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第八十六話 ドラゴンスレイヤー

「あいつは自分がピンチになると、とにかく瘴気を出して敵を遠ざけて体力を回復するんだ。」

ドラゴンのもとへ向かう途中、カイネが教えてくれた。

「だから、一昨日攻撃したばっかりということだったら、なるべく間を開けずに攻撃を仕掛けたほうが倒しやすいはずさ。」

そうだったのかと感心するクワッドヴァルキリーの面々。ニーアたちも当然知らなかった。


「なんだこれ?」

街の郊外に設置されたタカキの大型扇風機を見てアンガスが声を上げた。

「これは扇風機といって風を起こす魔道具なんだ。常に同じ方向に風を出すことができる。」

「へぇ、いいじゃん。これならずいぶんと楽ができそうだな、セリス。」

「そうですね、私もMPを節約できそうで助かります。」

すました顔で表情を変えずにセリスが言う。

タカキの扇風機のおかげで街中の瘴気は薄くなっているようだ。しかし、まだ人が入るに十分なほどではなさそうだ。

「この状態で行くの?まだ結構瘴気が漂ってそうだけど。。」

ニーアが聞いた。絶対無理というわけではないだろうが、不利な環境での戦闘になるのは間違いないだろう。

「いや、まあ見てなって。セリス、頼んだ。」

「わかっているわよ。少し待って。 ツイントルネード。」

セリスが風属性の上級魔法を発動すると、辺りに残っていた瘴気がどんどんと竜巻に吸い込まれ、上空の方に飛ばされていくことがわかる。

「へーすごい、掃除機で吸い込んでいるみたい。」

確かにシンイチの表現は的を得ている気もするが透明な掃除機じゃないとわからない、かつこっちの世界の人には全く通じないだろう。しばらくすると空気が澄んできて、ほぼ完全に瘴気が無くなった。

「じゃあ、あとは俺たちに任せて、安全なところで見ていてくれ。」

そういうとセリスを残し男三人はドラゴンに向かっていく。アンガスが一人でドラゴンの視界に入るところへ行き、タゲ取りをする。その間にカイネとライオニールはドラゴンとの距離を一気に詰め尻尾の方に切りかかっていく。

「やっていることは俺たちと似ているな。」

ぼそっとシュッタウがつぶやき、それを聞いてジェイミーが頷いた。

「でも攻撃が正確でかつ一撃一撃の威力が全然違うわ。」

「どうやらドラゴン特効の効果を持った武器っぽいわね、全員が特効持ちの武器みたい。。さすがドラゴン討伐に特化したパーティというだけはあるか。あんな強いレベルで使えるものがあるなんて、特注品かあるいはどこかのダンジョンでドロップしたのか。。」

ニーアも興味深く見ている。攻撃の通り方が自分たちのときとはまるで異なる。自分の武器もそれなりに強いものはずだがあそこまで効果的な攻撃ではなかったように思う。

「アンガスもあのドラゴン攻撃を一人で受けているわ。どういう防御力なの?」

確かにシュッタウも軽々と吹き飛ばす攻撃力だが下がることなく、受けきっていいる。

「あれは、攻撃を受けていると同時にうまく威力を逸らしているな。小型・中型のモンスターならともかく、ドラゴンのような大型モンスター相手にできるとは。。」

シュッタウが開設をしてくれた。シンイチもタンクとして勉強になりそうだったため、熱心に動きを見ている。そういっている間にカイネとライオニールがドラゴンの尻尾を切断することに成功した。切断した尻尾をカイネが剣技スキル「独楽切り」によってさらに細かく切り刻み、最後は火属性中級魔法ファイアバーストで燃やし跡形もなくしてしまった。

尻尾切断により大きなダメージを受けたのか、ドラゴンはすぐさまブレスを吐く姿勢を取る。

「え、もう!?僕らももっと離れたほうがいいんじゃ、、」

「そうね。」

ニーアたちはさらに後ろに下がり距離を取る。

下がり終えたすぐ後にブレスが吐かれる。その瞬間、またセリスがツイントルネードで瘴気を吹き飛ばす。それでもブレスの勢いは完全に消しきれず、辺りが徐々に瘴気に覆われていく。

「よっしゃ一旦最後だな、ライオニール!」

カイネの掛け声を契機に、ライオニールが走ってカイネに向かっていき、カイネの鞘に収まった剣の上に飛び乗った。すぐさまカイネが思い切り中空に振り上げる、その勢いを利用してライオニールが空高く舞い上がった。飛び上がったライオニールは、槍を下向きに突き刺すように構え、アイアナイズというスキルを使用した。シュッタウが使用する剛体スキルの上位版といった位置づけのスキルで、体を硬質化し状態異常に耐えることができる。さらに、自らの重みを増すことで位置エネルギーを増し、槍で突き刺すことで大ダメージを与えるというものらしい。

「あれじゃあ、もう動くことができないんじゃ。」

シンイチの心配をよそに、セリスが後退しながらも風属性魔法で瘴気を吹き飛ばし続けると、ライオニールがいる付近だけ瘴気を薄めることができた。そのタイミングでライオニールがスキルを解いた。それでもドラゴンはすぐさま次のブレスを吐こうとしており、しかも体から瘴気があふれ始めているため、ライオニールはすぐさまその場を離れた。

