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魔王討伐の手柄を奪われてすぐに大魔王が現れたけど、俺は知らない  作者: 無味あり


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2

カタカタカタ。


多くの人間たちが行き交う道。ここはその道の中でもこの車輪の音と、規則正しい馬の足音が定番となった大通り。


その大通りの中央をたくさんの馬車が行く。


今は各国の御偉いさんや、この国が発展するだろうと見越す商人たち。その多くが王都の奥へ奥へと希望に胸を膨らませて進み…そして、ほとんどの夢破れ去った、それに上手く行かなかった者たち、諦めをさとった者たちはその規則正しさにほんの僅かなノイズを混ぜる。


帰り道、その悲壮感を漂わせ…。


そんな馬車群に埋もれる一団にそれはあった。


人数は20人ほど、そのほとんどが女性というそれ。


その皆々が暗い顔、それでいてため息がちで…。


比較的豪奢な馬車からは他のそれとは一線画すほどにどんよりとした雰囲気が滲み出ていた。



「…ぐすんっ…ヒルドリン王子…。」


しくしく。


その中でお姫様は泣いていた。


「……(あのバカ王子め…姫なんとお労しい…。)。」


中にいたのは、それともう1人の人物は軽装の女騎士。


彼女は姫の幼馴染のエリス。


彼女を玉のように大事にしていた彼女もまた、王子への怒りとそれに悲しむ姫の思いへの同調半分半分といった形で元気に乏しかった。


さて、この1団に何があったのか?



単的に言おう。



()()()()()()()()()()()


もちろん、その相手はこの国の王子。



彼女の国リース王国はこのアーキテクト国に隣り合う、この国と比較して一回り小さな国。国の大きさも、財力も、そして武力さえも…。


確かにこの婚約は少しばかり身の丈に合わない話だったように思う。


しかしながら、これはこの国の先王の時代からの婚約であり、彼女は幼少の頃よりヒルドリンの妻となるのだと言い聞かされ、そしてそれを胸に彼女はこれまで頑張ってきた。


作法教師に厳しくされても、泣きながら…。


座学の教師に頭を抱えられても、泣きながら…。


周りに鈍臭いと陰口を叩かれても、泣きながら…。


………と、とにかく泣きながら()色々なことを頑張って、最低限度は王家の者としてのそれらを姫は身につけたのだ。


それをあんな言葉で片づけるとは…。


『僕はもう英雄なんだ。悪いけど、これから色んな美人や高貴なる姫君たちと仲良くなる僕に君は要らないかな?だって君、なんか鈍臭いし。』


思い出しても、歯軋りする。


…どれだけ馬鹿にすれば気が済むのだ、と。


姫への同情よりも怒りの比率が大きくなってきたエリス。


本当ならこの怒りに身を任せるなり、再び姫に同情するなりしていたいところなのだが、彼女には未だすることがあった。


…はぁ…王にはどうお伝えしたものか…。


王、いや、王妃、いやいや貴族に民たち…母国の全ての人々が今回の報告を楽しみにしている。


勇者パーティーが魔王を討伐した時は、他の国など見てはいないので正確にはわからないが、アーキテクト国の次くらいには大盛り上がり。自分たちの国がその偉業を成し遂げたのだというくらい浮かれていた。


エリス自身、彼女の記憶にある限り最も笑顔、喜びに満ちた時間だったように思う。



さて、そして、エリスはこれから何をしに行く?



「……。」


答えは簡単。


……()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだ。



「しくしくしくしく。」



姫はずっとこの調子。


おそらく……いや、間違いなくエリスがそのことを報告せねばならないだろう。その国の時は幾ばくほど止まるだろう?



時折そんなことが思い出され、チラつき、完全に怒りや悲しみの感情に浸りきれないためか、中々その沼から出てくることさえできず、なんとも言いようのない時間を、エリスはその鬱屈とした狭い空間の中で過ごしていた。



「ちょっと邪魔するよ。」


…この声が徐行とはいえ、走行中の馬車の中に響くまでは。


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