表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅鬼 -akaoni-  作者: アオ
第一章 出逢い
1/1

鬼ヶ崎

───蝉の声が聞こえる。




僕のぼやけた視界の中に見えるのは、公園のブランコに座ったままうなだれる少年の姿…。紛れもない、幼い頃の僕自身。


少年の長く伸びた黒い前髪の所為で、その表情はこちらからは伺えない。ただ、前髪の隙間から見えた涙から、なんとなく、彼がどんな表情をしているのかは想像できた。




忘れもしない。




小学校二年生の真夏日に、僕は…。

僕は、独りぼっちになった。




少年の僕の姿は、今にも消えてしまいそうなくらいちっぽけで、その心に抱えた苦しみを想像しただけで、胸が酷く痛んだ。僕はただ、顔を歪ませることしかできず、少年の僕を見つめる。




これは、夢なのか…?

夢だとしたら、ただ早く覚めてほしいと願うだけだった。ぼやけた視界の中で、少年の僕がふと、顔を上げた。そして、こちらを見た…。




「たす、けて…」




…っ。


大きな瞳から、ポロリと涙をこぼしながら、少年の僕は確かにそう言った。僕は、声を出すことも、動くこともできず、唇をひたすら噛み締めた。


そして意識が、遠退いていった…。




「っ…ん…」




頭がぼんやりする。


車のエンジン音と、何かを話す人の声…。




───ああ、そうだった。

だんだんはっきりしていく意識の中で、僕は思い出す。車の窓から見える景色は、紛れもなく10年前、僕が住んでいた鬼ヶ崎の景色。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