一日目 最低から出会う
どうしようもないとは、今のこの状況の事を言うのだろう。親は無理心中で、姉貴はクズ男から逃げるために首を吊り、弟は暴行罪で少年院行きとなった。
そしてとうとう、兄妹の中で一番マトモだと思っていた長男である兄貴が未成年に手を出して捕まった。
辛うじて繋がっていた両親双方の親戚との縁も切れた。当然だ、俺も当事者じゃなければ縁を切る。結局、それが人間という事なのだろう。
こんな事があっても、時間は進むし他人たちの日常は続く。
今まで以上に重い身体をなんとか動かし歩みを進める。
「⸺あっ、ねぇアイツ……」
「知ってる! ………でしょ?」
あぁ、もう学校内に噂が広がっているのか。しかし仕方が無い、兄貴が手を出したのはこの学校の新入生だったのだから。
バカ兄貴め、肉欲に負けやがって。
やっぱり、家族ってモンは馬鹿馬鹿しいな。
*
「なぁなぁ久澄ちゃん、ちょっと一緒に来ない? いいコトあるよ?」
昼休みに入って早々、俺の肩に馴れ馴れしく腕を回し、挙句に人の脂肪を揉みながらクズの提案を囁く愚か者を振り払い、教室から逃げるように離れる。
今は雨が降っている……この天気なら、屋上付近には誰も居ないだろう。そう思い、屋上へと続く階段を登った先で、嫌なモノを見た。
一人の男が、複数人に暴力を受けている。
ヤバイ。そう思った時にはもう遅かった。先程の愚か者が後ろにいる事にも気付かず、捕まった。
暴力を振るっていた中でも、リーダー格の男が俺の方へと近付く。
「先輩! コイツでしょう? 前々から言ってた女って」
「おぉ、犬二。偉いぞ、やっぱりお前は従順な犬だ」
「先輩…♡」
……そういう薔薇は、人の前でやんないで欲しい。鬱陶しいから。
「しかし、見れば見るほどいい面をしているな。嫉妬しそうだよ、久澄」
「………」




