第九十六話 終戦と別れ
魔族の消失を見送り、ニーアはダミアンの元へ向かう。
「ここの戦いは終わったわ。獣魔貴族べライグは消滅したのを確認した。」
「ああ、さすがニーアだ、ありがとう。」
そう言いながらも、ダミアンの表情は硬いままだった。ボロボロになった装備もしかり、かなりのダメージを受けているのが見た目にもわかる。
「回復は終わっているのかしら、立てそう?肩かすわよ。」
「おお、それはありがたいな、ぜひお願いするぜ。」
ようやくダミアンの顔にもわずかながらも笑みが戻った。ニーアが手を差し出し、それを受けダミアンが立ち上がる。そのまま避難していたBランク冒険者パーティの方へ向かう。べライグの闇属性の広範囲魔法が発動する際にダミアンはとっさにノノたちBランク冒険者にもマジックシールドをかけていたようだ。距離が離れていたにもかかわらず、後輩冒険者を守る姿勢を貫いたことにニーアは感心した。
近づいていくと、ノノが意識を取り戻し仲間に回復魔法をかけているようだ。
しかし、その様子がおかしかった。ノノが泣きながら回復魔法をかけているが仲間は一向に目を開ける気配がない。ニーアは瞬時に察した、ダミアンの表情が暗かったのもべライグの放った一発目の全体魔法ですでに助からないものがいたことを悟っていたのだろう。
しばらく見ていたいたが、ニーアがノノの肩を叩き魔法の発動を止めてあげる。そして、泣きじゃくるノノをそっと抱きしめた。
結局、その場にいたBランク冒険者パーティのメンバーはノノと、もう一人別のパーティ所属の二名を除きみな息絶えていた。
ノノたちの気持ちの整理を待ち、その後シンイチたちと合流して戦いの終わりを伝える。シンイチたちの方も被害が甚大だった、エレンとシンイチが必死に回復を続けようやくみんなが動けるまでになったとのことだ。やはりベライグは強かった。
ダミアンは森林都市コーリッシュでそのまま入院を余儀なくされた、体力的には回復しているが闇属性の身体異常効果が解けず、日々の生活もままならないという話だ。
クワッドヴァルキリーのシュッタウも同様の症状が出ていたが、ダミアンほど症状は重くはなく、日々の生活には困らないくらいには動けるようだ。ただ、冒険者として活動するのは難しいということで、こちらも静養するという話だった。シンイチとエレンが治療したBランク冒険者たちもしばらくは冒険者としての活動は難しいだろうとのことだった。
シンイチの光属性魔法での回復や、タカキの錬成したポーションなども試したが、効果がなかった。
「俺たちが何とかしよう。」
そう言ったのはだったライジングサンの団長ツォーガだった。
「レフージョカに呪いとかの解呪に精通した人たちがいるというのを聞いたことがある。ダミアンには今回世話になったからな、これくらいはさせてくれ。」
レフージョカは極東にある船でいくつかの国を乗り継いでいく必要がある。渡航できなくなっていたが、ニーアたちがクラーケンキングを討伐したことにより、最近になって船便の往来が再開されたらしい。
レフージョカは何かあった気がしたがニーアはすぐに思い出せなかった。
「ぜひ、私たちも連れて行ってくれないか。」
そう言ったのは、クワッドヴァルキリーのジェイミーだった。
「ツォーガのこともあるし、ダミアンのおかげで救われたのも事実だ。何とか力になりたいと思っている。」
2つのAランク冒険者パーティが解決策を探しに行く間、ノノが付きっきりでダミアンの世話をすると申し出た。ダミアンは最初は不要だと固辞していたが、ノノが仲間を失い、居場所・目的もないといった話を涙ながらにし、せめて命を救ってくれたダミアンに恩返しをしたいと吐露したことでダミアンも了承する運びとなった。
「ありがとうございます、私、頑張ります!」
ノノが泣きながら笑顔を浮かべる。
「体格差を見ると親子みたいだな。」
タカキが巨体のダミアンと、小柄な獣人族ノノのを見ていった。
「ノノが言うことをちゃんと聞いて守ってよ。」
ニーアの言葉にダミアンが苦笑いを浮かべながらうなずいた。
