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居候と猫の彼女  作者: 小高まあな
第三幕 彼女が拾った猫との生活
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20/28

4−10

 茜の家を出て、そこから一目散に走って逃げた。はやくどこか遠いところに行きたかった。ずっとずっと走って逃げて、かなり離れたところに行き、そこでしばらく一人で暮らした。一人きりの空虚な生活だった。

 一度、心が落ちついた時があった。帰ろうと、思ったことがあった。少し情けない顔をして帰ったら、茜は仕方ないわねと笑って受け入れてくれる、そんな気がした。

 離れてわかった。自分が如何に酷いことをしたのかを。茜の心を傷つけたのかを。自分にはやはり茜が必要だと。彼女を看取ることは、きっと心臓を抉られるような思いがすることだろうけれども、自分の知らないところで彼女がいなくなるよりずっといい。そんなことになったら自分はきっと、悔やんでも悔やみきれないぐらい後悔する。少し離れたことで、そう、思えるようになった。

 だから、帰ろう。

 そうしてまた、あの村に戻った隆二を待っていたのは、

「……隆二兄ちゃん?」

 少し遠くで、呟かれた言葉だった。振り返る。遠くにこちらを伺う精悍な顔つきの男が一人。右手で小さな女の子の手をひいている。その隣には、赤子を連れた女性もいた。

「太郎さん、お知り合い?」

「おとーさん?」

「ん、いや、似てるけど。もう何年も経ってるのに変わってないから別人だよね。それに」

 本来なら聞こえないような会話も、超人より優れた五官を持つ隆二には届いてしまった。

「茜姉ちゃんを見捨てたあの人が、戻ってくるわけない」

 そうして太郎は、小さな声で呟いた。

「一人ぼっちで死んじゃって。可哀想に」

 それを聞いた瞬間、きびすを返して村から逃げた。

 遅かった。遅かったのだ。

 待っています。

 彼女の言葉が、耳元で聞こえた気がする。

「……ごめん、茜、ごめん」

 嘘をついて、帰らなくて、約束を守れなくて、一人にして。身勝手で。卑怯で。

「ごめんなさいっ」

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