「なるほどなあ、あれでまた戦闘復帰できるわけだ、確かに使い捨てでもなく、いいかもしれないな」

「一人で復帰できる分、助けに行った仲間が巻き添えってこともなさそうだね。」

「あのセリスって人が、ちゃんと瘴気を無害化できるっていう前提がないと成り立たない作戦だわ。ああ、勇者パーティの三人も好きだけど、セリス様も素敵ね。」

アトゥーサが横から話に割り込んできて、変な癖がまた顔を出し始めている。

「さ、君たちもみんな下がるんだ。最初にいたキャンプ地の手前まで戻るぞ。」

走ってきたカイネが声をかけてそのまま走り抜けていく。確かに、瘴気がすぐそこまで迫ってきているのが見えた。

避難が完了するや否や、シンイチがスプリームオブスカイの面々に聞いた。

「この後はどうするんですか?結局このままだと回復されてしまうんじゃ。。」

「ああ、あとはこれを何度か繰り返すんだ。今回尻尾を落としただろ、次は右の羽か前足か。切り落としてしまえばいくらやつとはいえ再生は容易じゃない。切り傷でもダメージは残せるんだけど、やっぱ回復が比較的早い、二日くらいだと、まだ全快とはいかないんだけどね。」

「今回の敵は、カースドラゴンにしては体力がなかった。多分君たちが昨日までの攻撃で体力を削っていたダメージが残っていたんだろう。」

セリスの治療を受けながらライオニールが事も無げに横からコメントをはさんだ。最後の瘴気からの脱出の際に少し状態異常を受けたようだ。自分たちの攻撃も全くの無駄ではなかったと聞いて少しうれしくなるシンイチであった。

「つまり、結局これを繰り返さないといけないってことか、知識がないといつまでたっても倒せないってことね。」

「ああ、そうさ。だから僕らみたいなドラゴン討伐専門の冒険者ってのも必要になるのさ。」

ニーアの問いに、カイネが頷いた。まだ戻ってきて間もないうちからアンガスが立ち上がる。

「じゃあ、最初は俺から行くぜ。」

「どちらへ?」

エレンが尋ねる。

「奴の見張りだ、逃げ出さないようにってのと、瘴気の状態だな。次のアタックのチャンスを逃さないためにも交代で見張りを立てて常に見ておかないとな。」

「頼んだ、アンガス。6時間後に交代だ。」

最後までプロフェッショナルな気の使いようだとタカキは感心させられた。

「なんか、スプリームオブスカイってかっこいいね。勇者パーティって感じだ。」

「ああ、そうだな。隙がない」

シンイチの言葉にタカキも同調する。

「まあ、勇者パーティかどうかはわからないけど、確かにしっかりしているわね。」

勇者パーティの一員としてのプライドゆえか、勇者っぽいというところを完全肯定はできなかったが、ニーアもSSランク冒険者というものがどういうものかというのを実感することができた。戦闘に対する知識と経験、それを実行するだけの実力が伴っていることが伝わってくる。こと、彼らのドラゴン狩りに対する姿勢に関しては、最盛期の勇者パーティでも及ばないだろう。ここまで緻密な戦略、相手の特性の把握はしていなかった気がする。しいて言うなら対魔王くらいだろうか。勇者時代も決して無双していたわけではなく、旅の途中で出会った名もないモンスターに苦戦して逃走するなど何度もやらかしていたことを思い出し苦々しい気持ちになった。


その日の夜、新たな脅威の知らせを受けることになった。それは、前回ラニキスに来た時に知り合ったユニテアとジェイニスのパーティによってもたらされた。

「やっと見つけた。ニーアさんここでしたか。夜になって野営している明かりを探すことでようやく見つけることができた。イスエールトの周りをかなり探し回ったよ。」

疲れた顔をしながらも笑顔を浮かべてユニテアが言った。

「あら、ユニテアじゃない。どうしたの?」

「魔族だ、魔族が出たんだ。上位の魔族でかなりやばい奴だ。東の港町のイーストコートってところなんだけど。」

「落ち着いて、今はどういう状況なの。」

「街に滞在している何組かのB、C級ランク冒険者パーティが対応しているが全然足りていない。ラニキス王国の軍を動かすために王都にも連絡に向かっているがまだかなりかかるだろう。力を貸してくれないだろうか。」

「もちろんよ。私たちの最優先事項の一つが魔族対応なんだから、行かない理由はないわ。」

ニーアの言葉にタカキとシンイチも頷く。

「俺たちも行くぜ。ラニキスに来てからまだ貢献できていないからな。」

そう言ってシュッタウも立ち上がる。

「もうしばらく共闘ということでお願いしますニーアさん。」

「ええ、こちらこそ。助かるわ。」

方針が決まり、ニーアたちとクワッドヴァルキリーがイーストコートに向かうこととなった。スプリームオブスカイは引き続きカースドラゴンと対峙することとなる。

「僕たちはあいつをしっかりと仕留めきるまでここを離れることはできない。すまないが魔族の方は君たちに任せることになる。もちろん、ここが終わり次第駆けつけるつもりだ。」

「まあ、そうはいっても俺たちは魔族の上位と戦った経験はあまりないけどな。」

カイネとアンガスの言葉にニーアも頷く。

「ここは任せることにするわ、今日の戦いっぷりを見ているとあまり心配はなさそうだけど。」

「ああ、任されたよ。急いでイーストコートを救ってくれ。ここみたいに廃墟になるのは見たくない。」


「ユニテア、場所案内できる?私たちイーストコートに行ったことなくて。。」

「はい、もちろんです。今から行きますか?」

既にもう深夜になっており、あと数時間で夜が明ける。

「うーんそうね、さすがに夜が明けてからにしましょうか。」

数時間の仮眠のあと、朝早くにイーストコートに向けて旅立ったのだった。

シンイチとしてはドラゴンとの戦いは不完全燃焼に終わり満足のいく結末ではなかったが、これも経験だと言い聞かせ前を向くことにした。

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