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11/4〜11/10

11/4


やってしまった。

だって、菫ちゃんを馬鹿にされて我慢できなかったんだもん。

玻璃にめちゃくちゃ怒られたけど、あれは仕方がないことだよね。


今日バイトが終わって、やけ食いできるようにとケーキを5個も買って菫ちゃんに会いに行った。

菫ちゃんも「会えるなら会いたい」って言ってくれたから、私が全部受け止めてみせると意気込みながら向かった。


そうしたら、菫ちゃんの家が見えてきたところで、怪しい人影も見えた。

というより、1人は菫ちゃんで、もう1人は見たこともない綺麗な女の子だった。


「友達かなぁ」と呑気に近づいたら、突然玻璃が現れた。

真横に! 瞬間移動でもしたのかと思うほど、本当に突然現れた!


驚いていると、「これ以上近づくな。あれが桃簾だ」と言われて、さらに目を剥いた。


ってことはだ。

今、菫ちゃんはまた文句を言われているのかと理解して、大声で叫んだ。

走ったらきっと玻璃に止められる。ならば、叫んでこっちに気づいてもらえばいいという浅はかな考えを思いついたから。


まぁ、だから案の定、玻璃にこっぴどく怒られたんだけどね。


って、それは置いておこう。

私の心配をしてくれた感謝はしてるし、お礼も伝えたからね。

呆れながらも微笑んでくれた玻璃とは仲直り済みだからね。


でだ。

もう止めることはできなくなった玻璃を置いて、菫ちゃんの前まで駆けていった。

菫ちゃんも桃簾って人も目を丸くしてたけど関係ない。

親友の菫ちゃんを虐める奴は許さない。


だから、「琥珀くんに相手にもされないモブが、琥珀くんに愛されている菫ちゃんに何の用?」って言ってやった。

盛大に煽ってやった。

めっちゃ睨まれたから、睨み返してやった。


「私は婚約者よ。奪おうとするドブネズミに文句くらい言うわよ」と鼻で笑われたので、「そんな妄想いらないから。まだ正式に結んでいないんだから赤の他人じゃない。というか、琥珀くんに好かれてもいないから家を持ち出すとかダッサイから。あ、でも、それしか取り柄がないから家の力に縋り付くしかないのか。惨めね」って高笑いしながら返してやった。


桃簾から殺気を感じたけど、どうせ殴られるならとことん煽ってやると思って仰け反ってもやった。


で、私は見えない拳に殴られそうだったわけだけど、玻璃が止めてくれて、尚且つ、相手女の子なのに「俺の女に何してんだ」って殴り返していた。


助けてくれた感謝や、拳を止めてくれた尊敬もあったけど、女の子を戸惑いもせずに殴ったことの恐怖もあって、あの一瞬はめちゃくちゃ動揺した。


でだ。

私が動けない間に桃簾は「玻璃のくせに生意気なのよ! 琥珀様の金魚の糞の分際で!」と玻璃に蹴りを入れようとして、避けた玻璃に呆気なく反撃されて意識を失っていた。

「これ、捨ててくるわ」と言い残して消えた玻璃に、私も菫ちゃんも数分呆然としてたと思う。


意識が戻ってからは、菫ちゃんの部屋で菫ちゃんの話を聞いた。


菫ちゃんの話を纏めると「琥珀くんのことは好きだけど、吸血鬼のことを知らなさすぎて答えを出すことができない。結婚を考えられる年齢でもないし、夢だって見つかっていないのに将来のことを今決められない。だから、琥珀くんの気持ちを聞きながら、吸血鬼のことを教えてもらってどうするのか決めたい。まずは、琥珀くんと話したい」とのことだった。


「私は、菫ちゃんがどんな答えを出しても応援するよ」ということを伝えている。

まぁ、私には応援くらいしかできないんだけどね。


菫ちゃん、大人だよねぇ。

玻璃は王とかには関係ないだろうけど吸血鬼だから、私も似たような立場のはずなんだよね。

でも、私はそこまで考えられなかったからな。

好きなんだから一緒にいたいって気持ちを押し出すことしかできなくて、その先を考えていなかったんだよね。

好き同士なのに引き離そうとするなんておかしいって。


はぁ、私と玻璃もいずれは悩む問題だよね。たぶん……。

その時、私と玻璃はどんな答えを出すかな?


