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9/9〜9/15

9/9


どうにか玻璃を引き剥がして、蘭ちゃんに会いに行けないかと悩んでいたけど、家に帰ったら1人なんだから一旦家に帰ればいいんだよ! って閃いた。


そして、実行したら、あっさり病院に行けてしまった。


嬉しかったけど、今日の問題はそこじゃない。

結局、私は蘭ちゃんに会えていないのだから。


お見舞いの高級プリンを持って病院に着くと、すぐに蘭ちゃんがいる部屋に向かった。


ドアの前で気合いを入れるように深呼吸していたら、中から蘭ちゃんの笑い声が聞こえてきて、誰か来てるのかなって、ちょっとドアを開けて覗いたんだよね。

私の知らない人だったら気まずいからさ。


そうしたら、病室にいたのは四条先輩だった。


あー、もう、書いている今も衝撃すぎる。

だって、あのチャラ男と蘭ちゃんは手を繋いでたんだよ。

パニックだよ、パニック。


しかも、四条先輩と目が合ったような気がしたんだよね。

もちろん速攻で逃げたけど……バレてるだろうなぁ……


まぁ、それはいいや。

悩んだって、どうしようもないんだから。


問題は、蘭ちゃんと四条先輩の関係だよ。

まるで付き合っているような雰囲気だった。


なにこれ? 何がどうなってるんだろう?


