神殿にて③
アルバス視点ではありません。シリアス傾向
なぜ、彼が選ばれたのか。
この感情は何だろうか。
怒り。悲しみ。困惑。それとも。
どうしても関わらざるを得ないのに
そのほとんどが私の手に余る。
最悪の想像を常にしておかなければならない。
歯車を狂わせたのは私自身なのだから。
「アビー」
扉を開けて、夫が私を呼ぶ。その声は暗い。暗く濁っている。
その暗さに、私は身を竦める。
「愛しているよ」
憐れな男だ、と思う。彼は私に近づき、そっと肩を抱き寄せた。
彼の伸ばした前髪がわたしの鼻をくすぐって、むずがゆい。
不快ではない。憐れだ。
抱きしめる力にぐっ、と力が入る。
「だから、あの男とは話さないでくれ」
今にも泣き出しそうな声音。そこで私はピンとくる。
夫の思惑ではない。
夫ならそもそも、彼を近づけないだろう。
それに、今のこの様子なら、彼が選ばれたことを知りはしないだろう。
では誰が、彼を選んだのか。
……ビアズリー。
やるせない。これは、どこからどこまでが、誰の思惑なのだろう。
『女神の名のもとに、正しき者よ、汝の成すべきことを成せ。
女神よ、願わくば風を起こし、彼の者が傷つく時にはその御手で傷を癒し給え。
悪意ある者を退け、善なる者を近づけ、その行く先を護り給え』
この祈りは届くのだろうか。
私が祈ったとしても。