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9/2〜9/8

9/2


ああああああああああ、もうしんどい……

なんだってあんなにみんなに見られなきゃいけないの?

蘭ちゃん、どれだけの人に玻璃と付き合ったって自慢したの?

いやいや、そんなことより蘭ちゃん一体どうしちゃったの?


玻璃と登校したら、突然玻璃に抱きつこうとしてきた子がいてびっくりしたんだけど、(玻璃は華麗に避けていた)、その子が頬がこけてひょろひょろに痩せていて「ほっそ!」って思っていると睨まれて、で、で、その子が蘭ちゃんだった!!!


あの可愛かった蘭ちゃんは、どこにいったのーーーー!!!!!!


まぁ、そこから蘭ちゃんに付き纏われ、(玻璃は蘭ちゃんを見ようとさえしなかった)、周りからも興味津々で見られてで本当に疲れた。


玻璃が一貫して蘭ちゃんを無視していたから、二股疑惑というより浮気疑惑みたいになってたけどね。


菖蒲ちゃんのおかげである程度覚悟していたから乗り切れたけど、聞いてなかったらパニックになってたかもだよ。


でだ!


今日は午前中のみだから吸血日にちょうどいいってことで、放課後玻璃の家に行って、気持ちよさと恥ずかしさに気絶をして、起きたら琥珀くんが菫ちゃんをつれて帰ってきていた。


そして、めちゃくちゃ大切なことを教えてくれた。

ってか、「玻璃から聞いてないの?」って驚かれた。


玻璃は「んなもん知る必要ねぇだろ」と悪びれもなく言っていたけど、琥珀くんに「大事なことだよね」と殴られていた。

骨折れた? ってビビるほどの音が鳴ったから、ざまーみろと思う暇はなかった。本気で怖かった。


玻璃は「いってー」って普通に頬を触っていただけで、本気で痛がっているようには見えなかった。

意味不明だったけど、「無事ならいいか。吸血鬼だし、私たちとは違うんだよ」と自己完結することにした。


今日の出来事、濃いなぁ。

こんな長い日記初めてかも。

ここからが大事なことだしね。


でだ!


落ち着いた琥珀くんが教えてくれたことは、蘭ちゃんのあの姿は「吸血をされすぎたらなる姿」ということだった。

でも、蘭ちゃんからESAの雰囲気というか、ESA同士が分かる波長みたいなものは感じていない。


それを伝えると「契約せずに飲まれているんだよ」と言われた。

「そういう子、意外に多いんだよ。アレをしている時ならバレないからね」と爽やかに笑いながら言われたんだよね。


玻璃が言うと違和感ない言葉でも、琥珀くんから言われるといけないことをしている気分になるから不思議だ。

だから、何も反応できず「へぇ」とだけしか返せなかった。


しかも、「契約したいほどの愛情もないから、遠慮なく吸っちゃうんだろうね。吸血しすぎると干からびて死んじゃうから、必要以上の吸血は一応禁止されているんだけどね」と爆弾を落とされた。


もうプチパニックだよね。

今、死ぬって言った? 言ったよね? ってさ。


まぁ、私のパニックなんてお構いなしに「だから、野良に狙われねぇための契約だろ」「そうだけど、今回は……」と玻璃と琥珀くんの会話は続いていた。


菫ちゃんは事前に琥珀くんから聞いていたそうで、随分と落ち着いていたというより、終始悲しそうな顔をしていた。


玻璃よ、私も琥珀くん並みのサポートを玻璃にお願いしたいぞ。


はぁ、もう頭パンク状態だよ。

玻璃と琥珀くんははっきりと言わなかったけど、どっかの吸血鬼が玻璃を装って蘭ちゃんから吸血しているってことでしょ。

放っておいたら死ぬかもしれないってことだよね?


