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第六十八話 謁見と同盟

案内された部屋に入ると隅で人族の女性がお茶の準備をしている。受付のエルフ職員もいいがこちらも美人である。タカキが妄想を膨らませていると、それを見たニーアが、何か良からぬことを考えていると察し肘打ちを食らわせた。

「いてっ!」

思わず声を上げるタカキ、しかしニーアのフルフェイスの奥から光る怒りの視線を感じ、黙って目をそらした。

受付のエルフ職員に促されるまま部屋の中央に配置されているソファーに腰を掛けると、テーブルにお茶が置かれる。お茶を置いた人族の女性がそのままテーブル越しのソファに腰を掛けた。

「ん?」

一瞬、どういうことか理解が追い付かない三人、目の前の美人が話を始めた。

「私が、ギルドマスターのリンデだ。」

「えっ、そうなの意外だったわ。その、失礼かもしれないけどそんなに強そうじゃないというか、、」

「おいおい、ニーア、それは本当に失礼だぞ。」

タカキがたしなめる。しかし、心の中ではニーアに同意していた。てっきり準備ができたタイミングで偉い人が入ってくるのだろうと思い込んでいたのだ。また、クール系の美女の見た目に対し、砕けた話し方のギャップについても少々面を食らった。

「ははは、いや、良いんだ。実際、私は現役のころはBランク冒険者だったからな。そこまで冒険者として輝かしい実績がある訳ではない。」

「リンデさんは、強さの面だけではなく、気配りの細やかさや、王室とのつながりといった事務方の面を高く評価されてギルドマスターに抜擢されているのです。」

この部屋に案内してくれたギルド職員が補足の説明をしてくれる。

「へー、そうなんですね。ギルマスって、単純に強さだけでなるものかと思っていたけど、色々な側面で評価されるのですね。」

失礼なことを言った手前、それを取り戻すかのようにニーアが一生懸命フォローしている。

「そうだな、それも国の方針によるところが大きいけどね。人族が多い国だと冒険者時代の功績、つまりは強さで決まっていく傾向が強いかな。ここラニキスのように様々な種族が入り混じっている国だと、強さだけで選ぼうとすると争いが絶えなくなってしまうんだ。どの種族のだれが強いなんて感じでもめてね。それで、別の指標が必要になったという訳さ。」

三人ともなるほどといわんばかりにうなずいた。

「それで、今日呼ばれたのはどういった理由でしょうか。」

タカキがいよいよ本題に切り出した。

「ああ、そうだったね。まずは、エルフィリア大迷宮にて、うちのギルドに登録されている冒険者を大勢救ってくれたことにお礼を言わせてもらいたい。話はクワッドヴァルキリーのジェイミーから聞いた、君たちがいなかったら、さらに数多くの冒険者が命を落としていただろう。」

どうやら怒られることではなさそうだ、三人ともほっと胸をなでおろす。シンイチも安心して気が緩んだのかテーブルの上のお茶に手を伸ばした。

「いえいえ、そんな。当然のことをしたまでです。それに私たちだけの力じゃなくて、クワッドヴァルキリーもいてくれたから敵の冒険者を撃退できました。」

謙遜するニーアたちに、リンデがさらに畳みかける。

「そうだとしても君たちの功績が薄れたりはしないよ。この件で実は上の方からも話をしたいということで私の方に調整をするよう依頼が来ているのだ。すまんが、王宮までご足労いただけないだろうか。」

「えっ!?」

思いがけない展開になってきたなとタカキは思った。いや、何かしらの功績を上げて謁見は異世界転生もののラノベでは鉄板の流れか。多大な報酬がもらえるか、あるいは代々伝わる伝説の武器がもらえるだろうか。いやいや、帝国の脅威に対する包囲網を形成するという観点では、国のトップと話をするこ機会はまたとないチャンスかもしれない。

