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7/1〜7/7

7/1


お昼休みの時間に玻璃が「紫陽花に話して上手くいったから」と菫ちゃんに報告した。


顔を大きく伸ばした菫ちゃんが琥珀くんを見て、琥珀くんが微笑みながら頷いて、そして菫ちゃんが「よかった。本当によかった。おめでとう」と泣いた。


そんな菫ちゃんを優しい瞳で見ている琥珀くんがいて、玻璃はどことなく恥ずかしそうだった。

ぶっきらぼうに「俺を愛されているからな」なんて言ってた。


ねぇ、謎すぎて口を挟めなかったんだけど、これは一体なに?

私が当事者の1人っぽいのに、全く何が何だか分かってないんだけど。


3人の幸せほのぼのオーラに、玻璃や菫ちゃんの言葉……本当に分かんない。

ただ会話の流れから、知らない間に玻璃に対していい事したんだとは分かる。


だから、いっか。

悪いことをしたんじゃないなら、いいってことよ。


――――――――


7/2


はじまってしまった期末試験……

1日目から古典があって地獄だった。


こんなこと言ったら怒られるだろうけど、古典なんて本当にこの世から無くなればいいと思う。

昔の人の人間関係に興味ないもん。

しかも、名前が長い! ややこしいから大変なんだよ。


昨日の徹夜が響いて晩御飯まで寝ちゃったから、その分をまた夜中に取り戻さないと。

後3日、頑張るぞ!


――――――――


7/3


帰りにコンビニ寄ったら、玻璃がついてきて、唐揚げを半分取られた。

怒ったら、嬉しそうに笑って「これで許せ」って頬にキスされた。


イケメンは何をしても許されると思うなよー!

そりゃ「きゅん」ってしたけども!!


でも、ものすっごく恥ずかしかったから許せん!

今度、何か取ってやる!


――――――――


7/4


明日は数学と苦手な英語だから、玻璃にお願いをして2時間ほど教えてもらった。


玻璃と琥珀くんの家に2回目の訪問。

といっても、今回は菫ちゃんも一緒。

4人いるので、リビングでの勉強会。


菫ちゃんと琥珀くんが勉強する時は、いつも琥珀くんの部屋でしているそうだ。


そっかそっか。

やっぱり部屋で過ごす時間が多い恋人は、アレが早いんだね。


私は回避できているから、このままなんとか2人っきりにならない方向で頑張ろうと思ってる。

考えただけで逆上せそうになるんだもん。

私には、まだまだ早い。


――――――――


7/5


英語、頑張った! やりきった!

きっと中間よりも点数がいいに違いない!


試験が終わったので、4人でファミレスへ。

ドリンクバーがあるから、「夏休み、いっぱい遊びたいねぇ」なんて言いながらのんびり過ごしちゃった。


プールに花火に遊園地!

全部8月に行く予定だけど、今から楽しみで仕方がない。


プールと遊園地は菫ちゃんの習い事と私のバイトが被らない日であればいつでも行けるから大丈夫だけど、花火の日はお休みが取れるかどうかになる。

どうかお休みが取れますように。


それと明日、朝の7時過ぎに玻璃が迎えに来るらしい。

「なんで?」って聞いたら「約束しただろ」と怒られた。


したけどさ、いつまでその冗談をひきずってるのって話でさ。

何かのサプライズってことなんだよね?