もしかしてが頭に浮かんでるけど、そんなことある? って疑う自分もいて……


はぁ、どうしたものか……


――――――――


9/10


もうなぜとは思わないけど、昨日病院に行ったことが玻璃にバレていて、めちゃくちゃ怒られた。

「お前の頭の中には脳みそがないのか」と、あいつは人として言ってはいけない暴言を吐いてきた。


小さい子供の喧嘩ならまだ分かる。

でも、高校生にもなって、言っていいことと悪いことが分からないなんてダメすぎる。


って、まぁ、私が1人で行動したせいだと分かってるよ。

日記を書いている今だから落ち着いてそう思えるけど、今日の私はとことん玻璃に反抗した。


なんでか、泣きたいほどムカついたんだよね。

気持ちの整理は追いつかないのに、謎だけが増えていてさ。


私が謝らないから、玻璃も怒りを鎮めてくれないしで、放課後は付き合ってから初めて別々で帰った。

だから、余計に泣きそうになった。


玻璃のバカヤロー。

私は不安でいっぱいいっぱいなんだよ。分かってよ。


――――――――


9/11


玻璃と仲直りしようと思ったけど、しないことにした。


私は、蘭ちゃんを助けたい。

私にできることが少ないとしても、やるだけやりたい。


だけど、仲直りしたら、きっと玻璃は今まで以上に過保護になる。

そうすると、私は動けなくなるから、蘭ちゃんを助けられるまで仲直りしないことにした。


だから、お昼ご飯も一緒に食べていないし、今日は1度も顔を合わせていない。


玻璃は、私が謝る待ちなんだと思う。


ただ一連の流れを知る菫ちゃんも「私も協力する。何もしないなんてできないもの」と、お昼休みは私と過ごした。

「琥珀くん、大丈夫なの?」と尋ねたら、「うん、実は昨日ちょこっと言い合いしちゃったの。だから、向こうが折れるまで大丈夫」と笑顔を向けられた。


言い合いの原因は、私の行動らしい。


放課後、菫ちゃんは「紫陽花ちゃんの気持ちが分かる。どうにか助けられないかな?」と琥珀くんに相談したとのこと。

でも、「僕たちの問題じゃない」と取り付く島なしで、そこから白熱し、「わからずや!もう何も話さない!」という言葉を最後に琥珀くんとは話していないそうだ。


「琥珀くんが『協力する』と言わざる得ないようにしようと思っている」と満面の笑みで言われて、可愛い菫ちゃんの新しい一面を見たような気がした。


私もそこまで強気に言えたらいいんだろうけど、どうなっても玻璃は動いてくれないんじゃないかと思う。


卑屈になりたいわけじゃないけど、どうしても槙田先生がチラつくんだもん。

はぁ、私って相当面倒くさい女だな。


――――――――


9/12


昨日、菫ちゃんと決めたように、まずは桃谷先輩に接触することにした。

もし何か知っていたら教えてくれるんじゃないか、という希望を持って。


学校で話せる内容じゃないから、今日の放課後でもと提案してみたけど、今日は用事があるらしく明日なら大丈夫と言ってくれた。


「四条先輩は抜きで3人がいい」と伝えて、頷いてくれたから大丈夫だと思いたい。


でも、念のため痴漢撃退スプレーなるものを、ポケットに忍ばせておこうと思う。

四条先輩は危険人物だと思うから。


――――――――


9/13


いや、もう、なんか色々と疑ってた私がバカみたいな話。


桃谷先輩と菫ちゃんとで、個室の方がいいからとカラオケルームで話をすることに。

約束通り四条先輩は現れず、3人だった。


そして、桃谷先輩に「友達が入院している病室で、四条先輩と友達が手を繋いでいるところを見た」と伝えた。「でも、その友達には彼氏がいるんです」と。


桃谷先輩と好き合っているはずの四条先輩のことを言うのは少し憚れたが、そこを誤魔化して蘭ちゃんとのことを聞けると思わなかったので嘘偽りなく話した。


ただ蘭ちゃんがどういう子かは話していない。

病室で見たことだけを伝えた。


そうしたら、桃谷先輩は少し考えてから「入院しているってことは、もしかして吸血されすぎてとか?」と言ってきたから、菫ちゃんと目を合わせた後、頷いた。


「そっか、その子が例の子なんだ」と呟かられ、気になって聞いてみたら、「私も詳しくは知らないけど、四条くんが野良に襲われている子を助けたいって言ってたの。だから、その間会えなくなることが多いからって謝られたの」と教えてくれた。


さらに、「四条くんは何人も助けてきているから、任せていれば友達は大丈夫だと思うよ」とも言ってきた。


え? 四条先輩って、実はいい人なの?

桃谷先輩の体調を気にしてカフェまでついてきたのも、本当に優しさからなの?


と、改めて思い返してみたら、軽いけど悪い人ではないかと思った。


蘭ちゃんを助けられると分かって、胸にあった重たいものがなくなった気がする。

本当によかった。


その後は、3人でカラオケを楽しんで解散した。


明日辺り、もう1度蘭ちゃんのお見舞いに行ってみよう。

少しは話せたらいいな。


――――――――


9/14


バイトが休みなので、蘭ちゃんの病院に再チャレンジしてみた。

結果、蘭ちゃんには会えていない。


病院に入る時に、病院から出てくる四条先輩と会ってしまって、「まだ会わない方がいいよ。精神を弄られているみたいで不安定だから」と言われた。


精神を弄られているってなに!? ってなって尋ねたら、「場所移動しよっか」と病院の庭みたいなところに向かった。


その間も四条先輩は「入院伸びたみたいだよ。まぁ、まだまだ油断できないから当たり前だけどね」と言ってきた。


庭に到着すると、四条先輩は周りを確認するように視線を動かしてからベンチに座った。

横を叩かれたから、ある程度間を空けて座ると、小さく笑われた。


そして、「野良って奴らのこと、どこまで知っている?」と聞いてきた。

何も知らないことを伝えると、「やっぱり玻璃や琥珀は隠しているのか」と呟いた。


四条先輩が教えてくれたことは、


・吸血鬼には階級があって、玻璃や琥珀くんは上位種なこと

・四条先輩は上から3つ目なこと

・野良と呼ばれる奴らは最下層の吸血鬼で、最下層といっても能力が低いわけじゃなく、今回みたいな精神系が得意な奴もいるとのこと

・強い弱いじゃなくて、血の濃さで階級が決まっているということ

・野良の奴らは最下層と呼ばれる鬱憤を晴らすために人間で遊ぶこと


だった。


一気に説明されて頭の中グルグル状態だったけど、「君の友達は助けるから安心してくれていいよ。でも、精神を戻すのには時間がかかるから、できれば会いに来ないであげてほしい。君を見ると興奮しちゃうだろうからね」と言われて、四条先輩に任せるしかないということは分かった。


だから、お見舞いで持ってきたフルーツごろごろゼリーを託して、「助けてあげてほしい」と誠心誠意頭を下げた。


「大丈夫だよ。君は上位種の餌をいうことを気をつけたほうがいい」と、頭を軽く叩かれた。

「それと、俺が教えたってことは内緒にしてね。玻璃や琥珀に怒られると殺されるから」と微笑まれもした。


必死に頷いたけどさ、殺されるってなに?


蘭ちゃんのことが解決したと思ったら、また更に多くの疑問が出てきたんだけど。


はぁ、玻璃は本当に私には何も教えてくれてないんだな。

どうして教えてくれないんだろう?



――――――――


9/15


バイトが終わり、玻璃はいなかったが不機嫌な槙田先生が私を待っていた。


どうやら玻璃に頼まれたらしい。

知らず知らずのうちに期待していたようで、玻璃がいない現実に泣きそうになった。


槙田先生には帰り道でずっと文句を言われたけど、家の中に入るまで見届けられた。


何なんだろうか?

玻璃が何をしたいのか、全然分からない。

怒っているのなら、私を放っておけばいいんだ。

どうして槙田先生に頼むんだ。

私が会いたくもないと知っていての嫌がらせなんじゃないかって勘繰ってしまう。


携帯を見ても、玻璃からの連絡はない。

蘭ちゃんのことが解決したから玻璃と仲直りしたい。と思うのは、虫がいい話すぎるんだろうな。


玻璃に会いたいな。




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