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第七十八 解散

一度宿へ戻り、汚れを落としてから約束のレストランに向かう。

高級店ということで、マインの提案で、先日街で買ったこちらの世界のおしゃれ着で着飾っていくことにした。

「マインって、普段はガサツなのに、そういうとこきっちりするの意外だよね。」

「まーねー。やっぱティー・ピー・オーはわきまえないとね。」

ジュリアの指摘に得意げになっているマインを見て、単に買ったばかりのかわいい服着たいだけでは?と思うニーアだったが黙っておくことにした。

ニーアはいつものように髪の色を魔法で変え、さらには眼鏡をかけ、スカーフで顔のほとんどを覆うといった不思議な格好をしていくことにした。さすがにおしゃれ着にフルフェイスの兜をしていくわけにはいかない。

「そこまでしなくても大丈夫なんじゃない?髪の色と眼鏡で十分だって。」

マインにはそう言われたが、なるべくリスクを減らしたかった。とは言え、さすがに食事を食べるときは外そうかなとも思う、この数週間一緒にいたがリズとマリベルなら信用できるだろう。

お店につくと、リズとマリベルの二人は既に来ていて店の前で待っていた。

「お待たせー、ごめんね。」

「いえいえ、私たちもちょっと前に来たばっかりですよ。」

「それよりもなんかニーアさん、怪しい人みたいですよ。」

さっそく、リズに突っ込まれる。

「ついに素顔が見れると思ったのにー、残念です。。」

マリベルは少し残念そうだ。

「またあとでね。ここだとまだ他の人もいるから。」


個室に案内され、ようやくスカーフを外す、わぁ!とリズとマリベルが歓声を上げた。

「なんかニーアさんの顔どこかで見たことあるような、、」

「そう?、こんなにかわいくてすてきな人はめったにいないですよ。普段から顔を出せばいいのにと思うくらい。」

リズとマリベルがそれぞれ感想を述べる。

「まあまあ、私の顔なんて別にいいじゃない、よくある顔よ。それと、残念だけど私の装備って兜も含めて全身セットだから、普段の戦いのときもオープンにってわけにもいかないのよね。」

ニーアは笑いながら答える。

料理が運ばれてきて食事が進むにつれ、みな砕けた口調になっていった。

「いやーやっぱジュリアがいてくれると回復がはかどっていいよね。」

「マインだって攻守に魔法で援護してくれるからめっちゃ助かってたよ。」

「でも、最後20階層のボスを倒したかったね。19階層の次の階層に降りる階段の前まで行って帰ってきちゃったから。」

「できるだけ危険なことを避けて目標達成できるならそれに越したことはないのよ。今回は階層ボスを倒すのが目的じゃなくて、借金返済に向けてお金を稼ぐことが目的だったんだから。そこでケガして治療費が必要になっても大変じゃない。」

ニーアがもっともなことを言う。しかし、みんなにはあまり響かず、リズとマリベルだけでなく、マインとジュリアも少し残念そうな表情を浮かべる。

「20階層ボスはまた別の機会に行けばいいじゃない。でも、ほんとみんなよくやったと思うよ。普通はダンジョンの階層数×2がダンジョン攻略する適正なレベルなんだって。リズとマリベルはLv35だし、マインとジュリアなんてLv20台だし。」

先日仕入れたばかりの知識をひけらかし、みんなを慰める。

「へー、じゃあ私たちかなりすごいんじゃない。」

マインがすぐに機嫌を直してくれた。

「マイン、調子に乗らないのよ、ニーアがやばい時に助けてくれているから倒せているんだから、そこを忘れちゃだめよ。」

「ふふ、ジュリアの言う通りね。油断するのはどんな時もよくないわね。でも攻撃面については、私はほとんど手を出していないから、そこは同じレベルの人よりも頭一つ抜けているって考えてもよいと思うよ。って油断するなって言いながらまた逆に油断させるようなこと言ってるね。」

