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10/28〜11/3

10/28


玻璃に気持ちを伝えようと考えてみたものの、無駄に玻璃を見つめるだけの時間を増やしてしまい、玻璃に訝しげな目を向けられた。


さくっと「好き」って言えばいいだけなんだけど、今まで言ってこなかった弊害か、変哲もない会話の途中で伝えることができない。

ましてや言葉を溜めてからなんて、もっと口から出てこない。


あー、困った。

どう伝えればいいんだろう。


――――――――


10/29


今日は、みんなでハロウィンの衣装を買いに行った。


菫ちゃんは帽子付きの魔女っぽい衣装で、琥珀くんがピエロで、玻璃が「なんでもいい」と言うので赤ボーダーでメガネのいつも探されている人にした。

同じような黒ボーダーの囚人服と悩んだけど、メガネをかけてほしいからウォンリーにしたんだ。

でだ。私はチアリーダーとキョンシーで迷って、キョンシーにした。


統一感がない4人になるけど、部屋の中でだからね。

お揃いにしたら、私だけ場違いになるかもしれないしね。

3人とも顔面偏差値がバカ高いんだもん。

これできっと大丈夫。


――――――――


10/30


バイトがあり、お店ではハロウィンの話で盛り上がった。


高木さんはバイトが終わってからの参加になるらしいけど、大学のサークル仲間たちと仮装して飲み明かすんだそうだ。

仮装といっても、血糊とかで面白おかしくメイクするだけで衣装は買わないらしい。

捨ててもいいようなTシャツで集まるそうだ。


後は、自分は着ないけど子供はカボチャ服を着るっていうお客さんもいた。

すると、お父さんが「明日は休みにしてもいいのかもな」と呟いたんだけど、「パーティーしない人の方が多いから。どうせならカボチャ料理でもてなして」と声を上げる人たちがいて、どこか嬉しそうに笑いながらカボチャ料理を用意する約束をしていた。


玻璃たちとピザを頼もうって話してたけど、カボチャのケーキがあってもいいな。

忘れず、提案しようっと。


――――――――


10/31


めちゃくちゃ楽しかった。

歯も口も黒くなるピザがヤバかったよね。

みんなで顔を見合って笑いまくり。

カボチャケーキもちゃんと食べられたしで大満足。


というか、お腹だけじゃなくて目の方も大大大満足。

3人とも麗しすぎた。

めちゃくそかっわいい魔女に、面白くなくてビジュ最高なピエロに、全然隠れられそうにないカッコよすぎるウォンリー。

天国は存在したよね。


来年もみんなで仮装できたらいいなぁ。


――――――――


11/1


夜に菫ちゃんから泣きながら電話がかかってきた。

何事!? 菫ちゃんを泣かす奴がいたら私が懲らしめてあげるよ! と意気込んで話を聞いて「は?」しか言えなかった。


琥珀くんの婚約者が菫ちゃんに会いにきたって、なに?

しかも、「人間の分際で琥珀様と好き合えるわけないでしょ。ただの食料のくせに」と言われたって、どういうこと?


あー、確か、琥珀くんって次の偉い人候補なんだっけ?

だから、婚約者がいてもおかしくはない? のか?

ってか、そういうことって菫ちゃんに話しておくべきことじゃないの?

あー、訳分からん!


ってなって、「その女の言っていることが本当かどうかは分からないから、私から玻璃に聞いてみるよ。玻璃なら琥珀くんのこと隠さずぶっちゃけると思うし」って言ったら、その子が来た時に琥珀くんは慌てた様子で現れたらしく、そこで本当だと確認済みとのことだった。


琥珀くんは「小さい頃に母親同士が軽く話しただけで正式に婚約を結んでいないし、僕が好きなのは菫だけだから」と話してくれたそうだが、女の子から「人間を嫁に迎えるかもしれないと分かって、帝様は動いている。琥珀様の気持ちは関係ない」と言われたそうだ。


しかもしかも、「人間が相手だなんて絶対に認められない。琥珀様を想うなら別れろ」と睨まれたらしい。


うわー! なんなんだよー! 別に種族が違っても、好き合っているんだからいいじゃんかよー! 人間をバカにするんじゃないよー!


そんなことを思うがまま口にしたら、菫ちゃんは小さく笑ってくれた。


3時間くらい話して、「少し整理できたかも。きちんと考えてみる」と言われ、電話を切った。

玻璃に電話をして相談するには遅い時間過ぎたので、明日のバイト終わりに話そうと思う。


――――――――


11/2


玻璃に「昨日のこと知ってる?」って聞くと、「ああ。琥珀が荒れて大変だったからな」と返された。

何でも琥珀くんは抗議をしに帰省したそうだ。


玻璃について行かなくてよかったのか尋ねたら、「菫を守ってほしいって言われたからな。琥珀がいない今を狙って、桃簾(とうれん)が何かしてくるかもだからな」と、どうでもよさそうな口調で答えられた。


桃簾さんというのは、昨日菫ちゃんに会いにきた人らしい。

ちなみに、小さい頃からずっと琥珀くんを追いかけ回している鬱陶しい女の子だそうだ。


どうして人間と付き合うのはダメなのかは、「血が薄まるからな。そんなしょーもない理由だ」らしい。


血の濃さで強さが決まるとかだったからだよね?

なんかさー、家にとっては大切なことかもしれないけど、本人たちの気持ちを尊重してあげてほしいと思う。

悲しいし、モヤモヤする。


玻璃には「紫陽花にできることは何もねぇから、何もするなよ」と言われた。


言われなくても分かってはいるよ。

でもさー、私は菫ちゃんに幸せになってほしいんだよ。

どうにかして力になれないかなぁ。


――――――――


11/3


菫ちゃんから玻璃に、「琥珀くんと話したいんだけど」と相談があったそうだ。

でも、琥珀くんは帰ってきていないらしく、電話も繋がらないとのこと。

まぁ、だから玻璃に連絡をしたんだと思う。


玻璃が言うには「そんな早くに許されるなんてことねぇよ。琥珀が一人っこじゃなかったらどうにかなっただろうけど、こればっかりはな」とのこと。

許される確率なんて無いに等しく、それでも覆そうと琥珀くんは頑張っているだろうと付け加えられた。


私に手伝えることはないのか聞いてみたら、「昨日言っただろ。何もねぇよ。ああ、でも、菫の話くらいは聞けるんじゃねぇか」と目から鱗が落ちるようなことを教えてくれて玻璃に抱きついた。


そうだよ! 菫ちゃんが気持ちを吐き出せるのなんて、事情を知っている私だけなんだから可能な限り気持ちのはけ口にならなくちゃ!


明日はバイトがお昼のみなので、美味しいケーキでも買って菫ちゃんに会いに行こう。

いっぱいいっぱい話をしよう。




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