「わかりました。今回の件は裏でワシュローン帝国が糸を引いています。私たちも帝国の脅威についてこの国の王に説明したいと考えていたところでした。」

タカキの思惑を知ってか知らずかニーアが即答した。それを聞いてリンデの顔に笑顔が広がる。

「そうか、そういってもらえると助かるよ。では、早速だが明日の朝、王宮を訪れるとしよう。」

「そんな急に、行って大丈夫なんですか。」

「ああ、気にすることはない、大丈夫さ。」

普通は、面会のアポを取るだけでも数日は要しそうなものだが、流石、王室とギルドはつながりが強いと自負するだけのことはある。翌朝の段取りを決めて、ギルドを後にした。

「この国での仕事もこれで終わりにできそうだね。国のトップに帝国の動きを注意喚起できたら十分なんじゃない?」

ギルドの建物を出るや、シンイチが嬉しそうに言った。

「そうだね、けっこう時間かかったけど、ひとまず、区切りとしてはつきそうよね。」

ニーアも同じ意見だった。

「そうだといいがな。」

タカキは若干の不安を抱えていた。

翌日、約束通り早朝にギルドに訪れると、入り口の前に馬車が留まっている。リンデが出てきて声をかけてきた。

「やあ、三人ともおはよう、早速乗ってくれ。王族は朝が早くてね。」

乗り込むとすぐに出発した。30分ほど馬車に揺られてすぐに到着となった。

大きな城門をくぐるとすぐに停車場となっており、そこで馬車から降ろされた。既に迎えのものが待機していて、そのまますぐに謁見の間に案内された。部屋に入ると、そこには見知った顔の先客がいた、クワッドヴァルキリーのジェイミーとアトゥーサであった。

「よう、数日ぶりだな、元気してたか?」

ジェイミーが親しげに声をかけてくる。黙ってうなずくニーア。

「帰還石を譲ってもらってありがとうございました、シュッタウは完全回復までに数か月かかりそうですが、命に別状はなさそうです。今日は療養のため欠席することを許されています。エレンはシュッタウの看病ということで今日は私たち二人だけなんです。」

アトゥーサも意外なことに、いつもの調子ではなく、丁寧な口調でお礼を述べた。王との謁見ということで幾分緊張しているのだろうか。

「そっか、シュッタウさん大丈夫そうなんだね、よかった。」

シンイチもホッとして笑顔を浮かべる。

ニーアたちのダンジョンの帰り道の話をして親交を温めていると大臣が現れ声をかけた。

「皆の者、静まれい、王の御前である。」

周りの人がすぐに片膝をついて頭を下げる。ニーア達三人も周りに倣って膝をついた。

「おい、そこのニーアといったか、王の御前であるぞ、フルフェイスの兜を取らぬか。」

「お言葉を返すようで恐縮ですが大臣、私はあらかじめこの兜は取れないと申し伝えていたはずです。その条件の下であればということで今回参上した次第です。その約束が守られないというのであれば私は失礼します。」

おー、ニーア強気だな、あんまり無礼な態度で変な罪を着せられなければいいけどと、シンイチは思いながら頭を垂れてやり取りを聞いている。

「よいのだ、ラルフ宰相。当初の約束通りということであればそれを反故にできる理由はない。」

王様がそう言って、大臣を抑え玉座に座る。いざとなったらフォローに入らなければとタカキは心の準備をしていたが、事なきを得てほっと一息ついた。

ニーアとのやり取りの流れから、引き続きエルフの王が話を始めた。

「皆のもの顔を上げよ。楽にしてくれて構わない。」

その言葉を合図に皆が顔を上げた。なぜエルフは太っている人がいないのだろうといつも思う。王様でぜいたくな生活をしていてもおかしくないのに、しまった体形をキープしている。

「この度は、冒険者狩りの手から我が国の冒険者を救ってくれたことを感謝する。残念ながら数名の犠牲者が出たものの、相手はかなり名の知れた冒険者狩りだったと聞いた。向こうにはSランク冒険者もいて、君たち無しでは退けるのは難しかっただろう。我が国のギルドに所属する冒険者多数の命を救ってくれたことに対して改めて礼を言う。」

そういって頭を下げる。

「王よ、我々は冒険者として当然のことをしたまでだ。感謝されるまでもない。」

ジェイミーが丁寧に言う。流石はAランク冒険者だ、普段の言葉遣いは荒くてもこういった場ではそれなりにしっかりと応対できている。

「王よ、ニーアと申します。私からも一言よろしいでしょうか。」

「うむ。」

「この度の襲撃は裏でワシュローン帝国が糸を引いています。彼らは各国の戦力を弱体化すべく冒険者の引き込みや襲撃を繰り替えているのです。これは侵攻の序章にすぎません。ラニキス王国だけでなく他の国に対しても同様に刺客を送りこみいる状況です。いずれ本隊を動かしてくることは想像に難くありません。」

