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9/30〜10/6

9/30


文化祭の片付けにすら参加できず、起きたらお昼過ぎだった。

(書いているのは10月2日なので、覚えてる限りになる。本当にボーッとしてた)


「ん? やっとお目覚めかな?」と優しい声色が聞こえて、銀髪の綺麗な人に覗き込まれた。

長い髪を1つ結びにし、柔らかく微笑んでいる。


「ここ、どこ?」と言う声は、左頬の痛みに出すことができなかった。

それだけじゃない。全身とても痛い。顔を顰めてしまうほど痛い。


綺麗な人は、「玻璃を呼んでくるね」と笑顔を残して去っていった。


この時に、ようやく玻璃の部屋だと気づいた。


頭がボーッとして何も分からなかったけど、勢いよく部屋に入ってきた玻璃に抱きしめられて「このバカ。何もせず、じっとしてろって言ったろ。俺を殺す気か」と、余計に頭がこんがらがることを言われた。


でも、久しぶりすぎて、玻璃に会えたことが嬉しくて、涙が出てきた。

玻璃の温もりが、玻璃の声が嬉しすぎて、他のことなんてどうでもよかった。


少しの間泣いていたけど、綺麗な人が「玻璃、彼女に痛み止めを飲んでもらおう。話はそれからだよ」と声をかけて、玻璃は離れていった。


泣いていたわけでもないのに、玻璃の瞳は赤かった。

後から聞いた話だけど、私のことが心配でずっと眠っていなかったらしい。

申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


で、ベッドの上で座らせてもらい、痛み止めを飲んだ後に事の経緯を聞いたら……


私は四条先輩に殴られ、吸血されてしまったそうだ。

吸っていい以上の吸血をされたから、全身が痛いらしい。


最低だ。あのクソ吸血鬼め。

今度は、顔に犬のふんでも投げつけてやろうか。


と汚い言葉を思い浮かべたけど、四条先輩はもう近くにいないそうだ。

強制帰還させられ、一生を牢の中で過ごすとのこと。


その強制帰還の手続きをするために、抵抗してきたら攻撃してもいい許可をもらいに、玻璃と琥珀くんは帰省していたらしい。


綺麗な人(瑠璃(るり)さん)はお医者さんらしく、蘭ちゃんをこっそり治すために連れてきたそうなのだが、私の重症も治療してくれているとのこと。


瑠璃さん曰く、「急に柘榴がボロボロの君を抱えて現れたから驚いたよ」とのことだった。


どうやら、槙田先生が助けてくれたらしい。

槙田先生が私を運んでいなければ、命を落としていてもおかしくなかったとのこと。

私を助けてくれるなんてどういう風の吹き回しだろうかと思ったけど、素直に感謝することにした。


ちなみに、桃谷先輩に関しては、記憶を全部消した上で放置するそうだ。

記憶を消せるってことに絶句していたら、瑠璃さんが「私、脳をいじるのが好きなの」と微笑んできた。


怖くて玻璃の腕を掴んじゃったよね。

マッドサイエンティストだよ。怖いよ。


そんな話をしていると、菫ちゃんと琥珀くんが学校から帰ってきて、菫ちゃんに大泣きされて「ごめん」と「ありがとう」を繰り返した。


そして、これも瑠璃さんの得意技らしいんだけど、声帯を調べれば声真似ができるそうだ。

私は、菫ちゃんの家に泊まっていることになっているらしい。


でも、怪我を隠せないよねと思っていると、激痛を伴うけどすぐに治せる薬があるそうで、それを使うかどうか決めてほしいと言われた。


両親には話せないしで、使うことをOKしたら、めちゃくちゃ嬉しそうに微笑まれた。

彼女か彼かは見た目と声で判断できない人だけど、瑠璃さんは絶対に究極の常軌を逸した天才さんなんだと思う。


そして、私はこの薬を飲んだ後の記憶がない。

次起きた時には元気になっていたから、飲んでよかったんだろうけど、記憶……本当に飲んでよかったんだろうかとも思うよね。


――――――――


10/1


起きたら夜中で、玻璃に抱きしめられていた。


夜中なのに玻璃は起きていて、私の頬をつねって「バーカ」と悪口を言ってきた。

でも、怒る気になれなくて誠心誠意謝った。「心配かけてごめんね」と。


で、まだまだお説教が続くと思っていたら、玻璃に「いや、俺が悪かった」って言われた。

実は、玻璃は槙田先生に伝言を頼んでいたらしく、槙田先生が私に伝えていなかったそうだ。


しかも、護衛も言いつけていたのに、四条先輩の家に行くのを黙って見ていたらしい。

本人は「玻璃の女なら、それくらい乗り越えてみせろ」という強い気持ちがあったそうだ。