昨日まで、あんなに楽しい夏だったのにな。

こんなのどうしろっていうの。


――――――――


9/3


蘭ちゃんと話したいと思っているのに、教室では話せる内容じゃないから普通の休憩時間は無理で、お昼と放課後は玻璃に蘭ちゃんから引き離されて叶わなかった。

そして、「お前に話すと絶対余計なことしようとすると思った」と怒られた。


隣で菫ちゃんも琥珀くんに、諭すように色々言われていた。


でもさー、死ぬかもって聞いてジッとしてられないよー。


琥珀くんが教えてくれたのは、蘭ちゃんを助けるためじゃなくて、玻璃を使っての私か菫ちゃんを狙ってのことだろうからという忠告だったらしい。


そりゃ散々「関わるな」って言われたけど、言われたけどなんだよねぇ。

放っておけるわけないって分かってほしい。


――――――――


9/4


ラッキーなことに自習の時間があって、「いまだ」と蘭ちゃんを誘おうとしたら、蘭ちゃんの友達の結城(ゆうき)さんに呼び出された。


「もしかして、蘭ちゃんもいるかも」と思ってついていったけど、蘭ちゃんはおらず、結城さんと佐藤(さとう)さんと話をした。


まぁ、玻璃と付き合っているのは本当かどうかの確認だったから、夏休みの写真を見せて納得してもらった。

2人は蘭ちゃんの話で色々と腑に落ちないことが多かったらしく、反論されることは全くなかった。


で、蘭ちゃんが結城さんたちに送ってきたという写真を見せてもらった。


衝撃だったよね。「え? この人が玻璃に見えるの?」って言っちゃったよ。

2人は「鳳城くんっぽくない? 加工写真だから、手を加えてこんななのかなって」という認識だったそうだ。

私としては、雰囲気は玻璃っぽいけど、全くの別人にしか見えなかった。


蘭ちゃんもよく気づかないなと思ったけど、相手は吸血鬼だ。

玻璃だと思い込ませる何かを扱えるのかもしれない。


結城さんと佐藤さんに「誰かが蘭ちゃんを騙している」ということを分かってもらえたし、2人は蘭ちゃんに「別人だ」と話してくれるそうだ。


これで、正気に戻ってくれたらと思う。

結城さんと佐藤さんの思いが、蘭ちゃんに届きますように。


――――――――


9/5


蘭ちゃんが欠席をした。

入院したそうだ。


結城さんと佐藤さんから「昨日話し合っている時に倒れたの」と教えてもらった。

「何度説明しても分かってもらえないなら、会わせてみてほしいって言ったの。そうしたら『どうして信じてくれないの』って叫ばれて……その後に倒れたの」ということらしい。

「なんか、もう、あんなの蘭じゃないよ。あんな狂っているようなことをする子じゃなかったのに」と2人は泣きそうになっていた。


どうしたらいいんだろうって悩んでたけどさ。

今、書いていて怒りが込み上げてきたんだよね。


これって、全部玻璃のフリをしてる吸血鬼が悪いってことだよね。

そいつをどうにかしたら、蘭ちゃんにかかっているだろう術? も解けるだろうしさ。

ムカつくから懲らしめてやりたいよね。


たださ、私に吸血鬼を痛めつける力はないわけで……きっと玻璃は協力してくれないわけで……


吸血鬼って弱点ってないのかな?


――――――――


9/6


玻璃に「玻璃たちって弱点ないの?」と直球で聞いてみたら、ものすっごい冷たい目で見られた。

「ねぇよ」って言われるし、「絶対に何もするなよ」って頬っぺた引っ張られるしで、散々だった。


私って、そんなに分かりやすいかな?

そんなことないと思うんだけどなぁ。


――――――――


9/7


菫ちゃんと蘭ちゃんの話をした。

玻璃たちに聞かれたらまた怒られるだろうから、夜に電話で話した。


私も菫ちゃんも分からないことが多くて答えなんて出なかったけど、気持ちを吐き出せて少しモヤモヤがなくなったような気がする。


やっぱり悪いのは、蘭ちゃんを騙した吸血鬼だ。

倒したいとも倒せるとも思っていないけど、蘭ちゃんは助けたい。


蘭ちゃん、いつまで入院しているんだろう?

お見舞いに行けば会えるのかな?

結城さんにNECTしてみよう。


――――――――


9/8


バイト先に、私の嫌な思い出の槙田先生がやってきた。


玻璃に聞きたいけど聞けなくて、記憶の奥底に無理矢理封印したのに一気に蘇った。

そしてESAになった今だから、槙田先生も吸血鬼なんだって分かった。


「俺はくっさいお前を認めてないからな」とお水を運んだ時に言われたし、話したくなかったけど、これはチャンスだと思って、「先生たちに弱点ってないんですか?」って尋ねてみた。

「お前らと変わんないよ。ご飯食べられなかったら死ぬし、事故や病気で死ぬ時は死ぬ。一緒だ」と想像していたよりも100億倍普通に答えてくれた。


拍子抜けしていたら、玻璃と琥珀くんがやってきて、槙田先生と一緒のテーブルに着いた。


だから、思い切って玻璃に「どういう関係?」って聞いてみた。

そうしたら、これも思ってた1000億倍普通に「俺の非常食だ」と言われた。


その後から日記を書いている今までの記憶は抜け落ちている。

結構な衝撃だったみたい。

まぁ、何を言われてもショックを受けてたとは思う。今も落ち込んでいる。


非常食かぁ、非常食って有りなのかぁ……ESAと非常食が、本妻と愛人みたいに感じるのは私だけなのかなぁ。

私だけじゃダメなのかなぁ。こういうことって言っていいのかな?


蘭ちゃんのことでどうしたらいいのか分からない上に、元気もやる気も全部奪い取られたような感覚に泣きそうになる。


ああ、でも、今は蘭ちゃんのことだよね。


結城さんがNECTで教えてくれたけど、蘭ちゃんは今日目が覚めて来週いっぱいはお休みするらしい。

お見舞いには行ってもいいそうだが、気持ちを昂らせないようにしないといけないとのこと。

私が姿を見せていいものかどうか迷う。


でも、どうにか蘭ちゃんを悪い吸血鬼から引き離すためには話し合いをしないと。

クラスメートが死ぬのは嫌だよ。




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