「なるほど、由々しき問題だな。して、そなたに何か策はあるか。」

先ほどのひと悶着があったため、シンイチとタカキはハラハラしながら聞いている。

「はい、帝国の力はあまりに強大です。対抗するには各国が力を合わせて協力していく必要が有ると思います。私たちはセルディス王国のギルドに所属しておりますが、今回の件のように、帝国の侵攻に対しては引き続き共同戦線を張りたいと考えております。」

「ふうむ、しかし問題がまだある。魔族への対応だ。帝国ばかりに気を取られていると魔族の攻撃に対しての対応が遅れてしまう。しかも我が国は、そなたも知っているかもしれんが、魔族の支配地域と隣接しておる、そちらへの経過を怠ることなどできんのだよ。つい最近もこの王都から少し離れた村で魔族が暴れていたのだ。最終的には王国軍とSランク冒険者で何とか事なきを得たがな。」

「はい、おっしゃることはごもっともです。ですので、王国軍は基本的には魔族の脅威に対して備えるということで構わないと思います。帝国に対しても基本はラニキス軍を動かして攻めることはしなくてもよいかと。まずは冒険者ギルドとして各国の協力関係を取り付けることができればよいと思っています。」

「それなら簡単だが、、こちらから攻めないことには、結局、帝国の侵攻は止められないのではないか。」

「帝国との和平はセルディス王国が成すでしょう。周辺国と協力して徐々に帝国の勢力を削いでいき、いよいよ、前面衝突が避けられないという時には、早期解決すべく、一点突破で帝国の中心に迫ります。セルディス王国軍だけでなく、セルディス王国に所属の冒険者も加わるでしょう。勿論そうなる前に、どこかで和平となればよいと思っていますが。」

「ふふふ、セルディス王国とそこまで話が進んでいるのか?もしも、セルディス王国のみで一点突破するとなった場合、セルディスの軍はかなりの被害を出すことになるが。」

「いえ、今の話はまだ私の勝手な発想の域を出ていませんが、もしも共同戦線にラニキスも協力いただけるなら必ずや、セルディス王を説得して見せましょう。」

「ずいぶんな自信だな。」

「確かにセルディスには先の魔王討伐を成し遂げた勇者が健在と聞くな。彼らも加わるのであれば、帝国も恐れるに足らぬという訳か。」

「いえ、たとえ勇者の力に頼らずともセルディス王国軍と、我ら冒険者の力を合わせれば問題ないでしょう。」

「ほう、勇者を否定するか。勇者に対し何かうらみでもあるのかな。ずいぶんと反発しているようだが。」

ニーアは少し失敗したと思ったが、もはや発言は取り消せない。

「彼らの力や偉業を否定しているわけではありません。ただ、勇者とは国を超えた存在なのではないかと思っています、例えば魔族の侵攻など人類の脅威に対抗するための存在なのかなと。もちろん、冒険者の中には猛者もそろっていますので、勇者パーティーに後れを取りたくないという思いもございます。」

「ふむ、確かに上位ランカーの冒険者には、魔王討伐時の勇者のステータスを凌ぐのではといわれるものも出ているようだしな。勇者の力は人類の危機に向けて使うべきというのもなかなか正論といえばそうかもしれんな。」

「もちろん、勇者メンバー自身が国同士の紛争を止める必要があると感じ自ら動くのであればその限りではないかと思っています。」

暫くの間、黙って考えた後、ラニキス王がその口を開いた。

「うむ、分かった。ニーアよ、そなたの言葉を信じ、考えに賛同しよう。その旨セルディス王伝えてくれぬか。ふと、わしの知り合いにそなた似たものがおったことを思い出したよ。高い理想を掲げ、周りから無理だと言われてもあきらめずに、最後には偉業を成し遂げおった。セルディスに行った際に、もし勇者パーティーに会うことがあれば改めて礼を言っていたと伝えてくれ。」