それを聞いてみんなが再び笑った。

「はーい、ジュリアとニーアの言わんとすることは分かってるって。油断はしないよ。それにしても、リズとマリベルにもほんと助けられたー、先輩冒険者って感じ。超ありがとう!」

「いやーそんな、私たちなんて、まだまだです。」

二人は照れて頭をかいている、あまり褒められ慣れていないようだ。

「二人とも、今回のダンジョンでの戦いでかなりいい経験を積んだし、これからはお金に困るってこともなくなるんじゃないかなと思うけどね。」

今回のダンジョン攻略で階層ボス討伐などの実績を評価されてリズ、マリベル、マインの三人はDランクに昇格を果たしていた。

「二人はこの先はどうするか何か決まっているの?」

ジュリアが一番気になっているところをつく質問をした。リズとマリベルが顔を見合わせ、そしてリズが意を決したように言った。

「あのう、出来ればニーアさん、マインさん、ジュリアさんとのパーティを続けさせていただけないでしょうか。」

それを聞いてジュリアはうれしそうな顔でニーアを見た。しかし、ニーアは気まずい表情を浮かべて黙っている。暫くの沈黙の後、ニーアが口を開いた。

「ごめんね、リズ。私もそうできたら楽しいだろうなって思っているんだけど、、マインとジュリアは期間限定で一時的に冒険者をやっている状態でもうすぐ戻ることになると思うの。そしたら、次に冒険に出れるのがいつになるかわからないって状態なのよ。」

「そっか、確かにそうよね。私たちもずっとここにいられるわけでもないし。」

ジュリアが納得という形でつぶやいた。マインはなんで?といった形で不満そうな表情を浮かべている。ジュリアが小声で、毎週お泊り会できる訳ないじゃない、とマインにささやいている。

「それと、私は私で、普段は別のパーティも組んでいて、そっちはそっちでいろいろと厄介ごとをに巻き込まれそうな状況なのよね。そのパーティのメンバーはリズやマリベルよりレベルは上なんだけどそれでもついてくるのがやっとって感じで私がフォローしてあげないといけない場面が何度も出てくるの。そんな状況に二人を連れていくと、さすがに四人を守り切れる自信がないというか、、」

ニーアがゆっくりと説明するのを聞き終えて、リズもマリベルも納得したようだ。

「そうだったんですね、残念ですけど分かりました。そんな貴重な時間を私たちのために使っていただいてありがとうございました。マインさん、ジュリアさんも限られた時間だったのに私たちのために時間を使ってくれて、、、」

「私たちは全然いいのよ、楽しかったし、しっかりレベルアップもできたからねー。」

マインが明るく言った。

「私は二人が救えてほんとによかったと思っているよ。」

ジュリアもうなずく。

「ニーアさん、また時間の都合ついたときには五人で冒険させてください。それくらいなら良いですか?」

「ええ、もちろんよ!」

ニーアも嬉しそうに返事をした。続けて少し話題を変えるように話を続ける。

「それにしてもこの先二人で冒険者を続けるのはちょっと不安じゃない?」

「そうですね、稼ぎの効率は悪くなりますが、安全第一で行くしかないかなと思っています。」

「そっか、もし、あなたたちが嫌じゃなければ、私の知っているとあるパーティを紹介することができるのだけどどうかしら。今はたぶんまだ3人でやっていると思うから、二人が入ればバランスもよくなるかなって。」 

「ありがとうございます。とてもありがたい話ですが、しばらくは二人で頑張ってみようかなって思います。」

リズが力強く返事をし、マリベルも横で頷いた。

「了解、じゃあ二人で頑張ってね。もちろん気が変わってメンバーを増やしたいとかあったらまた相談してくれて全然問題ないからね。」

自分たちの実力を見極めて無茶をしない、かとといって安易にほかのメンバーを入れて頼りきるというわけでもない。ニーアはこの二人なら問題なく冒険者としてやっていけるだろうと確信したのだった。

