水の神性について。
私なりのクトゥルフ神話の物語
水の神性に於いて最も不明確となっているものは、A・ダーレス氏が水の主神と提唱した「クトゥルフ」は海水によって力を封じられているとされていることである。
「クトゥルフ」は一般的に三億五千万年前に「ガタノソア」、「ユトグタ」、「ゾス=オムモグ」、「クティーラ」の四人の子等と共にゾス星系より、地球に飛来したといわれており、「古のもの」との戦争の末、ムー大陸を領土として獲得し、後に信仰を集めたとされる。地球本来の神といえる「父なるダゴン」と「母なるハイドラ」に忠誠を誓わせ、二人の子供である騎士「オトゥーム」達を近衛兵とした。「クトゥルフ」はその力をもって、現在の「深きものども」の祖先となる者や落とし子を生み出しながら統治を続けた。
しかし、三億年前に長子である「ガタノソア」の反乱、同じく起こった「旧神」との戦争により、ルルイエは海の底に沈んだ。
以上はミスカトニック大学の教授が提唱している説である。
私は此処に一つ新たな説を追加したい。
私が注目したのは『ガタノソアの反乱』の部分である。この一節だけを見れば、よくある歴史的事実の一つとも思えるが、私はそうは思わない。私はこう考えた、『彼らもまた、成長するのではないか』と。地球に飛来した時、四人の子等はまだ幼く、力も弱かった。しかし、地球での日々で成長し力を増していった。
そして、五千年の後に長子である「ガタノソア」が完全に成長した時、親である「クトゥルフ」と比べでも、その実力は負けるとも劣らぬモノとなっており、父を倒し、地球に覇を唱えようとしたのではないだろうか。
結果、「クトゥルフ」の陣営は「クトゥルフ」が率いる旧体制派と、「ガタノソア」が率いる新体制派に二分されたのである。
「クトゥルフ」の子の「ユトグタ」「ゾス=オムモグ」「クティーラ」や古くから仕えていた「ダゴン」や「ハイドラ」、大半の「オトゥーム」は旧体制派に加わり、比較的若く荒々しいモノ達は新体制派に加わり激しい戦いを繰り広げた。
戦いの末、「ガタノソア」率いる新体制派が勝利し、「クトゥルフ」は激しく消耗し、この期を逃すまいと襲来した怨敵、大帝「ノーデンス」により「クトゥルフ」はルルイエを含むムー大陸の一部と共に海の底に封印されたのである。
勝利した新体制派は「ノーデンス」にすり寄り当面の平和を手に入れ、地上を手に入れんとした。しかし、粘り強い抵抗に遭い一億六千万年前に襲来した「ミ=ゴ」と結託した「ノーデンス」の手によりヤディス=ゴー山の山頂の要塞に幽閉され、十七万五千年前にムー大陸の沈没と共に完全に封印された。
ここまでが表の歴史で語られる事であるが、海の底に封印された影響により眠りに着きながらも、慣れない水中に身体を適応させながら、力を蓄えているのである。次男「ユトグタ」、三男「ゾス=オムモグ」、長女「クティーラ」は完全に成長をしていなかったことも幸いし、三億年経過した現在ではほぼ水中生活に適応し、体構造を変化させていると見ていいだろう。
しかし、親である「クトゥルフ」はそうはいかなかったのである。体構造をある程度自由にできるとはいえ、制約もある。よって緩やかに、千年一万年単位で変化させているのだ。
そして、ルルイエが浮上し「クトゥルフ」が復活するとされている「星辰の揃う日」というのは、「クトゥルフ」が水中に完全に適応し、水陸両生となる日である。
復活した「クトゥルフ」は祭司たるモノとして、地球に封印された「旧支配者」達を解放し、彼ら彼女らを率いて、地球を舞台にして「旧神」と最終戦争を始めるであろう。
以上が私の水の神性についての考察である。