なんて、その時がこないと分かんないか。

今は、菫ちゃんと琥珀くんのことで、力になれることは力になろう。


――――――――


11/5


避難訓練をした。

昨日長くなったので、今日はこれだけ。

そんな日があってもいいじゃないか。


――――――――


11/6


今日も琥珀くんは休んでいた。

玻璃にも連絡はないそうだ。

菫ちゃんの辛そうに笑う顔に、胸がギュッてなる。


琥珀くんの両親説得も大切だとは思うけど、菫ちゃんに1通でもいいからNECTをしてあげてほしいな。

玻璃から連絡がなかった時、私は本当に不安だったからさ。


――――――――


11/7


バイト先で「付き合うことや結婚を許されない時って大人はどうするんですか?」と聞いてみた。

「私のことじゃないです」とちゃんと言ったのに、面白おかしく両親に問う人たちもいて聞くべきじゃなかったと反省。


でも、家でお母さんが「『許してください』って頭を下げるのだけはやめてね。どんなに相手の人を好きか2人で永遠と話して。紫陽花だけじゃダメよ。紫陽花をどれだけ愛してくれているのかも知りたいんだから。それで、『こういう時はどうするんだ』という質問には現実的な解答を返してね。そこまで真剣に未来のことを考えているならって許せると思うから。でも、これはあくまでお母さんの意見で、お父さんは違うかもね」と教えてくれた。


恋愛って好きだけでは難しいこともあるんだろうけど、やっぱり好きがないと気持ちって伝わらないんだろうなと思った。


後、「相手の気持ちを考えられない人は話を聞かずに終わりだからね。そこは見極めなさいよ」と言われた。

「だいじょーぶ。私もそういう人嫌いだから」と返している。


菫ちゃんの参考になればと思って聞いたけど、これって菫ちゃんに琥珀くんの両親に会いに行こうって言うのと一緒だよね。

それって可能なのかな?


というか、その前に琥珀くんとの話し合いが必要だよね。

琥珀くん、一旦帰ってきてくれないかなぁ。


――――――――


11/8


昨日のお母さんの話を玻璃にしたら「絶対にそれは菫に言うなよ。俺らの故郷に来ようなんて無理な話だからな」と注意された。

理由を聞くと、「人間を嗜好品と思う奴らが多いからだ。死ぬまで吸血されて終わりだからな」と吐き捨てられた。


玻璃は、地元が嫌いなんだろう。

そう感じるには十分なほど機嫌が悪かった。


――――――――


11/9


玻璃が、琥珀くんの様子を見に帰るそうだ。

朝言いにきてくれた。


昨日、あれだけ嫌悪感を剥き出しにしていたのに琥珀くんのために帰るとは、何だかんだ言いながらも琥珀くんのことが好きなんだなと分かってニヤけてしまった。

頬をつねられたけど痛くなかった……なんて嘘! 痛かった! 本気でつねられた! ひどい!


それと、玻璃がいなくなるから、姿は見せないだろうけど槙田先生が警護にあたってくれるらしい。


これも私謎なんだけど、どうしてこんなにも警戒が必要なんだろう?

玻璃が帰ってきたら聞かなきゃな。


あ! そういえば玻璃に好きって言わないとと思ってたのに言ってない!

帰ってきたら、これも言う! 絶対に言う!


――――――――


11/10


色々考えてしまって最近眠れていないという菫ちゃんと電話で話した。

不安で仕方がないみたい。


本当、私は話を聞くだけしかできなくて力不足すぎるなと痛感する。

玻璃が明るい情報を持って帰ってきてくれることを願うしかできない。


どうか、どうか、菫ちゃんと琥珀くんが笑顔になれる解決方法がありますように。




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