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そして、ムスビは現在、騎士団の修練場にいた。


なぜかって?


そんなの俺にもわかんない。


なんか王や大臣、その他が困惑しているところに、さっきまで顔を青くしていた人物の1人である近衛騎士団長がマイペースにしゃしゃり出てきて…。


「シオン様が信用できるかどうかは、剣を合わせればわかります。キリッ!」


…などと言ったので、彼らがそれを信用したのか、はたまた思考のための時間稼ぎだったのかはわからないが、このようなところへとムスビは足を伸ばすことになってしまった。


さてさて、ここで龍脈というものについて触れておこう。


龍脈というものは、まるで水脈のように地中に張り巡らせられた魔力の流れのことである。


これは大地に張り巡らせられているということからもわかるように強大な力であり、それを利用することも可能だ。


昔の国は、その力を利用できる中心地に首都、それから王城を置き、その力を利用して、さらなる繁栄を極めたらしい。


現在もそれぞれの王家というか王がそれを利用しきれているかは疑問だが、力自体を利用しているのは、情報通の間では周知のことであり、それを狙って戦争になることさえある。



実のところ、この他にも龍脈には特性があり、むしろムスビとしてはそちらが本命なのだが、別段人に話すようなことでもないので、今は黙っておく。


まあ、龍脈というのは、いわゆる国家最大の機密とでもいいのだろうか…。


さて、そろそろ思考の海から脱することとしよう。


ムスビは剣を合わせるなどと言っていた近衛騎士団長ディスクがどう見ても、槍であるそれを装備していることに内心でツッコミつつ、しっかりと彼を見据えた。


「……それでは私から行かせてもらおう。」


そう口にするなり、ディスクは真っ直ぐこちらへと向かって来る。


フェイントなどなく、ただただ真っ直ぐと。


それは騎士団長という存在にしては、稚拙に見えるかも知れない。


「…早いな。」


そう…ほんの僅かな間にムスビとの距離を詰め、槍の射程へと辿り着くなどという離れ業をやってのけさえしなければ…。


「一点突破っ!!」


そのままディスクは踏み込み、ムスビに向かって、槍を突き出した。


狙いは槍の力のロスを減らすため、上に突き上げるでもなく、振り下ろすでもなく真っ直ぐなところ、ムスビで言うなら、腹のあたり。


確かにこれならば、下手にフェイントなどを加え、時間やエネルギーのロスをするよりも、戦闘下でより大きな成果を得られるに違いない。


「ウオォォォーーーーッ!!!」


力強く振り抜くなり、砂煙を巻き上がった。


「……やった…のか…。」


誰かが呟く。


それはいわゆる生存フラグというやつか…。


そして今回もまたそのご多分に漏れない。


一陣の風が吹き、砂ぼこりが晴れた。


…しかし、それは一本の糸によって遮られていたのだ。


「……糸?」


一本の糸が絡みつくようにして、ランスを止めていた。


「これで終わりでいいか?」


「……。」


ディスクは動きを止めて、固まっている。


「フッ…フハハハッ!!流石……流石ですね、ムスビ殿!!Sランクに遠慮無用…そういうことですよね!ね!!」


ディスクは笑う。本当に楽しそうに、笑った。



そこからは槍の嵐。


突きに横薙ぎ。


最初の最大威力の一撃が通じないと見るや、今度はタイミングをずらしたり、テンポを変えたり、体術で蹴りなんかを混ぜていく。


「…あんた、本当に騎士団長か?」


「はははっ♪普段はこんな戦いなんてしませんよっ!!」


と、会話をしながら、突き。


そうして、ディスクはじりじりと自分の体力を削り、最後の一撃を放つと、大の字になって空を仰ぐ。


「…はぁ…ここまで…かな…。あ〜あ、もっとやりたかったな…。」


それはとても満足げで、晴れやかであり、明らかに自身の欲求に素直に従った結果だと、ようやく誰の目にもわかる形で示された。


「…父上。」


「……それで、近衛騎士団長、判定は?」


と、王がディスクに尋ねた。


「あっ…えっと……コホン。そうですね…。」


彼は身体を起こすと、顎に手を当て、目を閉じ…しばらくして、神妙そうに頷いた。


「…私が王ならすぐに国を明け渡すなりして逃げますね。」


「「「……。」」」


その言葉に見ていた者の半数は目を見開き、残りの彼をよく知る人物たちは白けたような視線を彼へと送っていた。


「……はぁ…つまらんぞ。そのジョーク。」


「あはは、まあ、その…なんですか…。そういう心持ちになるほどと言うことですよ。」


ディスクのその自らをフォローする言葉に、彼のことをよく知らない人物たちは単なる例え間違えだと思い、その他、特に彼の娘エリスと王、大臣はその視線をさらに白けさせていた。


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