表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
居候と猫の彼女  作者: 小高まあな
第一幕 居候猫と新たなる居候
4/28

1−4

「良い子だねー、マオちゃん」

 その姿を見送ると、京介が呟いた。

「……それで、本当はお前、何しに来たんだよ?」

 マオがいなくなったことで、幾分語気を強めて尋ねる。

「言ったじゃん、色々あったんだって。それで皆に会おうと思って」

 京介は笑ったまま答える。

「あ、でも」

 そして笑ったまま続けた。

「隆二のところを一番最後にしたのも、泊めてくれっていったのも、隆二が心配だったからだよ」

「なんで」

 なんでお前に心配されなきゃいけないんだ。

「エミリちゃんに聞いてさ。また女の子と住んでるって。また、傷つくんじゃないかって隆二が」

 気づいたら、にこにこ笑ったままの京介の胸ぐらを掴んでいた。

「乱暴だなー」

 あっけらかんと京介が呟く。

「余計なお世話だ。京介には関係ないだろ」

 それだけ告げると、手を離す。少しよろけたものの、京介は小さく微笑んでいた。

「関係あるんだなぁ、これが」

「何がだ」

「茜ちゃんのこと、隆二がどう思って」

「いい加減にしろっ!」

 声が大きくなる。

 ここにマオがいなくてよかった。激昂した頭のどこかで、冷静にそんなことを思った。

「次に茜のこと口にしたら追い出す」

「はいはい」

 おどけたように京介は両手を軽く上にあげた。

「悪かったって。とりあえずさ、なんか飯食おうよ」

「別に俺は食べる習慣ない」

 まだむしゃくしゃしたまま、斬り捨てる。

「でも、食べること嫌いじゃないだろ? しばらく料理人のまねごとしてたから、なかなか上手いよ、俺」

 そうして京介は冷蔵庫を開ける。

「うん、思ったとおりなんにもないね」

「……悪かったな」

「なんか適当に作るよ。あ、ちゃんと俺が出すからさ、材料費。食えないものとか、ないよな」

 いつもの調子で問われた言葉に、小さく頷く。

「うん、じゃあ、そういうことで」

 言うと、さっさと京介は部屋から出て行った。当たり前のように。

 ドアが閉まる音を聞きながら、椅子に腰を下ろす。

「……なんだっていうんだよ」

 呟いた言葉は、誰もいない部屋に溶けていった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