助けたのは、私の匂いが急激に消えたので、命の危険を察してとのこと。

まさかそこまでのことになるとは思っていなかったと、玻璃に謝ったそうだ。

玻璃がボコボコにしたから、もう意地悪はしないだろうとのことだった。


本来ならここで「教えてくれたらよかったのに」って怒るところなのかもしれないけど、槙田先生は本気で玻璃が好きで私が嫌いだから意地悪をしてしまっただけなんだよね。

いや、死にかけたから怒るところなんだけどね。


でも、全然怒りが湧いてこなくて、元を正せば吸血鬼相手に勝てない勝負をした私が悪いわけでさ。

意地悪されたことは謝ってほしいけど、今回のことばかりは私が全面的に考えなしに行動した結果なんだよね。


だから、私は槙田先生に謝らないといけないな。

嫌いだから会いたくないけど、次会った時にきちんと謝ろうと思う。


私と玻璃がお互い謝ったところで、玻璃がキスしてきたんだよね。

私は目が冴えていたから、玻璃が眠たくなければ他にも聞きたいことがあったのに、なのに、なのに、なのに!!!!


あー、もう!!!


私も玻璃に会えて嬉しいからってキスしちゃったんだよ!

ベッドの上で、イチャイチャしちゃったんだよ!!


無理……書けない……思い出すと湯気がでる……


――――――――


10/2


やっと家に帰ることができたので、日記をまとめて書いた。

いや、昨日の続きは書けていないけど……ああああ! 無理! まだ無理!

今日だって、玻璃と目を合わせられていないのに!

書くなんて無理だよ!


昨日今日と振替休日で学校は休みだったからのんびりできたけど、明日登校したらみんなに謝らなくちゃ。


瑠璃さんのおかげで、私は風邪で休んだことになっている。

お母さんのフリをして連絡してくれたそうだ。

怪我も治してもらえたしで、有り難さしかないよ。

瑠璃さん、本当にありがとう。


研究したいって血を取られたけど、そんなこともうどうでもいいよ。

感謝しているからね。


――――――――


10/3


クラスのみんなに文化祭を休んだことを謝ったら、みんな優しく許してくれた。

逆に風邪を心配してくれた。

ちょっと罪悪感があるけど、みんなの優しさを知れて嬉しかった。

みんな、ありがとう!


結城さんと佐藤さんとは、少し長めに話した。

2人に関しては記憶を弄らないそうだ。困る記憶でもないのでそっとしておくらしい。


蘭ちゃんに関しては、玻璃ではなく玻璃のそっくりさんと付き合っていたという記憶に変えているらしい。

随分と長引いているけど、今度こそ来週から復帰するそうだ。

色々言ったことが矛盾することになるのでおかしな子扱いされるだろうけど、自業自得だからそれくらいは受けてもらうべきらしい。

私にできることは蘭ちゃんを変人扱いしないってことくらいなので、話しかけられたら普通に話そうと思っている。


うん、今日はこれくらいかな。

まだ玻璃と目を合わせられないから、玻璃のことは何もなかったしね。

うんうん、とりあえず早く恥ずかしくないようになりたい。


――――――――


10/4


今日も玻璃を見るだけで、全身が真っ赤になった。

もう本当に、あの事を頭から追いやりたい。


玻璃に聞いてはっきりとさせておきたいことがあるのに、あの事が頭の中を支配するから言葉が全部飛ぶんだよね。


あー、もー、こんなの私がスケベみたいだ。嫌だ。

エロいことしたのは全部玻璃なのに。

エロ……エロい……


あーもー! 恥ずかしい!


――――――――


10/5


バイト終わりに待っていてくれたのは玻璃で、なんだかやっと玻璃との日常が戻ってきたような感覚だった。


だからか、昨日までの恥ずかしさは消えて、心の底から嬉しいって思えた。

玻璃がいる毎日が幸せなんだって思えた。


ようやく普通に会話できるようになったし、玻璃は前よりも微笑んでくれるようになった。


本当に、今日みたいな幸せな時間が続きますように。

玻璃と仲良く過ごせますように。


――――――――


10/6


思ったんだけど、あの日のことを詳細に書かなくてもいいよね。

初めてのことだったし、人生の一大イベントではあるけど、きちんと覚えていればいいだけの話だもんね。

忘れろって言われても忘れられない記憶だしね。


そう思ったら、なんだか心が軽くなった。


あのエロい玻璃は、本当に凶器だもん。

だから、できるだけ拝まない日が続きますように。

私にアレは本当にキャパオーバーです。




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