そのあともこれまでの旅の振り返りや、お互いにほめたたえ合いで夜が更けていき、店の閉店時間が来たことで追い出されるように解散となった。


翌日からジュリアはレストランの仕事に戻った。店主のデニーをはじめ、みんなが喜び迎えてくれた。店は相変わらず繁盛していてかなり忙しかったらしい。そんな時期に抜けてしまって申し訳ないなと思ったが、その分も取り返すようにジュリアは必死に働いていた。

その後さらに一週間仕事を続け、もともと予定していた期間を無事に満了となった。

最後の仕事を終えみんなにあいさつをする。

「ありがとな、ジュリア。また働きたくなったら声をかけてくれ。いつでも歓迎するぜ。」

「ありがとうございます、デニーさん。とってもいい経験になりました。また機会があればぜひお願いしたいです。」

「あの男が来たらまた教えてあげるからね。」

「ジュリアが気にしていたって伝えておくよ。」

同僚のラミとルーシュが小声でジュリアに言った。ジュリア自身、忘れていたこともあり、あの男というのがユータのことを指しているということに気づくのに少し時間がかかった。まだあの件を引っ張っているようなので、慌てて否定する。そんな三人を姉御肌のラーヤが微笑みながら見守っていた。


職場のみんなと別れ宿に戻る。いつものようにニーアとマインが迎えてくれた。

「お仕事お疲れ様!!」

「ありがと、ただいま。」

いつものように出迎えてくれたはずなのに、自分で決めたことをやり切った達成感からか特別な感じがした。リズたちの奴隷堕ちの阻止、自分で選んだ仕事を最後まで勤め上げる、どちらも途中で投げ出すこともなく完遂した。忙しさに追われその点を深く考える余裕がなかったが、その実感がふいにわいてきたのだった。これまで親から言われてやっていた習い事などで目標達成した時もうれしさはもちろんあった。だが、その時とは明らかに違う特別な感情に自分が包まれていることを実感するのだった。

少しは自分に自信を持てるようになるかな。そんなかすかな想いが浮かび思わず笑みがこぼれた。


ジュリアの仕事の最終日ということで、ニーアとマインの二人がささやかなお疲れ様会を準備してくれていた。宿のレストランの一席を借りてパーティションのようなもので簡易的な個室のようにしている。席に着くと次から次へと食事が運ばれてきた。

「さ、あとは元の世界に戻るまではまたのんびりと過ごしましょう。といってももうほとんど日は残ってないと思うけど。」

ご飯を食べながらニーアが今後について話す。

何かしたいことがあるかという話になり、マインがさっそうと提案した。

「じゃあさ、三人でなんかモンスターの討伐に行こうよ。」

「なんでそうなるの、のんびりって言ったでしょ。マインは戦闘民族か何かなの?」

ニーアが笑いながらマインに突っ込みを入れる。ジュリアもそうだそうだとマインを責め立てる。マインもてへっとベロを出す。

長めの夕食で三人で語り合い、食事のあとも部屋に戻って遅くまで話したのだった。

しかし、翌日、そんな楽しい時間がすぐに終わりを迎えることとなった。


「ニーアさん、冒険者ギルドに来てください。」

翌朝、朝食を食べているところに、あわただしくギルド職員が宿の食堂に駆け込んできた。

ただ事ではないことを察知しすぐに向かうと、オスティアのギルドマスターが難しい顔をして何かを見つめている。勇者時代も含めてオスティアのギルマスと話をしたことがなかった。ニーアが部屋に入ると、顔を上げてこちらに視線を送ってきた。

「来てくれたか。朝からすまないな。早速だがこれを見てくれ。」

そう言って渡された手紙はラニキス王国からの手紙だった。

どうやら、もう一つのパーティでの厄介ごとが持ち込まれてきたようだと思いながら目を通した。

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