まぁ、明日になれば分かるからいっか。


――――――――


7/6


ある意味、サプライズだった……

いや、玻璃は嘘偽りなく本当のことを言ってたんだから、本来はサプライズでも何でもないんだけど、私には今世紀最大のサプライズだった……


頭の中を整理したいから、今日あったことを書こう。


この日記は鍵付きの箱に入れ、1年書いたら焼却処分する。

玻璃と琥珀くんの秘密は、墓まで持っていく。


朝、玻璃が迎えに来て、玻璃の家に行った。

廊下で会った琥珀くんから「頑張って」と激励され、とりあえず頷いた。


それで、玻璃の部屋に入ったら、床に漫画やアニメとかで見る魔法陣が描かれていて、玻璃が中二病になったのかと思って見て見ぬふりをした。


こういうのって揶揄ったらいけないと思ったから。

誰かが好きなモノを否定したらダメって、小さい時にお母さんに怒られたもん。

それに、私が好きなモノを否定されたら、ムカつくし悲しいもんね。


魔法陣を踏んでいいものかどうか悩んでたら、玻璃に引っ張られて魔法陣の真ん中で玻璃と向かい合わせで座った。

「紫陽花、どこから吸われるのがいい?」と聞かれ、「何を?」と尋ねたらチョップされた。

「そろそろ起きろ。時間ねぇんだよ」って。


この時点でバッチリハッキリ起きてたけど、まさかあの冗談が本当だと思ってなかったんだから仕方がないよね。私は悪くない。


ここでようやく「あれ? あの話、本当だったとか言うの?」ってプチパニックが起こった。


真剣に私を見て悩んでいる玻璃に「所有物の印は俺らにしか見えねぇから、うなじにするぞ」と言われた。

本当に何も考えられなくて、「何が?」「なんで?」が頭の中を占めてたよね。


でも、「冗談だと思ってた」なんて言えるような雰囲気でもなくて、必死に頷くしかできなかった。


今思えば、この1週間ずっと幸せそうにしていた玻璃を拒むことは、私にはできなかったんだと思う。

だから、何も覚悟ができていないけど、とりあえず終わってから考えようだったんだ。


それで今振り返っているんだけど……はぁ、全部が夢だったんじゃないか状態だよ。


数分話した後、魔法陣が急に光りだして、「時間だ」と言われて抱きしめられた。


玻璃が何語か分からない言葉を呟いて、プツッて鳴ってうなじに何か塗られて、そして首を咬まれた。

意識が飛びそうなほど、本気でめちゃくちゃ痛かった。


どれだけ咬まれていたかは痛すぎて分からなかったけど、玻璃が離れると床にあった魔法陣は消えていた。

玻璃曰く、「次からは気持ちいいだけだから心配すんな」とのこと。


今までよりも更に蕩けた顔で微笑む玻璃に、痛かった首を舐められキスされたら痛くなくなった。


バイトに行く時間まで、抱きしめられたりキスされたりと戯れられている間も、もちろん頭の中のパニックは治まっていなかった。


で、バイトが終わって、ご機嫌な玻璃に送ってもらって、お風呂に入って、日記を書いてる。


うん、振り返った。全部覚えている。

鏡で首を見ても咬み跡なんてなかったけど、あの痛みは偽物じゃない。現実だった。


ということは、夢じゃなくて、この世界には未知な出来事があるということ。

すでに起こったことだけど、だからと言って、受け入れられたかどうかと言うと分からない。


でも、過去に戻って真実だと理解した上でも、私は断らなかったと思う。

後悔はしていないから、悩む必要なんてない。


ただ、私のモノサシで考えていたから、誠実に向き合おうと打ち明けてくれた玻璃を蔑ろにしてしまっていた。

玻璃にはバレていないけど、このままではダメだと思う。

玻璃に対してもだけど、菫ちゃんや琥珀くんに対しても不誠実すぎる。


玻璃と話し合おう。


――――――――


7/7


バイトが終わり、送ってくれた玻璃に部屋に上がってもらった。

外で話せる話じゃないし、長くなるかもしれないから。


いざ玻璃に気持ちを打ち明けようとしたけど、中々言葉が出てきてくれなくて、でも玻璃は静かに待ってくれていた。

いつも俺様なのに、今日は私の手を握ったまま何もしてこなかった。


だから、流されることなく、きちんと謝ることができた。

「吸血鬼って冗談だと思ってた。ごめんなさい。でも、私は玻璃の餌になれて嬉しかった。本当に玻璃は私なしで生きていけなくなったから」と胸の内を告白できた。


そう、嫌だとか嫌悪感があるとかは一切ない。1ミリも浮かばなかった。

玻璃の言った言葉が全て真実だと分かると、猛烈に恥ずかしくて嬉しかった。


私は、とことん玻璃を好きだということだ。


で、だ。

勇気を出して伝えたのに、玻璃からは「信じてねぇと思ってたよ。お前、何も質問しなかったろ」とデコピンされた。

めっちゃ痛かった。目尻に涙が浮かぶほど痛かった。


なのに、玻璃はおかしそうに笑った。

吸血鬼じゃなくて、悪魔かと思ったよね。


睨もうとしたけど、「でも、俺はそれを利用したんだよ。儀式をしてしまえば、紫陽花が俺のものになるからな。泣いても喚いても、もう俺から離れることは許されねぇ。だから、利用したんだ」と微笑まれて、吸血鬼でも悪魔でも何でもいいってなっちゃったよね。


「ぎゅいん」って胸を鷲掴みにされたんだから、私から抱きついてしまったのは至極当然のことだ。

耳元で笑った玻璃の幸せそうな息遣いに泣いてしまったのも、自然の摂理だ。


なんだかやっと、本物の彼氏彼女になれた気がする。




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