七日目 修正点は自分で修正
あの瞬間から、道連れとしてアグゥーンと共に長い長い暗闇の中を歩き続けていた。それは、永久醒めることの無い時間だった筈なのに、俺は一人で目が醒めた。どういうことだ? 俺は一体………何故目覚めたんだ?
『⸺おはようございます、主。一年と二ヶ月振りの人工的な光はいかがですか?』
「アルケ…? 俺は、暗闇の中を永遠を彷徨う筈じゃ……?」
⸺待て。此処は、俺の故郷にある隠れた研究所で、この場所は俺以外にはイグサしか知らない筈……どうして此処で、アルケの声がするんだ?
『疑問の答えは、お隣にございます』
隣……? 俺の隣には⸺。
「⸺イグ、サ? どうし、たんだよ……そんなに透けて…耳鳴りが、こんなに聞こえて…」
「ぁ…クラーク。良かった、成功した…」
「成、功……? イグサ、お前が何かしたのか?!」
ノイズ音と映像の様にブレる身体をした、イグサがいた。イグサを抱える。確かにそこには身体がある。しかし、ノイズの音とブレる身体は余計に強くなるばかり。イグサ、どうしてっ……どうやって…?!
『⸺彼女は主の世界に残った存在を掻き集め、足りない分を自身の存在で補いました。主の為に』
「その結果が、コレか? こんなの、俺だって分かる。コレは、”命の交換”だ! 俺なんかに…! 俺なんかにやるもんじゃない!!!」
腕に力が入る。俺は、俺はっ……。
「何かって、言うな。クラークは、私を助けてくれた。その、お礼だからな……それに、元々私は居ないんだ。⸺強制力なんて、笑っちゃうな。とんだサボり魔じゃないか」
「もういい、イグサ。俺にこれ以上、与えないでくれよ……俺、如何すればイグサを助けられる? 俺はまだ、返せていないんだ」
強制力ってなんだよ、そんなモン関係ねぇよ。俺はお前に、言いたいことがあるんだよ。言えなかった事があるんだよ。やりたいことが、あるんだよ……。
「⸺ぁ、そうだ。言ってなかったな……ゴメンな」
「は? イグサ、こんな時に何言って……」
「私は、クラークが世界を救いに行くって言った時、それを否定して、その手を取らなかった。理由は、子供っぽいが……見たくなかったんだ。私のクラークが、皆のクラークになる所を」
「イグ、サ。それ、って……」
それってまるで、俺の事を……。
イグサの左手が、俺の頬に添えられ撫でられる。
「それと、ありがとう。この世界で独りぼっちだった、九重依草の友達になってくれて。お陰で私、自分の事が嫌いじゃなくなった。それに……最期まで依草と呼んでくれたのは、クラークで良かったよ」
「なぁイグサ、俺っ…俺はっ、お前のことを愛し⸺」
頬にあった左手が、俺の口の前で人差し指を立てている。どうしてだ!? 言わせてくれ、言わせてくれよ!
「⸺その言葉は、私には向けるべきじゃない。想うべきは、私じゃないんだよ。………でも、これだけは私が盗ろう」
「何、を………⸺っ!?」
イグサが急に身体を起こし顔が近付いたと思ったら、唇同士が触れ合う一瞬のキス。感触の後に瞬きをすると、そこにはもうイグサは居なかった。
俺は、声一つ出さず泣き続けた。声を出せば、更に辛くなると分かっていたから。
⸺どれ程の間、そうしていたのだろう。いつの間にか、俺を復活させる為に起動させていたであろう研究所の電気が消えていた。
「自分だけ、満足して。俺の事に気付かないフリをして……なぁアルケ、ズルいと思わないか?」
『えぇ、本当に。主……彼女が搭乗している間に、彼女のメモリーを取得しております。彼女の本心を知る為に取得し続けていた記録ですが……どうしますか?』
「決まってる。見せろアルケ」
『承知いたしました。それでは、コックピット内に転送いたします』




