋がっていない妹の若菜。
母親とは全く血が繋がっておらず、父親も行方不明。
ただ、妹はまだ中学生。
しかし、妹がどうしても俺と住みたいと懇願されて仕方なく俺と一緒に住むことになった。
新しい住まいで、妹の転校の手続きを済ませ、早4ヶ月。
妹は俺の健康を気遣い、毎日ご飯を作ってくれている。
しかし、生活サイクルが真逆な為、会話をすることはほとんどない。
ただ、そんな環境にほっとしている自分もいる。
俺は兄としての自覚は殆どない。正直面倒に思うこともある。
若菜はそんな俺の心境を察してか、なるべく自分で何でもやろうとする。
俺は生活費として6万円を渡し、やりくりを頼んでいる。
気づけば、俺は毎日ただ仕事だけをしていた。
夕方に出勤し、朝方帰る。シャワーを浴び、リビングへ行くと、前日の夜、妹が作ってくれてた食事が置いてある。
それを食べ、寝る。
起きるとすでに昼過ぎで、妹は学校の為、すでにいない。
テーブルには妹が朝作ったであろう簡単な食事がテーブルか冷蔵庫の中に置いてあり、それを食べる。
夕方、妹が帰ってくる前に家を出る。出勤時間にはまだ早いため、神社の境内で時間を潰す。
そしてまた夜の仕事を繰り返す。
何の色もない、人との関わり合いが希薄な日常を繰り返す。
しかし、俺にとってそれはとても穏やかな日々に感じられた。
実家にいた時は、家庭内がピリピリと張りつめ、休まる事がなかった。
今はこの境内での一時だけでも何も感じなくて済むことが救いだった。