シンイチとしては自分たちも行きたいと思ったが、そろそろ現実に戻る時期ということもあり、他のメンバーと長期間行動を共にするのは避けるべきというニーアとタカキの意見により、参加は見送ることとなった。
ニーアたちは、ラニキス王へ戦いの報告を行うことになった。
シュッタウとユニテアやジェイニスをはじめとしたラニキス王国所属のBランク冒険者たちは冒険者としての活動は厳しいということで、森林都市コーリッシュや港町イーストコートに残り復興の手伝いをするために残り、ニーアたち三人が報告係となった。
「じゃあみんなまたね、ジェイミーたちは長旅になるだろうけど気を付けてね。」
「ニーア様、私にも声をかけてくださいー。」
アトゥーサが恨めしそうにニーアの腕にすり寄る、ニーアは冷たく振りほどいた。周りのみんなはそれを見て苦笑する。
「魔族との戦いのときはあんなにかっこよかったのに。。」
フェアリーサークルのメアリは不満そうにつぶやいた。それを聞いてみんなが笑った。
「ユニテアたちも頑張ってね。私たちも手伝いたいのはやまやまなんだけど。」
「ありがとう、頑張るよ。国を救ったことで充分さ、復興は自分たちの手でやり遂げて見せるぜ。」
その後、数日かけて王都エルフィリアへ戻り、衛兵がずらりと並んだ謁見の場でニーアが報告をしたのだった。
ちょうど、ドラゴン討伐のときに手助けをしてくれたSSランク冒険者スプリームオブスカイのメンバーも王都に戻ってきており、一緒に報告となった。あの後、全員無事でドラゴンを倒しきったようだ。
「早く終わらせて駆け付けたかったんだけど、すまなかったな。そっちが思いのほか早く終わったようだね。魔貴族を相手に大したものだ。」
「いえ、厄介な相手を引き受けてくれて助かったわ。もしもスプリームオブスカイが来てくれなかったら、コールッシュも間に合わなかったかもしれない。」
戦果の報告を聞きラニキス王は安堵の表情を浮かべる。ニーアは魔族を退けて良かった、で終わらせてはいけないと思い陳情をした。
「戦いには勝てたが多くの住民たち、そして冒険者が犠牲になった。彼らがいなかったらこの勝利はなかった。」
「わかった、犠牲となった冒険者に最大限の敬意と弔意を示そう。ラニキスの国民にも早く生活を立て直せるよう支援を約束する。」
国を救った英雄たちということで、亡くなった冒険者の親族たちへの手厚い補償をラニキス王は約束してくれた。また、今回の戦いに参加したみなには一人当たり金貨500枚が報奨金として贈られるとのことだった。
国王への報告も終え、ようやく全てから解放された実感がわいてきた。スプリームオブスカイとも別れ、ニーアたち家族三人になった。
「さてと、魔族の襲撃も退けたし次はどうしようかな。」
「今回の戦いで、魔石とかレア鉱石もかなり消費したから、素材の補充もなんとかしないといけないんだが、さすがに戦いが続きで疲れたな。少しゆっくりしたいところではあるな。」
「そんなこと言って、他のみんなはもう次の旅に向かって動き出しているよ。僕たちだけゆっくりってわけにもいかないんじゃ、、」
シンイチがタカキに物申す。
「とりあえず素材については、今回の報奨金を使って買い集めればいいんじゃない。レアなものは数を集めるのはなかなか大変かもだけど。。ギルドに採取の依頼を出してもいいかもしれないし。私たちは一旦、セルディスの王様に報告かしら。それなら大急ぎで向かわなきゃ、ってことにもならないだろうし。」
ニーアが折衷案ということでセルディス王国の王都への帰還を提案する。忘れかけていたが、自分たちはセルディス王国のギルドに所属の冒険者である。
「それとやっぱり車を早く作ってほしいわね。今回の旅でも思ったけど、急がないといけないときでも、どうしても移動に時間がかかってしまうから。」
「オーケー、じゃあまったりとDIYで車づくりをしながら移動ってことだな。」
そうして王都エルフィリアを出発してセルディス王国に戻り、オスティアから王都へ目指し数日が経ったのちに、現実世界に戻ったのだった。




