四日目 空から降ってきた話
皆は、忘れられない出来事ってある?
オレにはある。数年前に、一生忘れないなって思える出会いがあったんだ。
*
その日はよく晴れた晴天で、ジッとしていても汗が垂れ流れる程暑い日だった。だから、早く帰りたくて走って帰っていた。
ふと、人の声が聞こえた気がして、上を向いたんだ。それがきっと、分岐点だった。
「……ぇ?」
上から人が降ってきていた。女の子だった。
オレより年上そうな、黒髪の。
女の子は公園の森の中に落ちていったから、その時のオレは急いで駆け寄ったんだ。落ちた場所は木が密集していたようで、ちょっと高い所に引っかかってるだけだった。下に降りようとしていた彼女を、オレは下ろすことを手伝ったんだ。
「手伝ってくれて感謝する、ありがとう」
「ど、どういたしまして…?」
「……では、失礼させ⸺」
「⸺ま、まって! 君、どうして空から降ってきたの!? 怪我してない?」
当時のオレは沢山の質問をした。だけど女の子はオレの質問も何一つ答えず、オレの前から立ち去ろうとしていた。
ここで逃しては、オレのガキ大将としてのプライドが許さない。当時のオレはそう思ったんだ。今思い出しても、ガキ大将では無かったんだけど。
とにかくその時のオレは、女の子の足を止めたくて手首を掴んだり足にしがみついたり……十分くらい格闘してから、女の子は諦めたように息を吐いてこう言った。
「私の負けだ……好きに連れてけ」
*
「おい弟、何見てるんだ?」
「あ、姉貴。掃除してたら、姉貴とあった頃のアルバム見つけてな。それ見てた」
あの日出会った女の子は、オレの姉貴となった。
今でも、空から降ってきた理由を一切語らないが、オレらの親は知ってるらしい。姉貴が破天荒な理由を聞いたらそんなことを零していた。いや、家族に迷惑掛かってないからって破天荒は怒りなよ。
「ほーん……あぁ、そうだ迅。明日って父達って居なかったよな?」
「そうだな……それが何?」
「明日彼氏連れてくるから、私の部屋近づくなよ」
「……彼氏? 男には命、女には心の恐怖を与える姉貴が?」