「は、承知しました。その際には必ずや。ところで王様一つよろしいでしょうか?先ほど魔族の襲撃に対してSランク冒険者がとおっしゃいましたが、Aランク冒険者の間違いでは?」

話がまとまったところで気になったことを確認する。

「いや、合っているぞ。報告では最初はAランク冒険者のパーティが魔物を食い止めてくれて、王国軍が到着し彼らが去ったあとに上級魔族が現れた。その上級魔族を討伐してくれたのがSランク冒険者という話だ。」

「そうなんですね、ありがとうございます。ちなみにそのSランク冒険者は何という方でしょうか。」

「それなんだが、パーティ名は名乗らなかったが自分たちをデーモンスレイヤーだと言っていたそうだ。上級魔族を葬ったあと王城へ招待したのだがやることがあると、すぐに出国してしまったようなのだ。」

「情報ありがとうございます。帝国側につかないよう協力を依頼できればと思いましたが、難しそうですね。」

私たちが去った後そんなことがあったのか、、早めに見切りをつけたのは失敗だったわね。。。謎のSランク冒険者か、今度スタークさんたちに会った時に聞いてみようかしら。そんなことを考えながらそれ以上の追及はやめた。


無事にラニキスとの共闘の約束を得て王の謁見は終了した。

「ニーア殿、少しよろしいでしょうか。」

王の話が終わったタイミングを見計らったように宰相のラルフが話しかけてくる。

「なんでしょうか。」

ニーアが振り返り応えた。

「ドラゴン討伐に興味はないでしょうか。」

何、ドラゴンだと、ついに来たか!タカキは心の中で叫んだ。やっぱ異世界といえばドラゴンだよなあ、冒険のロマンを感じるぜ。隣のシンイチに目を向けると、心なしかワクワクしているように見える。

「残念ながら特にありませんわ、こう見えて私、既にドラゴンスレイヤーの称号も持っていますので。」

ドラゴンを討伐しようというモチベーションはたいてい、ドラゴンスレイヤーの称号かそのレアな素材というのが一般的である。タカキが、えっ?という顔をしてニーアとラルフのやり取り見た。

「失礼しました、まさかドラゴンスレイヤーだったとは、私がセルディス王国の冒険者についてあまり知識がなくて恐縮ですが、まさかニーア様はSランク冒険者だったのですか。」

「いいえ、Aランクよ。」

「なんと!Aランクでドラゴン討伐を達成されるとはすばらしいですな。まだまだ世にはこのような素晴らしい才能を持った若者が埋もれているのですなあ。」

「何か困っていることがあるって言うなら相談に乗ってもいいですけど。」

ニーアもさすがちょっと冷たくしすぎたかなと思い、少し態度を柔軟にする。

「いえ、今のところは被害が出たという話は聞いていないのですが、ドラゴンの発生地域が魔族の支配領域と近く、下手に刺激されても困ると思っているのです。」

なるほど、ドラゴンは魔族だろうと関係なく攻め込んでいくだろう。魔族の支配領域に甚大な被害が出た場合、その補填のためにラニキスに侵略してきてもおかしくない。とはいえ、今はちょっと、そんなことをやっている場合ではないし、、タカキとシンイチが何か訴えるような目でずっとこっちを見ている。

ニーアが考え込んでいると、その心中を察したようにラルフ宰相が言った。

「ニーア殿、そんなに悩まなくても大丈夫ですよ、先ほども申したようにまだ、具体的な被害が出ているわけではないので。もしも、興味があれば、くらいでしたので。」

「そう、ごめんなさいね。ちょっとオスティアへの報告とかいろいろ優先したいことがあって。。それが片付いてからだったらいいかな。」

「それまでに俺たちが倒してやるよって言いたいところだけど、うちもシュッタウが万全じゃないからな。。。」

ジェイミーが横から口をはさむ。

「私たちが来る前に間に合うなら、お任せするわよ。」

「オッケー、じゃあ早い者勝ちってことだな。」

「では、ご都合がつきましたら是非お願いします。ニーア殿でもクワッドヴァルキリーでも、わたしたちはどちらでも構いませんので。」

また一つお使いを増やしてしまった、と思いながら城を後にする一行であった。

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