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一人ぼっちの誕生日

その境内はなぜか落ち着いた。


間もなく初夏が訪れる5月の終わりの夕方、繁華街の喧騒とは無縁の住宅街にぽつんと佇む神社。

小さい神社の割に長い参拝道の石畳みの先に人に忘れられたようにある境内。

その裏手には少しだけスペースがあり、木でできたベンチが一つだけ。そこに座りただ景色を眺める。

今は目の前の紫陽花が静けさの中でようやく花を咲かせはじめていた。


俺は筑波海斗。今日で20歳になった。


高校時代はそれなりに友達もいたが、いまは全く連絡を取っていない。

誕生日を祝ってくれるのはこの淡い紫色の花だけだ。


「にゃぁ~」


そうだ、お前もいたな。最近、出てこないからすっかり忘れていた。

いつの間に現れた猫が、となりで俺の手に鼻先をこすり付けじゃれてくる。

猫をなでながらつぶやく。


「傷はだいぶよくなったみだいだな。もういじめられてないのか?」


その猫の首には噛みつかれた様な傷跡がかろうじて見える。

猫はじっと俺を見つめた後、くつろぐように寝転んで、くるくると喉をならしている。


「さて、そろそろ行くかな」


俺は重い腰を上げ、夜の住人へと戻る。そして今日も一日が始まる。


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