day 2.5 狂った救済者
西暦2250年、大技術革新以降、人類は、あらゆる技術を手に入れた。
タイムトラベル、タイムスリップなども、この時に得られた技術だ。
未来演算用量子計算機によって、未来の技術を現代に現実化させ落とし込んだ為である。
人類は、この時、食料問題。資源問題。
その他諸々の解決し得ない課題を解決に導いた。
そう、死に対する課題以外は。
〜グレゴリウス21世著 人類の偉大なる一歩 3p引用〜
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そう、タイムスリップは、既にありふれた技術なのだ。
私達は決して出来ないが
「ここには、その設備が無いんですよね250年以前の過去と違って。」
「何か理由があると思う?」
「僕なんかが、帰れないようにするためとか。」
「人間はそんなことしないよ。」
言えば彼は複雑そうな顔をしながらもこう答えた。
「そうかもしれませんね。ところで、不老不死の人類がどう滅びたかは知ってますよね。」
不死身の人類がどうやって滅びたか、確かに識っている。
「不死身の人類が滅びるというのは、期せずして、言葉の隙をついたみたいでは有りますけど。それはそうとどうぞ。」
「・・・『大惨禍』と「ショウシ体」の誕生のせいでしょ。」
「正確には七度の隕石によって七割の人類が蒸発して滅び、
残りの三割は「ショウシ体」によって記憶を吸われ定期的なメンテナンスが不可能になった為に不老不死の機能を損ない緩やかに絶滅していった。
このあらゆる知識が本として眠る『図書館』を残して。」
「つまり、未来の人類にも完全な不老不死は実現不可能だったというわけです。残念です。」
「そこを気にするんだ、それはそうと、・・・・・どうかな、少なくとも定期的なメンテナンスを怠らなければ例え体が蒸発しようと生きていられたらしいけれど。」
「定期的なメンテナンスが必要な時点で完全な不老不死とは言えませんよ。それに哲学上の問題も未解決ですし。」
「テセウスの船だったけ、
確か本体と全てが同じ偽物は果たして本物と呼べるのか、そういう問いだったような。でもそれは魂を編集した後現実化させた結果、解決したって本に書いてあったけれど。」
彼はそんな言葉に肩を竦めすらせず淡々と説明を続ける。
「いくら、魂と言ったところであくまで物質に過ぎませんからね。
いわゆる『大惨禍』の様に魂まで蒸発した場合では、後から再生する人類は前の人類と同一とは言えませんよ。
なにせ本物のコピーに過ぎないのですから。」
「・・・・・」
私の沈黙を、話の続きを促していると考えたのか、
彼はこう続けた。
「言い換えるなら彼等は、妥協したって事です。限りなく本物に近い偽物で
もっとも、そのコピーを作る場所でさえ『大惨禍』によって起きた津波で洗い流された訳ですが。いいえこの表現は不適ですね。初めの隕石が大き過ぎた上、海に落ちた結果、施設は蒸発するか津波によって流されてしまったと言い換えます。」
と彼はそう嘯きながらも。
後ろを向き本棚に視線を移し、こう言葉を続ける。
「それに残した情報も紙なんて、400年待てばいい方なのにどうして、こんな長持ちしずらい媒体で残したんでしょうか、人類の命運を担うかも知れなかったのに。というかこんな感じだったんですね、『本』って。」
「・・・・・」
彼の、担うかも知れなかったという口調に微かな引っ掛かりを覚えながらも、彼を見つめていれば、
本棚にある本を手に取り質感を確かめるようにペラペラとめくり出した。
その様子にふと、気になったことを聞く。
「貴方達の時代だと、電子書籍が主だったの?」
「いいえ、僕の時代では量子書籍が開発されていました。もっとも開発されたてホヤホヤでしたけれど。」
「そうか、」
・・・・・・・人類が滅びたという結果はきっと変えられない。
なにせ、私は彼の功績を知っているのだ。
この滅びた世界においての。
その概要は、、、、いや、今は
「それよりもこれからどうするの君は。」
「これからは貴方と共に外に出ます。それが任務ですので。」
「そうか。目的は分からないが残念ながらここの外は生き物が生きていける環境ではないよ。隕石のおかげでね。
「ショウシ体」もまだ残っているだろうし」
「確かに、「ショウシ体」は厄介ですよね、曲がりなりにも僕の様な過去の人間が持っている技術よりも遥かに高度な文明を相手に完封して絶滅に追いやった訳ですから。けれど私達は、すでにそれに抗う手段は手に入れています。貴方と、共にいればそれは、確実なモノとなるでしょう。」
「そして、この『図書館』を焼きます。だから逃げましょう一緒に。」
「、、、、今なんて言った?」
彼は本をパタンと閉じ振り返って朗らかな表情でこう言い直した。
「このもう役にも立たない『図書館』を焼きます。ですので逃げましょうあのロボットを見捨てて。」
「は?」